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変人技術士の備忘録(別称:すいりき板改)

技術士の日々の思いつきを列記。
すいりき板は、出身研究室の掲示板(現在閉鎖)
専門用語を不定期掲載

The 15-Minute Philosopher: Ideas to Save Your Life(自分の頭で考えたい人のための15分間哲学教室)

2020-10-17 22:08:16 | 読書

 Kindleで読んだ“自分の頭で考えたい人のための15分間哲学教室”の感想を以下に記す。Kindle Unlimitedを申し込んでいて何となく面白そうな書名だったので、読んでみた。短い文章の話題を複数提供しながら、哲学について概説する本となっている。自殺は良いか悪いかといった、明確な答えがない場合にどのような考え方があるかが書かれている。哲学が実生活に直接的に役立つ機会は、それほど多くはないように思う。ただし、本書で書かれている哲学のアプローチやその考え方は、人生を豊かにするきっかけになるように思った。

例えば、位置:298で書かれている「よりよい答えにたどりつくためには、自分の心を開いて周囲から学び、たえず自分の考えをよりよく、より深くしようと努力しないといけない。それが哲学のアプローチだ。」は普段の生活でも大事になると思う。

また位置:324の「物理学では、望ましいのは対象となる現象にうまく当てはまり、正確な予測を可能にしてくれる理論だ。哲学の場合は、矛盾がなく、一貫性があり、 包括的でたくさんのケースに幅広く応用できる考え方が優れているとされる。」は確かにその通りだと思った。正確に予測できない場合は、矛盾がなく、一貫性があり、 包括的でたくさんのケースに幅広く応用できる考え方を使った方がいい。おそらく、色々な場面で、この哲学の考え方は使えるだろう。

 位置: 3,354の“彼(ソクラテス)のこの言葉を忘れないでほしい。 「吟味なき人生は生きるに値しない」”は確かに重要だと思う。吟味がなく、ただ漫然と過ごすだけでは、実り豊かな人生とはならないように思う。


Ability to always enable changing job make useful"いつでも転職できる」を武器にする"

2020-10-08 22:03:25 | 読書

Kindleで読んだ“「いつでも転職できる」を武器にする 市場価値に左右されない「自分軸」の作り方”の感想を以下に記す。自分軸の作り方が書かれている。ちなみに、本書で言う自分軸とは、現代経済で社会人として生き残る仕事の能力という意味合いでとらえた方がいい。自分が向いていて、得意な分野に集中しようという事を説いている。ある意味で経済的には当たり前のことを実践しようという見方もできる。ただし、実際には、自分が向いている事や得意な事は分かりづらいので、得意な分野への集中は難しいと思う。得意な事と好きな事が一致しない場合が多いことも、得意な分野への集中を難しくしているように思う。得意な事を探るための方法も当然書かれている。それは“自分は普段、どんな「ありがとう」を言われるのかを思い出し、書き出す ・あなたに仕事を依頼してくる人に「私に頼む一番の理由」を直接聞く”である。確かにこの方法が確実かつ手っ取り早いように思う。

 それ以外にも、“(A)人より速くラクに飽きずにできることを書き出す (B)自分の欠点やコンプレックスを書き出し、いい意味で置き換える (C)心にひっかかること、ざわついたことを書き出す”は良いと思う。また、“数字と名詞で根拠を伝えるには事前に用意し、いつでも言えるように暗記しておくことです。なぜなら、 人は考えながらしゃべると形容詞ばかりになるから です。”は、言われてみればその通りだという内容になっている。

マーケットのペルソナを応用した自分の売り込みも役に立ちそうである。

 日系企業のポータブルスキルには濃淡があるといはっきりと書かれており、関連する内容を読んで正直驚いた。外資系企業と異なり、日系企業では、ポータブルスキルの訓練が不十分な事が原因と書かれているが、ポータブルスキルが低い人が会社を変える事は、すごく難しくなりそうで、(自分を含めて)大丈夫なのかと思った。また、論理的思考が出来ないエリート会社員の話を読んで、結構驚いた。自分の市場価値を高めておかないと後々、困窮してしまうのではないかと感じてしまった。


The Moment to meet leadership(リーダーシップに出会う瞬間)

2020-09-27 22:00:58 | 読書

 Kindleで読んだ“リーダーシップに出会う瞬間 成人発達理論による自己成長のプロセス”の感想を以下に記す。小説を交えて、リーダーシップを述べる形式になっている。理論的な内容は、各章の最後の解説の箇所で、成人発達理論を元に述べられている。成人発達理論とリーダーシップを述べるだけならば、文字やページの分量は少なくなると思われる。ただし、小説の形式をとっているので、実体験に近い記憶を持ちやすく、リーダーシップに対する考えを理解しやすいように感じた。大学の講義で、理論に加えて、実際に計算の演習をした方が、理解が深まった事と同じことだと思う。発達理論は、最後の資料に簡単にまとめられている。

 本書を読んだ感想として、リーダーシップを考える良い機会になったと思う。リーダーシップは影響力と考えれば、立場に関わらず、リーダーシップが必要になってくる。エゴリーダー(自分のエゴを起点)とコアリーダー(自分の純粋な願いを起点)は、おそらく初めて聞いた言葉だが、興味深い概念である。本書で書かれているように、エゴリーダーではなく、コアリーダーを目指した方がいいと思う。実際には、本書で書かれているように、自分の保身もあるし、自分の願いが分からない場合もあるので、コアリーダーになる事は、簡単ではない。そうすると、自分の保身を意識して自分の願いを見いだす事が、コアリーダーになる事や、適切なリーダーシップを発揮する事に繋がると感じた。

 実際には、森尾さんのように、リーダーシップについてうまく説明でき、それを指導できる人間はほとんどいないと思われる。なので、リーダーシップを身につけるには、自助努力が必要になる。


Illustrated beginner's book of management of human resource(図解 人材マネジメント入門)

2020-09-12 11:17:01 | 読書

 図書館で借りて読んだ“図解 人材マネジメント入門 人事の基礎をゼロからおさえておきたい人のための「理論と実践」100のツボ”の感想を以下に記す。

 人材マネジメントの基本が、図表を交えて、分かりやすくまとまっているというのが、本書を読み終えての感想である。本書の対象は、人事担当者、管理職(マネージャー)、経営者、人材・人事業界の方である。ただし、人材マネジメントは働き方や処遇に深く関係しているので、それ以外の働いている人が読んでも役に立つ内容となっている。特に、Chapter 10.の働く人は、個々人の働き方に関する内容なので、働いている人の役に立つと思う。また、人事施策は、経営成績に影響する事が伺えた。

 最近、自分は真に自立した職業人とは何なのかを考えようとしている。本書は、企業の人材マネジメントに加えて、自立した職業人についても増えられており、自立した職業人を考える役に立つと感じた。人材マネジメントの目的の一つとして、構成員の能力を育むことが挙げられる事も理解できる内容だった。

 

 以下は、気になった個所の要約である。書いている事はもっともであり、これらを理解して実践する事が重要だと感じた。

ツボ007:人事施策には、環境への適応性と施策の一貫性が人材マネジメントでは最も重要。

 ツボ009:日本の人材マネジメントの特徴として、タスクに慣れてくるとさらに難しい仕事に移されるため、長時間労働が常となってしまいます。

ツボ012:評価基準により企業文化が作られ、中長期的にはこれが組織にとっての最も大切な目的となる。

 ツボ027:評価基準の不満は解消できなくても、納得はできる。

 ツボ055:採用の話。全ての能力を兼ね添えた完璧な人間は存在しないので、企業は明確な意思を持って、優先順位をつける必要がある。

 ツボ057:人事の意思決定において、適性検査のデータを経営者や人事の怠慢、責任逃れの道具にしてほしくない。

 ツボ068:終身雇用かつ、年功的な全員の賃金の維持には、企業が成長することが前提となる。

 ツボ077:予期せず直面する逆境である修羅場を経験する事は、深い内省を引き起こす。

 ツボ084:ミッションとバリューのように、一貫した「芯」がなければ組織への信頼は「言っていることと、やっていることが違う」と失われてしまう。

 ツボ085:自ら規律を守り、規律ある行動をとり、3つの円が重なる部分を熱狂的に重視する人たちが集まる企業文化が鍵です。

 ツボ095:(仕事の)激流の中でいくつもの業務を経験して筋力をつけて、登る山を1つ決める、これが日本企業でプロフェッショナルになる方法です。

 ツボ096:決断の壁を越えるために必要なのは「決断する勇気」それだけです

 ツボ097:知識の習得に加えて、「自ら考えて決める」ことが自律・自立のためには必要。


Trip of leadership(リーダーシップの旅)

2020-08-31 13:22:17 | 読書

 Kindleで読んだ“リーダーシップの旅”の感想を以下に記す。著者は野田 智義と金井 壽宏で、2ページ程度を順番に書き連ねていく形式で書かれている。短い記述が続いているので、読みやすいかもしれない。その名の通り、リーダーシップに対して書かれている。位置210に書かれている内容が、リーダーシップをよく表している。

リーダーシップは「見えないもの」を見る旅で、一人で始めて、結果として人がついてくるという趣旨が書いている。リーダーシップは見えないものを見るという事で、事前にわかるものでもないため、後から振り返ると、誤解が生じるという指摘はもっともだと思う(位置450にコアコンピテンスだが、リーダーシップにも当てはまる記述がある)。そうすると、本書でも書いているように、過去の事例を参考にしつつ、自分なりの流儀で、「見えないもの」をみて、方向性を定めて、行動していく事が大事だと思う。

リーダーに求められる資質はあえて要素分解すると、「構想力」「実現力」「意志力」「基軸力」と考えられると野田 智義氏は書いている(位置1976)。その中でも意志力や基軸力が大事だと書かれている。基軸力の説明が多く、次のように印象に残る記述が多い。日本人は一般的に基軸力が弱いと思われる。その理由は、トレードオフを伴う決断をする機会が少ない構造になっているからと書かれている。また、嫌われるのを覚悟しての発言として、日本で最も自立していない人たちが、三十代から五十代にかけての中堅エリートサラリーマンと官僚ではないかと疑っている点も印象的である。自分の経験上、この日本の基軸力に関する記述は、当てはまることが多いと思う。基軸力をきちんと身につけることが大事だと思う。

 リーダーシップとマネジメントの違いに関する記述(リーダーシップは規則にとらわれない、マネジメントは規則に従う)も興味深い。また、学校で教えるリーダーシップの限界性と有効性を論じている点も印象的である。

 自分が最も印象に残った内容は、基軸力に関連する位置2105の自分の内面から湧き出る動機の重要性である。確かにその通りで、自発的にやらない事の問題をうまく表現できていると感じた。本書で主張されているように、基軸力は大事なので、基軸力を身につけるようにしていきたい。手始めに、仕事を含めた普段の生活でのトレードオフや、自分は何を大事にするかを考えていく。


"Why women and men don't understand each other ?(女と男 なぜわかりあえないのか)"

2020-08-26 22:20:28 | 読書

 Kindleで読んだ“女と男 なぜわかりあえないのか”の感想を以下に記す。女性と男性の違いについて書かれている。自分は男性なので、女性側に分からない面はあるが、少なくとも男性で記載されている内容は、その通りだろうな、という印象があった。我々は、原始時代の本能を今なお引きずっているという記述は何とも言えない説得力がある。女は「複雑」で、男は「単純」という主張は、自分が昔を振り返っても正しいように思う。進化論を元にした文献をもとに構成しているので、記述は正しいと思う。


" Geopolitics in East Asia which is needed for Japanese to know(日本人が知るべき東アジアの地政学)

2020-08-12 10:46:18 | 読書

 図書館で借りて読んだ“日本人が知るべき東アジアの地政学”の感想を以下に記す。著者は茂木誠。歴史的経緯を含めて、東アジアの地政学について書かれている。表題の通り、朝鮮半島に関する記述が中心になっている。

 北朝鮮から引き継いだ核ミサイルにより、史上初めてどこにも支配されない朝鮮民族の国家(統一朝鮮)をつくりあげるとい予想(P.159)が書かれている。荒唐無稽の予想のように自分は思えるが、本書を読むと案外そうなりそうな感じはした。十年もすれば、この予想が当たるかどうかが分かるだろう。予想が正しいかは別として、この統一朝鮮が韓国の国民にとって良いかどうかが分からない点は同感である。


The goal(ザ・ゴール)

2020-07-31 10:44:52 | 読書

 Kindleで読んだ“ザ・ゴール”の感想を以下に記す。2014年10月に購入して、再度読み直した本である。工場の立て直しに奮闘する工場長の主人公のアレックス・ロゴとその取り組みが中心の小説である。全体最適化をするためには、どういった概念(考え方)が必要かという事が書かれている。アレックスの恩師であるジョナの問いかけに、主人公のアレックス達が考えて、実際に工場の生産性を改善するという構成になっている。作中でジョナが言っているように、いきなり、答えを教えてもらうよりも、自分達で考えた方が身につきやすいと思う。ジョナは適宜、アレックスに状況を聞いて、指導をしているので、実際に指導する際は、こういった方式が良いと思う。

取り組みを簡単に言うと、企業の目標であるお金を儲けることために、「スループット」を最大化し、「在庫」と「業務費用」を最小化する事である。言葉の定義は色々あるかもしれないが、次の表現が分かりやすい。「「スループットとは、販売を通じてお金を作り出す割合のことだ」(位置1280)。失ったお金はすべて業務費用で、売ることのできる投資はすべて在庫になる(位置1581)。そのためには、ボトルネックを改善する事に集中すればよい。ボトルネックの能力は、全体の能力と等価という考えが出ており、通常では扱われない考えだと思う。ボトルネック以外の工程(非ボトルネック)を改善しても、在庫が増えて、スループットは向上しないと書かれている。なにもする事がないようならば、在庫を増やさないように、非ボトルネックは何もしない方がいいとも書かれている。これも大事で、通常は扱われない考え方だと思う。

考えを聞くと、納得する人は多いと思うものの、実践する場合は、勇気がいると思う。スループット、在庫、業務費用、ボトルネックについて注意を払わないと全体最適化は出来ないと感じた。全体最適化が出来ていない場合は、これらのいずれかに対して注意を払っていない事になるだろう。主要な工程を理解していないと、ボトルネックがどこにあるかを見きわめる事は難しいように思われる。

本書で述べられているTOC(Theory Of Constraints:「制約条件の理論」は、解説で要点を簡潔にまとめられている。本編を読んでから読むと、TOCの理解が深まるだろう。TOCで印象に残った記述を列記する。また、TOCは、機械の生産だけでなく、ソフトの生産などの広い分野で応用する事が出来ると思われる。


Power of decline(断る力)

2020-07-25 10:43:49 | 読書

 図書館で借りて読んだ“断る力”の感想を以下に記す。著者は勝間和代で、もしかしたら、勝間和代の本を初めて読んだかもしれない。その書名の通り、断ることの重要性を書かれている。読んでいて、断るの逆である、何でも引き受けるというやり方は、ある意味で非常に楽なやり方と感じた。本書で書かれているように、何でも引き受けると「コモディティ(人材であれば汎用的な人材のこと)」に陥ってしまうとも感じた(P.17)。ただし、断るにしても、色々と取り組みが必要である。例えば、次の事が書かれている。断る場合には代案を示す(P.238)。引き受ける仕事に全力を尽くす(P.18)。自分の集中する分野見極める(P.238)。断る場合には、嫌われる可能性があるため、嫌われる可能性を下げる方法や、嫌われてもいい状況についても書かれている。「断る力」をもたないと「子どもサッカー」をプレイしてしまう、(P.49)と書かれている。ストレングスファインダーや七つの習慣等で、他からの引用が見られるので、気になった内容は原書を参考にする事も良いと感じた。

 総じて、断る力と言うのは、選択と集中を進める力と言い換えられるように感じた。著者が主張するように、何でも飛びぬけて出来る人は、ほとんどいないと思うので、得意分野に集中するためには、断る力が必要だと感じた。当然ながら、得意分野への集中や断り方は、戦略的に進める必要がある。


World history 8: absolute monarch and people (世界の歴史8 絶対君主と人民)

2020-06-13 12:23:32 | 読書

 図書館で借りて読んだ“世界の歴史8 絶対君主と人民”の感想を以下に記す。内容は主題通り、絶対君主と人民に関する話である。ドイツの30年戦争から始まり、産業革命前のイギリスなどが書かれている。舞台は17世紀と18世紀のヨーロッパである。描かれている国や地域は、ドイツ、オランダ、イギリス、フランス、ロシア、プロシアといったところである。ヨーロッパが中心である。詳しい説明はあまり書かれていないが、この頃になると、ヨーロッパ諸国は海外の植民地が増えており、その軍事力や技術力は他の地域を圧倒するようになっていたようだ。この時期は、イギリスやフランスが強国の地位を確立した時代でもあったようだ。人民の抵抗が組織的になり、それに対抗するために、支配者層の権力の集中が必要となり、絶対君主が出現したという記述は非常に印象的である(P.499)。絶対君主化でも反乱が起きていたことは、本書に関われた通り記憶する必要があるように感じた(P.499)。こういった流れがあり、ヨーロッパの近代化が進んだ事を知るのは良い事だと感じた。
 以下は気になった内容の抜粋。
P.20 30年戦争により、ドイツの人口は約1/3に減った。
P.28 1648年のウェストファリア条約により、ヨーロッパの最強国だったスペインの没落がはっきりしたこと。また、同じくウェストファリア条約は神聖ローマ帝国の死亡診断書と呼ばれている事は興味深い。
 P.76 オランダ人はねばり強い。
 P.96 オランダ人の現実に即して着実な実践力を展開する国民性。
 P.115 イギリスのジェントルマンは、貴族の下、農民に上に位する地主。
 P.126 17世紀のイギリスの議会は、ジェントルマンを中心とした議会。
 P.128 権利請願のように、イギリス法のつねは、人権を法文で抽象的に規定せず、事実に即して述べるものが多いようである。
 P.222 1660年のピレネー条約により、フランスがヨーロッパ大陸第一の強大国の地位をしめることになった。
 P.294 几帳面なドイツ人とは対照的なロシア人の性格。ロシア人は「ひじょうな短時間に、全精力をふりしぼって、目にもとまらぬ早さで仕事をかたづけるが、そのあとは、のんびりとあそんですごす」。
 P.461 ウォルボールは現実主義者であったから、行為の純粋な動機に訴えることは「児(じ)践(ぎ)に類することだ」とわらった。


Surgeon Hisayoshi Suma(外科医 須磨久善)

2020-05-16 16:16:14 | 読書

 Kindleで読んだ“外科医 須磨久善”の感想を以下に記す。作者は、“チームバチスタ”等を手掛けた海堂尊である。世界的権威の心臓外科医である須磨久善について書かれている。須磨久善へのインタビューを元に、本書が書かれている点は、あとがきでも触れているように、異色と思われる。著者の海堂尊は、既存の枠組みを飛び越える須磨の事を、破境者と称している。その例として、約5年ごとに、須磨の意思で、普通ならしないであろう選択をして環境を大きく変えている事(位置No.921)や、患者の治療を考えて、バチスタに拘り改良を続けている事などがある。大阪医大卒業後に、母校の大阪医大に勤務せずに、虎ノ門病院の一般外科で勤務したことや、ローマ・カトリック大学から帰国して葉山ハートセンターの設立に尽力した事などは、普通の人には出来ることでは無いと感心した。また、須磨が、日本で初めてのバチスタ手術を失敗して、すぐの須磨の二回目のバチスタ手術に対する考えには、目を見張るものがあった。考えは、二回目を失敗すると、日本でのバチスタ手術は不可能になるので、自分が成功させる必要があるというもの。傍から見ると、重大事をあっさりと決心したように見えても、当人の須磨には、ある種の葛藤もあったようである。こういった決断を進めるには、他人がどう思うかを気にせずに、 “一流の医者になって病気を治す”という自分の軸が必要になっているようである。自分は医者ではないが、職業観や自分軸は、医者でなくても必要なので、これらの重要性を学ぶ良い機会になった。

仕事を進める心構えで役に立ちそうな内容を列記する。

位置: 379、よけいなことをしない、やり損じない。一発で決める。  そうすれば手術時間は絶対短くなると、須磨は断言する。⇒位置:365に、作業量を増やそうとするのは、失敗をしたときの言い訳をするための保守性と書かれている。こういった考えに至るには、何が大事かを考える必要がある。

位置: 388、手術技術をとことん向上させたいと考えるか、患者が治ればそれでいいと考えるかによって違ってくる。どのような目標を設定するかということは、最終的にその人間の哲学に関わってくる問題なのだろう。⇒ともすれば、その場しのぎの方策に終わってしまう。ここで書かれているように哲学の問題だと自分も思う。

位置:718、「画期的な業績を挙げたければ鈍感になるべきです」  相手を無視する力も重要だ、というのだ。⇒確かに、人の意見を聞きすぎると、新しいことができなくなる場合がある。

 位置: 765、日本は田植え社会だと須磨は言う。遅すぎてもダメ、一人だけ早く行ってもダメ。みんなで動くことによって田植えがきっちり行なわれる。それはおそらく、農耕民族と狩猟民族の違いなのだ。狩猟社会では、十人中一人がでかい獲物をとってくれば、あと九人なんにもないとしても、みんな幸せになれる。須磨は、狩猟社会の一員なのだ。⇒こうい った話はよく聞く。地理と歴史の影響だと思う。

 位置: 1,730、「人が自分をどう思っているとか、ひそひそ話の中身みたいな小さな問題よりもはるかに、自分が自分の行為をどう思うかの方が大切です。たどりついたゴールが、本当に最初に目指していたゴールかどうか。そうした問いに対する回答がイエスなら、あとは、まあそこそこ、どうでもいいのではないでしょうか」⇒確かにその通りだとは思う。しかし、この心境になれる人は、多くはないと思う。

 一流に対する考えも、興味深いものがある。(位置1928と1943)「一流になるには、地獄を知り、その上で地獄を忘れなくてはなりません。地獄に引きずられているようではまだまだ未熟ですね」(位置1943) (一流の人材を育てるには)「本物を見るのが一番いいでしょう」  

 元々書かれていたのが2009年で、書かれていた当時とは状況が少し異なる。著者がテレビ番組のキャスターを務めていたせいか、何となく文体が、テレビのドキュメンタリー番組のナレーションのような印象がある。あとがきの内容を含めると、好き嫌いが分かれる内容になっている。


World history 6:Overture to modern times(世界の歴史6-近代への序曲)

2020-05-09 14:04:08 | 読書

 図書館で借りて読んだ“世界の歴史6 近代への序曲”の感想を以下に記す。本書の主題は、ルネサンスと宗教改革で、政治家の話はそれほど多くない印象がある。自分は、キリスト教に詳しくないので、知らない事が多かった。ルネサンスは、政治的な話よりも、文化や技術の発展の方が話の中心となっている。通して読むと、ルネサンスで進歩した技術が、現在の我々に影響を与えている事が実感できた。宗教改革では、人文主義の発芽に始まり、エムスラス、ルター、カルヴァン、イギリス国教会に関する話が書かれている。こうしてみると、ヨーロッパの共通点といえばキリスト教で、そのキリスト教の状況を一変させる宗教改革は、ヨーロッパに与えた影響を窺い知ることが出来る内容となっている。現在の文明は、欧米の文明が元となっているので、その原型がどのように成り立ったかを知るために本書を読むのは、良いと思う。読んでいる時は気付かなかったが、エムスラスの記述が、百ページ程度になっているのは、宗教改革に与えた影響を考慮したためと思われる。

 一番印象に残っている記述は、ルターの三大宗教改革文書の三つめである「キリスト信者の自由」(P.385)である。この精神が近代社会のなかに生きていると感じた。

 それ以外に印象に残った記述は以下の通りである。

スペイン・ポルトガルの大航海時代の膨張は、香辛料による(P.179~P.186)。⇒後世に影響を与えた活動の帰結として興味深い。

不作に強い(新大陸からの)イモの出現は、その後の全世界の人々を、(飢餓から)どんなに救ったことであろう(P.201)。⇒食物は大事だ。

しかしいずれにせよ、ロヲラの体現するスペイン的敬虔と革新トマス主義神学とが、近代カトリシズムの根本精神となったことはたしかである。カトリックの改革は、異端審問や禁書などの外的強制手段ではなく、こうした内側からの覚醒運動によってこそ、旧教会の立ちなおりは可能だったといわねばならない(P.473)。⇒教育の実施についても述べており、こういった根本精神は、やはり大事だ。

 いまもなおヨーロッパ人にルネサンスと宗教改革が与えている感動は、直接ではなくても、根本的である個性的で自由な人間が、しかも確信的な明るい将米〈と必ず進んでゆくというあの楽天的な構想は、ルネサンスと宗教改革のあとをうけ、両者の摂取と総合の上に、はじめて成立しえたものである。(P.513)⇒色々と影響はある点が分かる。


Irrational workplace(非合理な職場)

2020-04-25 13:18:04 | 読書

 知人から借りて読んだ“非合理な職場 ―あなたのロジカルシンキングはなぜ役に立たないのか”の感想を以下に記す。本書では、職場を良い方向に変えようとした際に、ロジカルシンキングが通用しない状況の分析と、それに対処してより良く職場を変える方法が書かれている。組織・人材コンサルの専門家である著者の経験や色々な理論を交えて、それらが書かれている。

 自分として気になった内容を列記する。P.58の「ロジックを通すには非ロジック的な心理を理解しなければならない」、P.98で述べられている8つの集団的浅慮の兆候は、日本企業の組織や雇用の特徴から生まれてくる可能性が高い。P.109のスキーマに依存しない方法“具体的には、一緒に「現場・現物・現実を見せ、一つひとつ事実を積み上げて考える行動を一緒にとる」というやり方である。” P.156の“日本企業は欧米企業と異なり、雇用の流動性が低いため、会社と異なる価値観を有する社員が多くなりやすい”。また、あとがきのP.261等で書かれている日本企業は同質性に慣れ過ぎている。


(Law of decline)衰退の法則

2020-04-18 11:25:34 | 読書

 Kindleで読んだ“衰退の法則――日本企業を蝕むサイレントキラーの正体”の感想を以下に記す。会社の研修の一環として、読んだ本である。徐々に業績が悪化して衰退した日本企業とそうでない企業を分析した著者の博士論文を、一般のビジネスパーソン向けに書き直した内容となっている。表題になっていると衰退は、徐々に業績が悪化する状態を指している。本書で何回か述べられているように、書き手の経験や持論を排除して、科学的な方法で、分析しているところが大きな特徴となっている。また、文化心理学のアプローチから、日本企業に衰退を促す要素に、日本の文化があると述べている点も大きな特徴である。

 自分が適当に解釈すると下記になる。日本を含む東アジア地域では、(人口が多く、人と協業する事が多いためか)相互協調的価値観が強い。その結果として、日本人が多い日本企業には、①社内での対立を極力回避する、 ②役職や入社年次といった社内秩序を強く重んじる、といった共通点が見られやすい。それを受けて、①侃々諤々の議論、「ガチンコの議論」が行われることはなく、②役職上位者や有力者の意見に過度に同調する傾向が見られ、 ③ 全会一致で決議されるのが通例であり、④出席者間に暗黙の相互不可侵の合意が存在するため、部分最適の議論が大半を占めている。また、⑤対立を生じさせかねない PDCA は巧みに回避されている、状態を企業が推進しやすい。これらは、対外的な活動よりも組織内の秩序を優先する事になり、衰退の要因となる(これは自分の解釈に近い)。さらに、こういった内容を推進するような人事評価が組み込まれている。本書では、ミドルの出世条件・経営陣登用プロセスと書かれている。破綻企業の衰退メカニズムは、図1-3の衰退メカニズムとしてまとめられている。一方で、優良企業は、事実をベースとした議論を尊重する規範と、人事部曲の統制に基づく公正な人事登用プロセスによって、衰退を抑えている。この衰退の防止は、図3-1サイクル駆動を阻む2つのくさびとしてまとめられている。

 著者が書かれているように、日本企業は衰退サイクルを駆動しやすいため、優良企業が行っている2つのくさび等の施策を行う事が重要かつ、必要だと感じた。施策を実行する際には、①社内での対立を極力回避する、 ②役職や入社年次といった社内秩序を強く重んじる、といった傾向がある事と、その弊害を認識しておくことも大事だと思う。


What do person who work fast and do not failure do? “仕事が速いのにミスしない人は、何をしているのか?”

2020-04-11 10:55:41 | 読書

 KindleのPrime Readingで読んだ“仕事が速いのにミスしない人は、何をしているのか?”の感想を以下に記す。書名の通り、ミス(失敗)を減らす方法が書かれている。人間なので、失敗はつきものという考えはあるとは言え、生活をしていると失敗はない方がいい事は確かである。気を付ける、注意するでは、失敗を繰り返すので、仕組化する事が重要と書かれている。“失敗学会での取り組みを通して見えてくることは、 世の中の事故も不祥事も、「まったく新しいこと」「まったく想定外のこと」が原因で起こることはほとんどない、 ということです。”がこれをよく表していると思う。

 一番やりやすく効果が大きい事は、位置2107の誤り方の順番だと思う。誤ってから内容を説明するよりも、内容を説明してから誤る方が良い。

 心構えとしては、位置2152になると思う。“日頃の失敗対策も同じです。いくら謝って、今後は気をつけますと訴えても、効果はあまり期待できません。自分の失敗を冷静に分析し、それを繰り返そうにもできないような〝からくり〟を考えないといけないのです。”