図書館で借りて読んだ“世界の歴史6 宋と元”の感想を以下に記す。執筆は宮崎市定とその門弟に当たる佐伯冨である。2018年に一度読んだ本である。1983年頃に出版された中央公論社の世界の歴史を通読する事と、中国史の泰斗とされる宮崎市定の文を読みなおす事を目的として読み直した。読み直しという事を含めて、引用と記述は若干少なめにした。書名の通り、書かれている内容は、大半が宋と元である。ただし、宋の少し前の唐末に関する記述や、元の前身のチンギス=ハンに関する記述も含まれている。
気になった記述は以下の通りである。皇帝の独裁制度の発展(P.108)、生産力のかつてない増大(P.161)、それに関連して宋の文化が先進の西アジアの文化を追いこした事(P.167)。これらが宋の大きな特徴である。唐末頃までのモンゴリア高原では、西方の勢力が優勢であった。宋の文化の発達を受けて、東方の契丹・女真族・モンゴル族が勢力の拡張をしたP.319の記述は印象的である。中国の領土が広大になり、北京を首都にすると言う流れが元代に出来た(P.390)。(日本人)の倫理観念が、産業革命以後のヨーロッパのそれに比較して、大したへだたりがないのは、朱子学の水準が非常に高いものであったからだといって差支えないであろう(P.443)。朱子学、製陶術、茶の樹、書物の印刷といった宋文化は、唐代の文化と異なり、現在まで(日本で)生命を保って生きつづけているのである(P.491)。これらは歴史の大きな流れで、こういった内容を掴み取ることは大事だと思う。
岳飛に対する悪辣な手段をもちいた秦檜を、社会の安寧と宋室の安泰をねがう政治家としては、当時の社会にあってはやむをえない処置であったのであろう(P.287)。20年前だったら、これは、個人的に心情が分かりにくい記述だったが、今読むと心情が分かるようになっているように思う。