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変人技術士の備忘録(別称:すいりき板改)

技術士の日々の思いつきを列記。
すいりき板は、出身研究室の掲示板(現在閉鎖)
専門用語を不定期掲載

Super self learning “ハーバード・ジュリアードを首席卒業した私の 「超・独学術」"

2024-09-23 20:53:11 | 読書

 2022年9月頃に、図書館で借りて読んだ“ハーバード・ジュリアードを首席卒業した私の 「超・独学術」”の感想を以下に記す。ハーバード・ジュリアードを首席卒業した廣津留 すみれの独学術(学習法や考え方)が書かれている。個人的な体験談に基づいた独学術を知りたいようであれば、読む価値はあると思う。

 自分が読んだ独学術に関する本と同じような内容が多い。個人的な体験に基づいているところが本書の特徴だと感じた。個人的に印象に残った点は次の二点。

1.アウトプットの前に、まずは、考える力をつける。

  1. そこでわかったのは、「英語の文章はとてもわかりやすい」ということです。  

最初に結論、その具体例や詳細を語る中身、最後に再び結論。

文の最後に動詞が来る日本語は、これと対照的。一文言いきるまで全貌がつかめないので、「伝わりにくい言語」と言える。そのため、話し方にも工夫が必要。

※結論を先に伝えるように留意する必要がある。コンサル一年目が学ぶことにも記載がある。


Director to be disliked(嫌われた監督)

2024-07-20 15:32:50 | 読書

 2022年7月頃に図書館で借りて読んだ“嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか”の感想を以下に記す。書評のビジネスパーソンに人気があるとあり、どこのその要素があるかが気にかかったので、借りて読んだ。契約に基づいて、個々人の責任と役割、結果を追求する事を、落合は求めている。結果の評価や選手の起用に当たっては、情実は排除されている。しかし、この考え方は、多くの日本の組織とは異なるので、多くのビジネスパーソンにとって、印象的な本になっていると、自分は感じた。なお、本書の中でも、この落合の考え方は、プロ野球という枠組でも、異質と書かれている。プロ野球だと成績の良し悪しは、分かりやすいので、情実は排除しやすいかと自分は思っていたが、そうでない点は意外だった。

 自分もそうであるが、契約や結果ではなく、情実で仕事の評価や割り当てがされると良くないとは感じた。また、所属組織や上司のためといって、自分の責任を放棄するような事も良くないと感じた。逆に、契約や結果に基づいて、仕事の評価や割り当てをする、契約に基づいて、自分の責任をなす。これらの事をしっかりする必要があると感じた。こういった事を読むと、NETFLIXの人事戦略を思い出した。思い出した内容は、社員を大人扱いして細かい管理を行わない、実績を残していても方針と合わない場合は退職を促すというのもの。なお、話は飛躍するが、日本の経済が、この20年間、成長していない理由は、こういった事が個々の企業で出来ていないからだだろうとも感じた。

以下は印象に残った記述の抜き書き。

 P.329の“落合が求めていたのは若さが持つ勢いや可能性という曖昧なものではなく、確かな理と揺るぎない個であった。”が印象的な内容である。

P.433の「俺は好き嫌いで選手は見ていない、そうじゃない人間の方が多いんだ。」

 P.449の「球団のため、監督のため、そんなことのために野球をやるな。自分のために野球をやれって、そう言ったんだ。勝敗の責任は俺が取る。お前らは自分の仕事の責任を取れってな」

P.450の「あいつら、俺がいなくなることで初めてわかったんだろうな 契約が全ての世界なんだって。自分で、ひとりで生きていかなくちゃならないんだってことをな。だったら俺はもう何も言う必要ないんだ」


The four civilization and the global community(世界は四大文明でできている)

2024-05-19 15:06:04 | 読書
 2024年3月頃にKindleで読んだ“世界は四大文明でできている”の感想を以下に記す。Kindleで紹介があったことがきっかけだったと思う。 本書は、有名企業の幹部に向けた講義を書籍にしたものである。本書を読むことで、日本の組織とは何かを考えるきっかけになると思った。自分が一番心にとどめた方がよいと感じた記述は、P.198における次の日本の組織に関する意思決定である。”日本の組織の意思決定は、組織メンバーのコンセンサスを最優先する。そのため、決定の合理性は、後回しになる。[意思決定の議論がなく、意思決定者が不明で、その理由も不明となる。]決定の合理性を担保する仕組みがありません。  企業が、こんなやり方で運営されていると、必ず失敗し、必ず迷走します。” 意思決定の合理性を確保する事が大事だと思う。キリスト教の最後の審判にならい、組織の一員として活動する場合は、ものごとの最後(終わり)に説明責任を果たせるように、文書を残しておくという考えが大事だと思った。最後の審判があるかどうかは別にして、最後である終わり(死)がある事は確かなので、終わりに向かい、合理性をもって、説明責任を果たせるように、その日々を過ごすという考えが一番重要だと思う。いつ最後を迎えてもいいように、日々を過ごしていきたい。
他民族との交流が少なく、変化が少ない日本では、同じような状況がいつもで続くと考えやすいのかもしれない。少なくとも自分は、同じような状況が続くと思いやすいので、留意したい。
それ以外の特に印象の残った点は、以下の通り。
日本は少数者(P.18)。”宗教が、個別の言語や民族や文化を超える、普遍的な内容のものだからです。「普遍的」(universal)とは、時間や空間に限定された特殊なものでなく、もっと一般的だ、という意味です。(P.21)” ⇒普遍的な内容があるという認識は、日本では薄いようだ。
宗教を機能でのべると、《宗教とは、人びとが、同じように考え、同じように行動するための、装置である。》となる(P.21)。⇒このように述べると、神秘的な現象を否定する儒教でも、宗教になる。工学をはじめとした学問も宗教の機能を有する事になると思う。
日本は、他の四大文明とは異なり、正典がない(P.23)。正典があると、行動の予測可能性が高まり、協同しやすくなる(P.26)。
キリスト教に代表される一神教は、神道のような多神教とは考え方が根本的に異なる(第2章)。
理神論による自然科学と科学技術の推進(P.112)。
儒教では、忠よりも孝を優先し(P.157)、それが腐敗の原因となる(P.173)。 
(自分が普遍的な価値を持っていないと考える)日本はやはり、文明ではなく、文化なのです。そして、外の世界から、自分たちに必要なものを取り入れること(だけ)に、いまも熱心なのです。(P.180)⇒これが前から感じていた自分の日本の問題に関する疑念を解消してくれたように感じた。正典に従って、行動しない事にもつながると思う。
(P.202)アメリカの企業は、従業員が多様であることを前提にしています。実際、多様でもあります。多様で異なる人びとを、ひとつにまとめ、協同させることが、文明の本質です。アメリカは、その原理に忠実に企業をつくっています。契約、法律、政策基本文書、マニュアル、……といった仕組みが明確で、暗黙の空気にあたる要素が少ない。ヨーロッパの企業も多国籍化して、同じようなやり方をとっている。  契約やマニュアルは、多様で異なる人びとをまとめ、協同させるためのものだという事に、読み返して、改めて気づいた。

Writing skill of world standard which enable to trasnport logic(論理が伝わる 世界標準の「書く技術」)

2024-05-12 14:07:05 | 読書
 図書館で借りて読んだ“論理が伝わる 世界標準の「書く技術」”の感想を以下に記す。読書猿氏が、紹介されていた論理的な文章を書くための本である。論理的な文章を書くために借りて読んだ。
 ものすごく簡単に要約すると、論理的な文章を書くためには、読者のメンタルモデルを意識して(P.41)、パラグラフにより構成して書く事になる。パラグラフとは、一つのトピックを説明した分の集まりである(P.36)。パラグラフライティングをちゃんとするとも言える。また、論理的でない文章(伝わらない文章)に陥る要因が書かれており、参考になった。その理由は、筆者は、読者と異なり、最終的な結論と詳細を知っているため、筆者は、その文章を補足しやすいためである(P.18)。
 正直に言うと、これまで、パラグラフライティングを意識して、文章を書いていなかった。今後は、ちゃんと意識して書くようにしたい。ただし、パラグラフライティングのルールが、色々と書かれており、すぐに自分が身に付ける事は難しいと感じた。そこで、パラグラフライティングのルールの中でも、まずは、下記三点に気を付けて進めていきたい。
1.読者のメンタルモデルを意識して、本論と関係のある事を書く。
2.パラグラフ(一つのトピックを説明した文の集まり)で、文章を意識して書く。
3.パラグラフの先頭には、そのパラグラフの要約を書く。
 なお、話をする際にも、これに気を付けるようにしたい。パラグラフライティングは、PREP法に通じるところがあると思う。
 この三点が出来るようになったら、本書で書かれている7つのルールを実践するようにしたい。
・ルール1 :総論のパラグラフで始める
・ルール2 : 1つのトピックだけを述べる
・ルール3 :要約文で始める
・ルール4 :補足情報で補強する
・ルール5 :パラグラフを接続する
・ルール6 :パラグラフを揃えて表現する
・ルール7 :既知から未知でつなぐ

Four lines reveal the structure of global community(4行でわかる世界の文明)

2024-05-04 17:24:28 | 読書
2023年12月頃にKindleで読んだ“4行でわかる世界の文明”の感想を以下に記す。
 一番印象に残った内容は、日本人の行動様式の4行も出るが、他の文明とはじめから大きく異なるところである。第6章の4行でわかる、日本社会は、日本の問題点を浮き彫りにしているように感じた。
(1)自己主張する前に、まず相手の様子を見る。
(2)相手も、同じことをしている。
(3)このままでは、何も決まらない。
(4)そこで、みなで話し合って、決める。
 こんな調子で、物事を進めていると、うまくいかない事が多々あるのだろうと思った。なお、他の世界である「キリスト教」「イスラム教」「ヒンドュー教」「儒教」では、4行のうち最初の3行は共通となっており、4行目だけが異なる。
(1)まず、自己主張する。
(2)相手も、自己主張している。
(3)このままだと、紛争になる。
キリスト教の人びとの場合は、
(4)法律があるので、解決する。
イスラム教の場合は、
(4)イスラム法があるので、解決する。
ヒンドゥー教の人びとの場合は、
(4)でも、人びとは別々の法則に従っているので、紛争にならない。
ちなみに、仏教では、
(4)真理があるので、紛争は回避できる。
儒教の人びとの場合は、
(4)順番があるので、紛争は回避できる。
 日本のことに話を戻すと、P.111の次の記述が、うまくいかない事が多々ある要因を示している。”陸軍も海軍もなくなったが、日本社会の組織の病理は、なくなっていない。人びとが所属する集団や組織への忠誠を優先し、本章冒頭の「4行モデル」が当てはまってしまう限り、この社会の宿痾は拭い去れないのである。” 決めた人も理由も判別しない決まりに従って、行動すると上手くいかないとも感じた。P.103の日本社会の基本的ルールは、冷静に見返すと怖いものがある。
“「反対です」と言わないと、同意したと見なす。これが、日本社会の、基本的ルールである。みなが同意すると、どんなことでも決めることができる。そして、その決定は、みなを拘束する。これも、日本社会の、基本的ルールである。”
 また、話し合いと権利と利益に関する話も、興味深い。こうしてみると、普遍性のある考えがない事が、日本人の行動様式の根底にあるように感じられる。普遍性のある考えは、宗教であり、それを本当の意味で日本が有していないことが、この行動様式に表れているのだろう。本書は、宗教で分類されていて、そういった切り口で解釈する方が妥当だと、読んだ後に気づいた。
 日本で、普遍性のある宗教が低調だった要因は、地理的に、文化や言語の異なる他民族との交流が少なかった事だと思う。他民族との交流が少ない場合は、普遍性は、さほど必要にならないためだと思われる。
 また、儒教では、忠よりも孝を優先する(P.89)という考えは興味深い、頭の片隅にとどめておきたい。
 本書を読んで、四大文明のうち、もっともグローバル社会に適しているのが、キリスト教の世界だと気づいた。イスラム教では、ムスリムと非ムスリムとの紛争を解決する一般的な原則をイスラム法では持っていない(P.60)。そのため、非ムスリムを含むグローバル社会には、イスラム教は適さない。ヒンドゥー教は、人びとを区別するので、色々な人びとで構成されるグローバル社会には適さない。儒教では、順番により、物事が決まる、そのため、相手によって行動が変わり、ルールか政治かが分かりづらい。儒教は、相手の多いグローバル社会には適さない。こうしてみると、文字で書かれていない普遍的な自然法(P.38)の存在を認め、それに従うというキリスト教の行動様式がグローバル社会に適しているように思う。
自然法が文字で書かれたユダヤ教やイスラム教と異なり、自然法の改良が可能な点が、キリスト教の行動様式の強みになると、感じた。

Quiet Is a Superpower: The Secret Strengths of Introverts in the Workplace「静かな人」の戦略書

2024-04-27 17:21:44 | 読書
 図書館で借りて読んだ“「静かな人」の戦略書: 騒がしすぎるこの世界で内向型が静かな力を発揮する法”の感想を以下に記す。
 内向型の人が仕事等でとった方がよい行動について書かれている。一般的に、外向型よりも、成功しにくいと言われている内向型の人への助言といえる本である。著書が内向型で、その経験談を踏まえて、色々な書籍を参照にして書いている点が特徴である。P.339の”おわりに”で書かれたアダム・クラントの次の言葉が大事だと思った。
「自分自身を理解すること。だが、それに縛られないこと。自分をよく知ることによって、自分の限界を意識的に超えられるようになる。内向型、外向型というレッテルで自分の可能性を狭める必要はない」
P.38の「自分のタイプ」を知るテストでは、自分は、内向型が14、外向型が3で、内向型の傾向が強くなっていた。
P.254のルイス・シェーの「また、たとえいつもとおりのことをやるだけたとしても、少なくとも、全精力を傾けているように見せる必要はある。」は、意識していなかった。今後は意識していきたい。
上司のタイプに合わせた企画書の提案をする台湾のイノベーション・マネジメントの講演家、ジャッキー・リーのわかりやすい例は参考になると思う。実践していきたい。
・主導型のマネージャーには、企画書の内容を1ページにまとめた概要を提出する。
・感化型のマネージャーには、企画書の見栄えに力を入れる。
・安定型のマネージャーには、実務的な内容にする。
・では、慎重型のマネージャーの場合は? 企画書は分厚ければ分厚いほどいい。
個人的には、主導型のマネージャーに対するやり方を基本とした方がいいと思う。
 また、P.308に書かれた”「外向型」とうまく働くために知っておくべきこと”が参考になる。一番覚えておいた方がいいことは、次の記述と思う。「外向型は反応が素早く、 よく考えずに発言する。 もっと慎重になる必要があると思ったら、早い段階で指摘して気づかせたほうがよい。」 また、次の記述も参考になる。「外向型は会話をしながら自分の意見を見出していく。言い換えれば、話しながら考える。積極的に発言させれば、しゃべりながら考えるだろう。」
 作業時間は50分程度。

日本でいちばん大切にしたい会社(The company most aspired to be cherished)

2024-04-21 13:11:42 | 読書
 2022年10月頃にKindleで読んだ“日本でいちばん大切にしたい会社”と”日本でいちばん大切にしたい会社2”の感想を以下に記す。
 自分と違い、世の中には、立派な事を考え、実践する人がいるという事が、正直な感想である。特に印象に残った会社は、従業員の7割が障害者の日本理化学工業、世界の難民に眼鏡を贈るメガネ店の富士メガネ。それと会社の社会貢献をどうしますかと聞かれて、事業所の近所の清掃をしていると言っている人がいた。自分が言ったわけではないが、何だか恥ずかしい気がした。何が恥ずかしいというか、この程度の発言しか出来ない人が同じ会社にいるという事になる。なお、自分は、法律や良識を守って、利益を出し、税金を納められる企業活動を続ける事が、社会貢献の基本と考えている。これは、人のことをあまり批判出来ないようにも考えている。
顧客よりも社員を大事にするという著者の考えが珍しいように自分は思う。一方で、この考えの方が妥当のように思う。“本当の企業経営とは「五人に対する使命と責任を果たすための活動のこと」であると定義し、使命と責任とは「幸福の追求」「幸福の実現」であると書きました。 五人とは、次の人々のことです。 一、社員とその家族 二、社外社員(下請け・協力会社の社員)とその家族 三、現在顧客と未来顧客 四、地域住民、とりわけ障害者や高齢者 五、株主・出資者・関係機関”。ここで、社員が一番上位に位置する点が著者の独特さと感じた。“完訳 7つの習慣 人格主義の回復“のP.64に同様の考えもあり、それを思い出した。“会社は大切な顧客に望む接客態度でスタッフに接することが原則である。” 自分の場合は、直接仕事を頼む相手を大事にすることが必要と思う。
樹研工業の例“ほかの優良企業と同様、樹研工業もやはり社員を管理するルール、規則がほとんどありません。これは世界の一流の会社に共通していることですが、樹研工業には出勤簿もタイムレコーダーも、出張報告書もないのです。社内会議のための面倒な資料づくりや手続きも存在しません。” これを読んで、以前に読んだネットフリクッスの本を思いだした。新規性の高い製品やサービスを生み出すためには、管理、規則は最小限にとどめ、社員を大人扱いする必要があると思った。とはいえ、多くの企業、日本の伝統的な大企業(JTC)で、これを実践する事は難しいと思う。
未来工業の考え方として推測されている“「部長の仕事をしている社員」、「課長の仕事をしている社員」、「一般社員の仕事をしている社員」という意識で、会社として役はあるものの、個人としては平等”という考えは同感である。ただし、日本は、キリスト教圏と異なり唯一神の下の平等という建前がない。(王様の仕立て屋~フィオリ・ディ・ジラソーレ~ 4のorder#24で、[欧米文化圏では]唯一神の下の平等という建前があるという記述がある)また、日本は、中華圏と異なり、徳の無い君主の放伐を肯定せず、貴族階級を否定する科挙もない。また、日本語には尊敬語や謙譲語があり、力関係を意識する事が多い。これらから、日本では平等という意識が薄いので、役割が異なるだけで、個人としては平等という考えは発展しにくいように思う。
沖縄教育出版で述べられている“つまり、よい会社にはよい社是、よい経営理念があり、それがブレない確かな経営が継続して行われていれば、さまざまなところから評価され、当然、業績もよくなります。”は同感である。これは、精神科医 Tomyの“ぶれない自分をつくるたった1つの方法”で書かれた“人生の基本理念を作れば、迷いが少なくなる”と同じだと感じた(https://diamond.jp/articles/-/291237)。

タテ社会の人間関係 単一社会の理論(Human relationship of vertical society, theory of single society)

2024-04-14 21:45:34 | 読書
 2023年11月頃にKindleで読んだ“タテ社会の人間関係 単一社会の理論”の感想を以下に記す。読んだきかっけはよく覚えていないが、日本社会の問題点が気になった事が一因だったように思う。文体が一般向けでない分、しっかりした構成の文章になっている。日本のことを諸外国と比較して、書かれている話である。ただし、本書で書かれている日本の特徴は単一社会によるもので、日本特有のものではないと書かれており、それには同感である。
 印象に残った単一社会である日本社会の特徴は、「論理的、宗教的でない道徳的社会」である。これをもう少し詳しく引用すると、「次のようになる。日本人の価値観の根底には、 絶対を設定する思考、あるいは論理的探求、といったものが存在しないか、あるいは、あってもきわめて低調で、その代わりに直接的、感情的人間関係を前提とする相対性原理が強く存在しているといえよう。」 この記述を読んだときは、かなり驚いた上に、納得した。一方で、このような社会は、生存に適していない可能性が高いとも思った。個人的には、絶対を設定する思考、あるいは論理的探求が大事だと思っている。ただし、自分は、これらがない、もしくは低調になりやすいと思った方がいい。その上で、自分の考え・行動を規定するようにしていきたい。
 また、「みんながこういっているから」という道徳は、社会がおかれた条件によって変わるもので、根拠として弱いという事に、本書を読んで気付いた。今後は、「みんながこういっているから」を根拠にする代わりに、論理を根拠にするように心がける。おそらく、日本人には、道徳が根拠として弱いという意識はあまりないように思う。
 以下は、「論理的、宗教的でない道徳的社会」の詳しい説明である。
本書にならって、詳しく述べると、以下の通りになる。人と人との関係を何よりも優先するものである価値観は、宗教的ではなく、道徳的である。「みんながこういっているから」「他人がこうするから」「みんながこうしろというから」ということによって、自己や他人に関する考え・行動を規制する。この道徳は、社会がおかれた条件によって変わる、相対的なものである。宗教は、基本的な意味で、絶対性を前提としており、道徳とは異なる。
 別の表現で書くと、単一社会は、社会のおかれた条件により、ころころと考えや行動が変わり、その様は非論理的、もしくは論理性が極めて低調になる特徴を有すことになる。
なお、単一社会がこのような特徴を有す理由は、本書では書かれていない。この理由は、 橋爪 大三郎氏の「シリーズ・企業トップが学ぶリベラルアーツ 世界は四大文明でできている」や「4行でわかる世界の文明」がヒントになると思う。「4行でわかる世界の文明」では、イスラム教やキリスト教のような宗教の普遍的は、あらゆる時間と場所に適用できるもの指している。「4行でわかる世界の文明」の宗教の普遍性と、本書の宗教の絶対性とは同じ意味と解釈している。言語や民族が異なる人達と社会を形成するためには、あらゆる時間と場所に適用できる宗教が必要と思われる。日本のような言語や民族が同じような単一社会は、普遍的な宗教よりも、道徳の方が有用となるようである。また、論理的についても、同様になると思われる。つまり、言語や民族が異なる人達の社会を形成するためには、宗教に加え、論理も必要になると思われる。一方で、単一社会では、論理が低調の方がよいようである。

Miracle of Children's Hospice(こどもホスピスの奇跡―短い人生の「最期」をつくる―)

2024-04-06 23:18:18 | 読書
 2021年11月頃にKindleで読んだ“こどもホスピスの奇跡―短い人生の「最期」をつくる―”の感想を以下に記す。日本最初となるこどもホスピスの設立と運営に関する話が書かれている。関係者のインタビューをもとに構成されている。設立の発端から描かれているので、こどもホスピスの件を通じて、日本社会の問題が、出ているように感じた。本書に登場してくる人は、医者を含めた医療機関の人、難病の子供とその家族で、精神的なつらさは、言葉だけでは分からないものがあると自分は感じた。また、本書で出て来る難病の子供と接する医者や看護師、こどもホスピスの関係者は、死と隣り合わせの職業であり、自分には出来ないと思った。
 仕事に関係する感想を書くと以下の通り。本書から、こどもホスピスの職員は、組織の理念である難病の子供と家族のQOL(Quality Of Life)の向上を最重要視していることが分かる。また、こどもホスピスの理事の高場氏が、それを重視して、高級タオルの購入を決めた事(位置2,343)のように、実践している事がある。本書で、あまり書かれていなかったが、こどもホスピスの管理者(上位者)の人達は、現場の職員の人達が十全に能力を発揮できるように、取り組んでいるように感じた。理論は、実効に押されがちという話が、宮崎市定著の「中国の歴史 下」での北宋の濮議で出ている。理念(理論)の実践には、上位者の人達の働きかけが必要と感じた。翻って思い返すと、自分と周りの人が、それを実践できているかは、甚だ心もとないと感じている。
 この本は2021/11/14から2021/11/27まで、読んだ本で、2021/11/14に、自分は娘とピース大阪に行った。ピース大阪は、第二次世界大戦中の大阪の爆撃を中心に、戦争と平和に関する調査研究や展示を行っている施設である。当たり前の話であるが、職業軍人の死傷よりも、子どもや女の人の死傷に関する展示が多かった。これを読んでいて、しわ寄せが弱い立場の人にいきやすい事を思い出した。

World history of the world (16) modern history of the world - crossroads of humanity[世界の歴史16]

2024-03-31 14:41:25 | 読書
 2022年3月頃に図書館で借りて読んだ“世界の歴史16-現代-人類の岐路”の感想を以下に記す。約4年前の2018年3月にも読んでおり、これで読む事は2回目となる。1961年頃に書かれた本のため、ソ連は健在で、中華人民共和国が国連の常任理事国になっていない頃の考え方をしる事が出来る。大躍進政策、文化革命、ソ連の盛衰の記述がないため、少し物足りない感じがある。当たり前の話であるが、これらの記述や見解を読みたい場合は、別の本を読んだ方が良い。
 P.505に書かれている、今日の日本がもたらした2つの要因の出発点は興味深い。一つは、日本の国民が比較的優秀な資質の持ち主。もう一つは、アメリカによる事実上の単独占領という外的条件。後者のアメリカによる事実上の単独占領は、軍事や経済、外交の面で、今も影響を受けていると感じる。

World history of the world (15) fascism and the second World War[世界の歴史15-ファシズムと第二次大戦]

2024-03-24 14:39:47 | 読書
2021年11月頃に図書館で借りて読んだ“世界の歴史15-ファシズムと第二次大戦”の感想を以下に記す。第二次世界大戦に関する話が中心である。歴史の本であるため、第二次世界大戦の戦闘の記述は多くない。第二次世界大戦に移るまでと第二次世界大戦中の各国の経済、軍事、政治、外交が中心となっている。記述は、ドイツ、アメリカ合衆国、イギリス、ソ連、フランス、日本、中華民国が中心という印象を受けた。
読んでいて、第一次世界大戦の戦後処理、1929年に起こった世界恐慌が第二次世界大戦に影響していたと感じた。もう一つ付け加えると、最後のP.511に書かれたドイツ帝国の滅亡の理由が非常に印象的である。“ドイツが第一次世界大戦にも、第二次世界大戦にも敗北したのは、カイザーやヒトラーやあれこれの将軍たちが、若干の作戦や政策の上で失策をしたためではなくて、ドイツ支配勢力の目的自身が時代おくれだったためであった。すなわち、植民地や従属国の諸民族が解放されつつある二〇世紀の中ごろになって、あらゆる民族をゲルマン民族に従属させ、ヨーロッパの文明国までをほろぼしたり、ドイツの属国にしてしまおうという時代おくれな世界征服計画(および国内における非民主的な抑圧体制)を強行したために、滅亡したのである。” 日本も同じようになっていたように自分は思う。時代おくれな計画を強行した組織は、滅亡するという事が教訓になるように思った。
第一次世界大戦と世界恐慌を通じて以下のことが起こった。気になったので要約しておく。イギリス、フランス、アメリカ合衆国のような国力の強大な「持てる国」が出来上がった。一方で、ドイツ、イタリア、日本のような国力の貧弱な「持たざる国」が出来上がった。「持たざる国」は、軍備拡張と軍事的な脅迫、侵略により、世界恐慌を乗り越えようとした。
以下は、その抜き書きである。「P.14、軍備を拡張して他国を脅してみても、目的とする利益がじゅうぶんに得られないときには、彼らはついに武力に訴えてこれを得ようと試みることとなる。それらの国の軍部や保守派の連中は、ほかの方法を考えることができないし、重工業者もまた戦争による自分の産業の隆盛を願うようになる。そうしなければ「持たざる」国の貧しい国民たちは、軍事費の増大に圧迫された生活難のために、政府に対する不満を高めるにちがいないからである。」 その結果が、ドイツと日本とイタリアの敗戦、おびただしい死者、領土の喪失、国土の荒廃となったのは、何とも皮肉なものである。今から見れば、戦争という選択肢は、恐ろしい結果をもたらしたことになる。 P.460の本文の言葉を借りれば、”一九四五(昭和二〇)年八月十四日、正式にポッダム宣言受諾(じゅだく)、 ここに一九三一年以来戦争をしつづけてきた大日本帝国は、事実上灰燼(かいじん)のなかに崩壊したのである。”となる。
ナチスドイツは狂人の集団ではなく(P.38)。ドイツ国民主義と正統派愛国心とは、権威主義と軍国主義とに立脚していたから、ナチズムはドイツの国民的な精神風土そのものと一致するか、すくなくともそれと矛盾していないかのようにみえたのである。(P.85)
日本が世界征服を企図した「田中メモランダム」は、偽造であるが、それに沿ったように日本が行動した事を読んで、驚いた。(P.247、P.248) 
 1938年9月の時点で、イギリスもフランスも、ドイツに対し、生産力や軍備の点で劣勢になっていた点は、少し驚いた。ナチスドイツの躍進という見方が出来そうだ。一方で、ドイツ経済の復興は世界経済の回復に負うところが大きかった(P.360)。また、ワイマール共和制末期に失業者に仕事をあたえるプランが積極的にすすめられていたことをナチスが継承した点(P.360)を考えると、ナチスだけの要因とは考えられないように思う。
 ドイツ側にも弱点があったが、フランス、イギリス、ソ連に弱点があり、緒戦はドイツが優勢になった(P.368)。ドイツは、第二次世界大戦の初期までは、目のくらむような内政と外交の成功を収めた(P.372)。
 反ユダヤ主義のP.383付近の記述も印象的である。ユダヤ人に限らず、既存の多数の人達と違う考えの人が排斥されやすい事や、主流でないがために新興の勢力を有しやすい事が書かれている。前者はキリスト教の考えとユダヤ人の考え、後者はユダヤ人が技術者や弁護士のような新しい職業について羽振りが良かった事になる。こういった話は、当時のユダヤ人に関わらないように思う。
P.511の最後の文は、第二次世界大戦のドイツの締めくくりにふさわしい文章となっている。“ドイツの民衆は、自分らの生活の向上と幸福を求めて、これまでいろいろな既成政治勢力を支持してきたように、ナチスを支持したのであるが、その素朴な期待の大部分は結局のところ裏切られたのである。” これは、日本やイタリアも同じだと自分は思っている。

Rebirth of Sony(ソニー再生 変革を成し遂げた「異端のリーダーシップ」)

2024-03-20 14:17:22 | 読書
2021年10月頃にKindleで読んだ“ソニー再生 変革を成し遂げた「異端のリーダーシップ」”の感想を以下に記す。著者は元ソニーの社長の平井一夫氏である。ソニーの立て直しで心掛けた内容は参考になる。それをまとめると、以下になる。
現場の部下の困りごとを聞き、部下のやる気を鼓舞する。改革に聖域がない事を示す意味を持たせたアメリカの本社ビルの売却のように、行動にメッセージを持たせる。異見を自分から聞き、取り入れる。また、「雲の上の人」にならないように夫人と同伴で社内の会議に出る。ソニーの向かうべき方向を「KANDO」のひと言で表し、会社の方向性を繰り返して示す(本書では壊れたラジオと表現されている)。世界中の拠点を飛び回り、社員に方向性を伝える。知ったかぶりをしない、肩書きで仕事をしない。
 平井氏のこの仕事の進め方は、よく聞くともっともな仕事の進め方(本書の表現では当たり前のこと)であると感じた。また、平井氏のリーダーシップは、サーバント型のリーダーシップに当たると思った。実際にやる事は大変だが、見習いたい。本書で書かれているように、実務を担当する現場が主役で、その方向を示し、現場のやる気が出す事に尽力しているように感じた。ただし、少し考えると、出口が憶測している日本で理想とみなされるリーダーとは違うように感じた。カリスマ性があり、実務に精通しているジョブズのようなリーダーが、日本では理想的という憶測が出口にはある。実際には、ジョブズのような人は稀である。少なくとも、そのような能力のない人に対して、ジョブズのようなリーダーシップの発揮の仕方を期待する事は間違いだと思った。平井氏は、自分のようなジョブズのようなリーダーシップは出来ないと書いてあったが、経歴や実績を見ると、確かにその通りだと出口は思った。その実務に精通していない事を素直に認めて、部下の力を引き出すようにした事が、ソニー再生の一因になったと、出口は感じた。職位が上になると、「雲の上の人」になりやすく、知ったかぶりをしやすく、肩書きで仕事をしやすくなりやすい。これらは本書で書かれているように、仕事の進め方、職業人のあり方としては、正しくないので、厳に慎むべきだと思った。また、実務で動く人が自信を持って、正しい方向の仕事をしてもらう、その実力を引き出すことが重要。繰り返し方向を述べることは、自分は面倒なので、やらない事が多いような気がする。退職を促す際には、その人に敬意をもって、自分から伝えるようにしている姿勢は非常に立派だと思った。
 平井氏のリーダーシップを見ていると、残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法に書かれた記述を思い出した。“かつてのお金持ちは、お城のような建物の最上階の奥まった部屋に潜み、超越的な権威で周囲を畏怖させ、組織を 睥睨 し支配する権力者だった(西武鉄道グループのオーナーだった堤義明みたいに)。それがいまでは、世界じゅうを飛び回り、ひととひと、ビジネスとビジネスを結びつけることで富を生み出している(ソフトバンクの孫正義がその典型だ)。” これからのリーダーシップは、孫正義や平井一夫のようなものになると思った。
 もう一つ平井氏はソニーでは傍流にも関わらず、社長になり、ソニーを再生した点で、気付いた点を記載する。貝と羊の中国人や宮崎市定の中国史等の歴史の本では、変革者は、文化圏の境目や、傍流、辺境出身者が多いと書かれている事が多い。例は、ヒトラー、ナポレオン、スターリン、織田信長、豊臣秀吉で、彼らはいずれも、先進地域のエリート階層ではない。先進地域のエリート階層が有する、保守的な意識、妙な特権意識、しがらみ(桎梏)、身内の論理は変革には不向きと思われる。者にはこういった事からすると、平井氏はソニーでは傍流であった事も、ソニーを再生できた要因ではないかと思った。なお、ここまで書いて、平井氏は、保守的な意識、妙な特権意識、しがらみ、身内の論理を排除するようにしていた事に気付いた。かなり難しいと思うが、自分も、保守的な意識、妙な特権意識、しがらみ、身内の論理を排除するようにしたい。
 本書でも出てきたように、平井氏は雑誌でかなり厳しい事を言われたようである。自分も随分前に、そういった記事を見たことがある。世界規模の企業を率いる事は、そういった意味でも大変で、自分には勤まりそうにないと思った。

World history of the world (14) after the First World War (Chuko Bunko) [世界の歴史14 第一次世界大戦後の世界]

2024-03-10 14:31:14 | 読書
 2021年9月頃に図書館で借りて読んだ“世界の歴史14 第一次世界大戦後の世界”の感想を以下に記す。書名では第一次世界大戦後の世界となっており、扱う範囲は第一次世界大戦から世界恐慌がはじまる少し前となっている。年で言えば、1914年から1927年頃となっている。国で言えば、ヨーロッパ列強の英独仏伊、トルコ、この頃に成立したソビエト連邦、アメリカ合衆国、中華民国、日本などが記述の中心となっている。発行されたのが1983年で、ソビエト連邦が健在の頃だったので、その影響を受け、ソビエト連邦の記述が多く、その脅威がよく書かれているように感じた。また、日本が列強の仲間入りになっており、日本の影響力は、自分が思ったよりも大きい事が感じられた。
 この後に、世界恐慌、第二次世界大戦と続くわけであり、その兆候を端々に感じる。第一次世界大戦が終わると、オーストラリア、ロシア、ドイツの君主制が崩壊した事は、時代の流れを示す良い例だと思う。巨額の賠償金を課せられ、植民地や本土の領土の喪失した戦敗国のドイツは、かなり厳しい状況だった事が分かる。後の歴史を知っているせいもあり、何となく、本格的な戦争、第二次世界大戦に向けて、雰囲気が感じられる本だった。
 P.490から、まとめて書かれているように、社会主義国のソビエト連邦の成立、民族自決の意識の高まり、アメリカ合衆国の台頭が、この時代の大きな流れと思う。

The sun also sets(日はまた沈む)

2024-03-03 14:28:02 | 読書
2021年8月頃に購読した“日はまた沈む”の感想を以下に記す。日本経済が好調だった1989年に、当時の通説とは反して、日本経済の凋落を予見した本である。はじめにのP.2で書かれているように本書の見方は、一般原則にもとづいている。より一般的な見方である「大きな傾向や動きというものは、かならずといっていいほど、それ自身をうちこわす種子をはらんでいる。したがって、ある傾向が最高潮に達するころには、それをうちこわす種子もしっかりと根づいているはずなのである。」は、様々な分野で使えそうである。
1989年頃の日本経済が好調だった理由として、本書では、次のように書かれている。高い貯蓄率(莫大な貯蓄)、国内の低い資金需要(緊縮財政と少ない財政赤字)、輸出が輸入を上回ったこと(莫大な経常収支の黒字)、それによって生じた資本の余剰と輸出が原因と書かれている。莫大な経常収支の黒字に関しては、円高による輸入の増加や生産の海外移転、さらなる円高によって、輸出が減少し、経常収支の黒字の減少も進むと予測している。貯蓄率は、高齢化により減少すると予測している。さらに、当時の緊縮財政は、景気が悪くなれば、続けられず、高齢化により、緊縮財政が出来ないと予測している。1989年当時から、日本は2000年頃から高齢化が急速に進む事は分かっていたので、それを織り込んだ予測と言える。また、日本の経済が発展した理由とそれが続くかどうかを分析している。経常収支の黒字自体が、為替の変動による経常収支の黒字を減らす働きがある点への着目は優れた洞察だと感じた。この本からは、通説に惑わされずに、一般原則に基づいて、物事を分析して、将来を予測する事の重要性が学べた。少し具体的に書くと、通説は日本経済の繁栄し続ける、一般原則は日本経済の繁栄の要因は資本の超過、それは永続性のない要因になる。そのため、いずれは日本経済が凋落すると著者は予測している。


この日が沈む以外の内容として、日本に対する一般的な見方(神話)に対して、一般原則により、その検証を行っている。どこかで聞いた話もあり、説得力のある話が展開されている。日本の輸出額はGDPの16.5%で、フランスの21%、西ドイツの32%、イギリスの26%、オランダの51%に比べれば、低い方である(P.53)。輸出が多いのではなく、輸入が少ないので、経常収支の黒字が巨額になっている。そのため、「日本は輸出に依存している」は、正しいと言えない。2019年では、輸出額のGDPに対する割合が16.1%なので、輸出の依存に対しては、あまり変わっていないようである。
種々の製造業において、証券取引の黒字の割合が大きかった事(P.184)も気にかかった。これは、日本経済の衰退が1980年代に表れはじめた例になるのだろう。
本書の日本のやり方や文化で気にかかった記述を下記に列記する。
どんな取引にせよ、日本を相手とする場合に公式に説明をそのまま受け入れるのは、あまりりこうなやり方ではないからだ。日本人はまた、外国人が公に主張したことと現実に起こったこととが食いちがっても、まったく意に介さない(P.148)。貿易協定に関する記述で、融通無碍で二枚舌の日本人と表現されている事(P.217)。残念ながら、日本人は聞き手が聞きたがっていることを話すのであり、たとえ事実に反しても相手を喜ばせることを口にする傾向があることはよく知られている(P.277)。(外交官といった海外に対する)なだめ役の発言が、あまり事実を語っていないこと(P.278)。これらの内容から、外国人は、日本人は事実に基づいた話と約束を軽視すると言う見方が出来るように感じた。こういった事があると、個人的には首をかしげたくなる。これは、橘玲の(日本人)や菊と刀の日本人の考え方と整合的である。参考までに(日本人)で気になった記述を下記に列記する。“日本人は、御利益のある神と自分の得になる権威しか認めない。” “日本人は世俗的で、世俗的というのは損得勘定のことで、要するに、「得なことならやるが、損をすることはしない」というエートスだ。” “近代的な正義の特徴は、「原理主義」にある。正義は状況に依存せず、いついかなる場合でも、相手が誰であっても、不変でなければならない。こうした正義の普遍性は、利害の異なる多種多様なひとびとが自発的に従うルールを定めるうえで不可欠のものだった。” “ただし、日本の正義は状況依存的。” “だが日本では契約の絶対性はまったく理解されず、法は 融通無碍 な便宜的なもの(努力目標)のままだった。” “日本の政治家には理念がなく、状況に応じて分配を考えるだけ。”

日本の政治家は、他の西側諸国と異なり、政見(政治的な目的)がなくても首相になれる(P.287)。日本は、より大きな利益―平和、国際的な調和、開かれた市場、自由貿易―は、偏狭で党派的な利害よりも優先されない(P.297)。これらの記述は、日本の政治家に理念がないとも言えるので気にかかった。
 
※浮き沈みのある環境の中でも、技術で勝ち続けるには、どこに注力していくのかの考え。
自分の考え方は大きく二つあり、一つは浮き沈みに応じて注力する技術を少し変える事、もう一つは浮き沈みの影響を受けにくい技術に注力する事。いずれにしても、熱力学、流体力学、材料力学といった原理原則を正しく理解して、それらを実際の機械に正しく応用する事に注力する。
・浮き沈みに応じて注力する技術。
1.新技術の開発(要素技術の開発)が多く行われる状況。熱流体を使った製品の高効率化や非設計条件での高効率化、小型化を注力する。この場合は、最適化、数値計算の精度向上、信頼性の高い実験といった分野に注力する。
2.開発が終わった新技術の製品への適用が多く行われる状況。製品に適用するために、条件が変わっても応用できるような技術、ロバスト性や数値計算の精度向上、過去の実験結果の応用といった分野に注力する。
 3.新技術の製品への適用が一通り終わっている状況。製品の利用やメンテナンスに関する技術に注力する。例は、製品の性能劣化への対策としての部品の交換、機械自体の交換に関する技術。判断基準となる製品利用時の熱流体の評価技術、過去の実験結果の活用に注力する。実際の機械の使用状況や現状は明確とは限らないため、不明確な状況での診断技術に注力する。データ処理の技術の必要も増す。
 時間差や規模の違いはあっても、1.⇒2.⇒3.⇒1.の循環を繰り返すと考えられる。自分の置かれている状況を踏まえて、注力する技術を徐々に変えていく。
・浮き沈みの影響を受けにくい技術
 数値計算を使った精度の高い熱流体や強度に関する予測技術は、新技術の開発や製品の設計をする上でも、製品の利用やメンテナンスでも、中核となる技術である。また、膨大な実験結果や数値計算の結果を利用するデータ処理の技術も、同じ可能性を秘めた技術である。したがい、予測技術やデータ処理の技術に注力する。技術と製品の普及状況によって、対象と考え方と使い方はやや異なるので、普及状況に応じて、その対象を変えていく。自分の得意分野で注力し、勝負する事が大事だと思う。

Illustration of everything(なんでも図解)

2024-02-12 21:48:25 | 読書
 2021年7月頃に図書館で借りて読んだ“なんでも図解”の感想を以下に記す。話し言葉を含む文章を分かりやすく図解にする方法が書かれている。はじめにのP.1で書かれているように、この図解は、打ち合わせ、会議、アイデアブレスト、プレゼンのあらゆるシーンで活躍すると自分は感じた。200種のビジネスアイコンかなり細かい技法も本書で書かれており、本書の内容を全て実践できれば、非常に役立つと感じた。とは言え、実践する事は難しいので、簡単な内容を、囲み・矢印・人を使って図示するようにしていきたい。以前教わったフィンランド式かるたの洗練された手法という印象があった。どちらかというと、フィンランド式かるたの方がやりやすい。最近、フィンランド式かるたを利用していないので、フィンランド式かるたを利用するようにしたい。なお、図示する時には、P.131のように、余白を2文字程度空けておく方がいい点は留意したい。