変人技術士の備忘録(別称:すいりき板改)

技術士の日々の思いつきを列記。
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Rebirth of Sony(ソニー再生 変革を成し遂げた「異端のリーダーシップ」)

2024-03-20 14:17:22 | 読書
2021年10月頃にKindleで読んだ“ソニー再生 変革を成し遂げた「異端のリーダーシップ」”の感想を以下に記す。著者は元ソニーの社長の平井一夫氏である。ソニーの立て直しで心掛けた内容は参考になる。それをまとめると、以下になる。
現場の部下の困りごとを聞き、部下のやる気を鼓舞する。改革に聖域がない事を示す意味を持たせたアメリカの本社ビルの売却のように、行動にメッセージを持たせる。異見を自分から聞き、取り入れる。また、「雲の上の人」にならないように夫人と同伴で社内の会議に出る。ソニーの向かうべき方向を「KANDO」のひと言で表し、会社の方向性を繰り返して示す(本書では壊れたラジオと表現されている)。世界中の拠点を飛び回り、社員に方向性を伝える。知ったかぶりをしない、肩書きで仕事をしない。
 平井氏のこの仕事の進め方は、よく聞くともっともな仕事の進め方(本書の表現では当たり前のこと)であると感じた。また、平井氏のリーダーシップは、サーバント型のリーダーシップに当たると思った。実際にやる事は大変だが、見習いたい。本書で書かれているように、実務を担当する現場が主役で、その方向を示し、現場のやる気が出す事に尽力しているように感じた。ただし、少し考えると、出口が憶測している日本で理想とみなされるリーダーとは違うように感じた。カリスマ性があり、実務に精通しているジョブズのようなリーダーが、日本では理想的という憶測が出口にはある。実際には、ジョブズのような人は稀である。少なくとも、そのような能力のない人に対して、ジョブズのようなリーダーシップの発揮の仕方を期待する事は間違いだと思った。平井氏は、自分のようなジョブズのようなリーダーシップは出来ないと書いてあったが、経歴や実績を見ると、確かにその通りだと出口は思った。その実務に精通していない事を素直に認めて、部下の力を引き出すようにした事が、ソニー再生の一因になったと、出口は感じた。職位が上になると、「雲の上の人」になりやすく、知ったかぶりをしやすく、肩書きで仕事をしやすくなりやすい。これらは本書で書かれているように、仕事の進め方、職業人のあり方としては、正しくないので、厳に慎むべきだと思った。また、実務で動く人が自信を持って、正しい方向の仕事をしてもらう、その実力を引き出すことが重要。繰り返し方向を述べることは、自分は面倒なので、やらない事が多いような気がする。退職を促す際には、その人に敬意をもって、自分から伝えるようにしている姿勢は非常に立派だと思った。
 平井氏のリーダーシップを見ていると、残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法に書かれた記述を思い出した。“かつてのお金持ちは、お城のような建物の最上階の奥まった部屋に潜み、超越的な権威で周囲を畏怖させ、組織を 睥睨 し支配する権力者だった(西武鉄道グループのオーナーだった堤義明みたいに)。それがいまでは、世界じゅうを飛び回り、ひととひと、ビジネスとビジネスを結びつけることで富を生み出している(ソフトバンクの孫正義がその典型だ)。” これからのリーダーシップは、孫正義や平井一夫のようなものになると思った。
 もう一つ平井氏はソニーでは傍流にも関わらず、社長になり、ソニーを再生した点で、気付いた点を記載する。貝と羊の中国人や宮崎市定の中国史等の歴史の本では、変革者は、文化圏の境目や、傍流、辺境出身者が多いと書かれている事が多い。例は、ヒトラー、ナポレオン、スターリン、織田信長、豊臣秀吉で、彼らはいずれも、先進地域のエリート階層ではない。先進地域のエリート階層が有する、保守的な意識、妙な特権意識、しがらみ(桎梏)、身内の論理は変革には不向きと思われる。者にはこういった事からすると、平井氏はソニーでは傍流であった事も、ソニーを再生できた要因ではないかと思った。なお、ここまで書いて、平井氏は、保守的な意識、妙な特権意識、しがらみ、身内の論理を排除するようにしていた事に気付いた。かなり難しいと思うが、自分も、保守的な意識、妙な特権意識、しがらみ、身内の論理を排除するようにしたい。
 本書でも出てきたように、平井氏は雑誌でかなり厳しい事を言われたようである。自分も随分前に、そういった記事を見たことがある。世界規模の企業を率いる事は、そういった意味でも大変で、自分には勤まりそうにないと思った。
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