研究留学ブログ~ボストン~

留学までの準備段階、ボストン留学の記録など

一週間の終わり

2006-11-12 09:06:21 | 研究留学
朝、少し遅れ気味にラボに到着。Henriは既に到着済み。昨日のことを少し話してから金曜朝のUnit Meetingへ。昨日のメンバーのうち、EugeneとAndrewが不在、他のメンバーは疲れた顔で登場しました。Andrewは今日は来ないという話(笑)。

Unit Meetingの後でも疲れが抜けませんでしたけど、黙々と実験をこなして良好な実験結果。今はγ-secretaseの4つの複合体とAPPを過剰発現させた細胞(from Dr. Selkoe)を使っていて、それらがきっちり過剰発現しているかどうかの確認作業中。こちらは一応終了して、実験に使えるということになりそうです。問題になるのは「そのγ-secretaseが機能しているか」という点。Westernを見る限りAPPを単独で発現させた場合と比べてそれほど機能が亢進しているようには見えないのです・・。Dooには「それほど劇的に変わるわけではないと思う」と前もって言われていましたけど、それにしても変化が認められません。ここはちょっと微妙なところ。

みんな今日は早めの帰宅。5時前にはすっかり静かになったラボですが、今日はLauraが来ることになっていたので少し長く待つことに。LauraはCoryの前の技官で、ラボ内の雑用をいろいろとやってくれていたそうです。以前に面接に行った際にも話をしましたし、あの当時のメンバーでまだ会っていなかったのがLauraだけでしたので、会って話しをしたいなぁと思っていました。英語のクラスがあるのであまり長くは待てず帰ろうとしたところ、ロビーで守衛さんと話をしているLauraと会えました。彼女は7年ラボにいたそうで、今はMerckに勤務中だそうです。本来なら僕が4月スタートという予定でしたから、Lauraとも一緒に過ごせるはずだったのにそれができなかったので心配してくれていました。

英語のクラスの前にちょっとBordersへ。買う本といえばClive Cusslerの本と相場が決まっているのですが(笑)、新作のSkeleton Coastを読み終えたのでこのシリーズ(Oregon files)第1作目に戻ってGolden Buddhaを購入。このOregon filesは日本では刊行されていないようで、洋書でしか読めないようです。Scred Stoneというのが2作目にあたるので、これも手に入れたいところです。

Bordersを出て英語のクラスへ。相変わらず早い時間についてしまう・・・。7時開始でいつも6時半に到着という「こいつ暇なのか?」と思われるぐらいの到着時刻。授業開始まで待っていると、3人の日本人学生がクラスに参加したいとGabbyと話をしていました。さすがにここまでクラスが進んでいるとこれからの参加は難しいということで、このクラスへの参加は見合わせるという話に。彼ら(男2、女1)は金沢大学からの交換留学生で、来年の5月までこっちに滞在するそうです。その間にTaffts Univ.の授業をいろいろ受けるそうなのですが、ESLのクラスが無いということで探しているそうです。

英語のクラスの後で2日連続で飲み。今日はアパートのメンバーでダウンタウンに繰り出そうということになっていたので、みんながどこにいるのか確認。結局みんなCentralにいるということで、Centralで降りて店を探しました。店に入ると店員さんが「誰か探しているんですか?あちらに何人かいらっしゃいますけど」と日本人(中国人?韓国人?)らしき集団がいるテーブルを教えてくれました。いえ、違います(笑)。テーブルを探し出して着席。この会を企画してくれたSigardとは既に面識がありましたし、隣に住むMartinとも喫煙仲間。他に4人の男性がいて、全員の名前が覚えきれません・・・。隣に座っていた男性はJamesで彼はアメリカ人。スポーツの話で、彼の好きなチームがドジャースということで斉藤隆投手の名前が挙がりました。向かいの席に座っていたのはMarkでイギリス人。日本に滞在したことがあるらしく、どこに住んでいたのか聞いたところ"Shibuya-ku, near Meguro"という話。えー、こういう言い方をする場合ほぼ確実にあの大学になるわけで、確認したところやっぱり駒場キャンパスへ留学していたそうです。

11時前には退散。金曜の夜ということで店も混雑していましたが、アパートのメンバーとも知り合えて良かったです。今回のはテストケースで、次からはダウンタウンに繰り出そうということになりました。面白かったのは、今回のメンバーで誰もテレビを持っていないということ(笑)。確かに家具つきで全てが揃っていて、テレビは自分で買いなさいということになると躊躇しますよね。テレビ無しで過ごす時間が長いほど、なくても困らないという感じになってそのうち購買意欲も失せるのでしょう。

さて「松坂問題(問題なのか?)」ですが、複数のサイトで松坂の入団先がRed Soxになりそうだという嬉しい報道。現在は大リーグ機構から入札金額が西武へ通知されただけで、チーム名は明らかにはなっていません。入札金額も明らかになっていないので、自分のチームが落札したできたかは大リーグの各チームも知りません。それでも情報はいろいろ飛び交うもので、4500万ドル(約53億円)で入札したRed Soxが交渉権を獲得するだろうというものを筆頭に、3000万ドル(約35億円)で落札したと報じられたRengersの入札金額が実は2200万ドル(約26億円)に過ぎなかったというもの、落札額が予想を大幅に下回る1300万ドル(約15億円)だったという報道まであります。ニューヨークのYankeesとMetsが獲得できなかったという報道もあります。岩村も入札締め切りで、Red Soxもそれに入札したという話がありますけど、まさかびっくりの日本人同時獲得でしょうか?岩村に関しては三塁手の補強が必要ということからパドレスが本命視されていましたけど、若手の三塁手をトレードで獲得したということからそれほど必要性がなくなったのも事実。ただ二塁も守れる岩村に興味があるそうですし、控えの三塁手としても使えるということで獲得に前向きであることは確かです。これでRed Soxが落札していたら驚きです。

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忙しい一日(Nov. 8)

2006-11-09 11:37:35 | 研究留学
今日は朝イチで、前日に仕掛けたWesternの1次抗体を2次抗体へ変える作業。これが終わったところで隔週水曜日のMINDセミナー。

今日は私の好きなCalorie Restriction(CR)の話題。簡単に言うと、カロリー控えめにすると長生きできますよという話です。電子版Natureの論文が流行の最先端でしょうか。Resveratrolという赤ワインに含まれる物質を摂取すると、Sir2というタンパク質が活性化されてCRと同様の効果が得られて長寿効果があることは以前から示唆されていましたけど、今回の実験ではハイカロリーの食餌とResveratrolを同時にマウスに与えるとハイカロリーによる悪い影響を帳消しにしてくれることを示しています。赤ワインに含まれると書きましたが、マウスに投与したのと同じ分量をヒトに当てはめると、赤ワインから摂取するためには一日に100杯飲まなければならないということだそうです。この研究の権威でもあるDr.SinclairはResveratrolをサプリメントとして販売するベンチャーの社長だとか。ラボの半数の人が摂取しているそうです。

今日の講師はDr.Sinclairでは無いですけど、日本にいる時にJounal Seminarで取り扱った内容だったので、話についていくのは簡単でした。Sir2が非常に重要な点は変わらないのですが、Sir2の下流にp53を介してインスリンシグナルへの経路が考えられるという話で、PI3Kを介したPI(4,5)P2→PI(3,4,5)P3というどこかでよく見た図がありました(笑)。今回の話ではSir2→p53→インスリンシグナルの制御だけでしたけど、逆にインスリンシグナルがSir2へ及ぼす影響もあるかもしれないなぁと想像してみたり。

セミナーが終わってすぐに細胞に薬剤処理。12時スタートでこれが6時間の処理なので、夕方6時まで待機です。薬剤処理が済んだらWesternの発色。1枚のmembraneで既に4回ぐらい使いまわしているんじゃないですか。それでも綺麗にバンドが出ます(と、もはやAPやPOで直にバンドを出す方法は忘れたことにします)。そういえばMLに流れた情報によるとMillipore社のRapid Immunodetection Systemが開発中らしいです。これは従来の一次抗体→洗浄→二次抗体→洗浄のステップでかかる時間を大幅に短縮してくれるありがたい(時間が短いことは良いことです)のか、ありがたくない(待ち時間の有効活用ができなくなります)のかという装置です。既に我々のUnit内で試運転をしているそうで、簡単な一次抗体(アクチンとか)なら問題なく検出できるそうです。日本のラボにも是非一台(笑)、いや一人一台(爆)。

一息ついて、メールチェックをしているとDoraからのメール。Dennis(Dr. Selkoe)からの転送メールで、内容はGrantの締め切りが1ヶ月早まったからという内容・・・

え、1月中に結果を出せとおっしゃる?

と一気にプレッシャーが押し寄せてきたのと同時に、今のようにのんびりしないで少なくとも日本にいた頃のペース(どの時期を取捨するか微妙ですけど・笑)ぐらいに持っていかなきゃと思った次第です。こっちのプレッシャーのかけ方って絶妙だなぁと思います。逆にこっちでまだ「ダメ出し」をくらったことが無いですし、DooやHenriが他のメンバーに「ダメ出し」をしているのを見たことがありません。「ダメ出し」が無いのが逆にプレッシャーと思うのは私だけ?その後も何件か論文を調べたり、想像を巡らせたりしているとあっというまに6時。黙々と細胞回収。日本にいた時は界面活性剤入り緩衝液を直接細胞にかけて回収、sonication、遠心で終了していましたけど、こっちはsonication無しでじっくり抽出する方法。つまりそれだけ待ち時間が長いということ。案の定、実験が終わる頃にはUnitのメンバーで残っているのは数人という状態でした。

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研究計画策定 (Nov. 7)

2006-11-08 12:30:00 | 研究留学
ブリーダーズC関連は後日更新します。クラシックの3連単を的中できたのが大きいです。

日曜に久々に出勤、ラボ内には・・・Shinがいました。土日は毎週出てきているのでしょうか。真面目だなぁと感心しきりです。細胞の継代とWesternの1次抗体を仕掛けて終了。ラボには1時間半ぐらいいたと思います。

月曜、みんなに「両親とはどうだった?」と聞かれていろいろ受け答え。前日のWesternを発色させて、membraneをきれいにして再度Western。培養室が混雑していたので、夜まで待って細胞の準備。Doraから「明日の昼から今後の実験について本格的に話し合いましょう」ということでいろいろと下準備。日本での仕事を復習しつつ、AlzheimerやPresenilinとリンクできる部分を模索。意外に細胞骨格系とγ-secretaseが結びついていない現状に物足りなさを感じつつ、逆に研究の余地がまだまだあるかなぁと想像をめぐらせていました。脂質に関してもコレステロール関連が研究室での一つのテーマになっていても、PhosphoinositideとPresenilinの関係もほとんど報告されていません。細胞内輸送とPhosphoinositideは密接に関連していると思われるので、Alzheimer病関連の分子の細胞内輸送と結びつけるのも面白いかもしれません。この日の夜はScientific Writingクラスで一緒の中国人と同じバスでした。彼はマカオから来ていて、マカオには一度行きたいんだよねぇといった話をしました。

火曜。朝のバスでこれまたScientific Writingクラスで一緒の別の中国人と隣の席に座って職場まで会話。英語がnativeでない者同士の会話ですので、あまり文法を気にせず気楽に話ができます。こちらの方は金沢大学で博士号を取得したということで、日本とも縁があります。ラボではまずDooと簡単に戦略会議(笑)。昼からDoraも交えて1時間いろいろと相談。といってもこちらから提案できる事項もそれほど無かったんですけど、大まかな方向性は決まりました。今度の締め切りは2月。現在進行中のGrantの更新のために予備実験をこなして、γ-secretaseの活性が変わる条件をいろいろ検討する方向に決まりました。何度か話題にのぼったのが「細胞接着に関していろいろ実験方法知ってるよね?」ということですが、決して専門家ではないですorz。細胞骨格系の実験をやる上でもちろん論文を読んだり、関連する実験をやりましたけど、どこまでそれが通用するか・・・。とにかくγ-secretaseの活性が細胞間接着、細胞-基質接着で劇的に変わる条件さえ決定できれば少なくとも1年間はクビにならないでしょうか?

今日のmetro紙のスポーツ欄では松坂投手のことが話題になっていました。

Red Sox chasing Matsuzaka

AMID REPORTS that posted Japanese starting pitcher Daisuke Matsuzaka has admitted the Yankees are his "hon-mei" -Japanese for favorite - Red Sox management continues to keep mum on all things Matsuzaka.(以下略)

ということでRed Sox首脳陣はノーコメント(keep mum)で深くは言及していないものの、ライバルYankeesも入札濃厚ということなので指をくわえて見てるだけでなくRed Soxも入札に参加すると思われます。最高価格で入札した球団が松坂(代理人のScott Boras氏)と交渉できるのですが、その期限が30日だけで、この期間内にまとまらなければ今シーズンのポスティングによる移籍が無くなって、来年まで先延ばしになります。良からぬ噂も流れています。法外な金額を入札しておいて交渉権だけ獲得して、悪名高い(?)Scott Boras氏の戦略を逆手にとって「そんな要求はのめない」と交渉期日まで粘って、ライバル球団への入団を阻止する作戦をとる球団があるのではないかという噂です。この心配に対して大リーグ機構は万が一そのような事態が生じた場合は2番目に高額入札した球団へ交渉権が移る可能性もある、と「特例」を認める発言も。まぁアメリカ国内ではそれほど評判が良くなかったWBCですけど、その舞台で3勝0敗、防御率1.38の先発型投手は大リーグでも通用するという評価なのでしょう。入札金額の予想は$1500万~$3000万(17.7億円~35.5億円)と考えられていて、5年総額$800万~$1500万(9.5億円~17.7億円)の契約になるだろうとのことです。ボストンに来てくれたら楽しみです。寿屋で奥さんに会えるかもしれないですし。でもYankeesになりそうだなぁ・・・。獲得に失敗したら返す刀で岩村を入札してくれることを期待します。

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今日が修羅場 (Oct. 31)

2006-11-01 10:27:39 | 研究留学
今日は前日から仕掛けたWesternの発色。前日に普通のプロトコールで試した抗体(期限切れ間近)でうまく行かなかったので、O/Nで1次抗体に晒して朝イチで染色。2次抗体も強めの希釈で、発色も強力な試薬で・・・orz・・・汚いメンブレンになりました。こういうときは"Why are you so messy !"とメンブレンに文句を言うみたいです(Mary談)。

さて何が修羅場かというと、明日がGrantの締め切り日。Dooは書いていないようでしたが、Henriの書いていたものをチェックしていました。時々データに関してDiscussionしたり、文章の校正などを2人でやってました。私は蚊帳の外でしたけど、Discussionを盗み聞き(?)したりしながらデスクで論文を読んでました。そういえば日本で研究費申請に関して「ポスドク同士」で議論していた記憶なんて全くないんですけど。知らないところでやってたんでしょうかねぇ。

最近はGrantの審査も厳しくなっているとのこと。通常3人のReviewerがついて、以前なら2人がGoサイン、1人が否定的な立場でも通ったそうですけど、最近は3人の評価が高く無いと難しいそうです。論理性も厳しく要求され、あくまでも「研究計画」のはずなんですけど「明日にでも論文投稿できます」という勢いの予備データ、考察が無いとダメだそうです。Grant申請ですからnegative dataも入れて良いはずなんですけど、それに関する釈明・考察も加わると膨大な量になるので、基本はpositive dataの集合、つまり論文(笑)。


日本の学振の審査過程がどうなってるか知りませんけど、やっぱり同様のことが要求されるのでしょうか。まぁ、海外学振に申請できる身分(学振経験無し)なんですけど、DC1もDC2も落ちたので縁が無いということで申請はしないと思います。最近の流行は博士2年の年度にDC2を申請することみたいですよ。卒業後すぐに就職先がみつからなくてもPDへの変更で1年は安泰ですから。いかんいかん、NIHのGrant申請にかこつけて学術振興会を批判してしまった。僻んでることがバレバレじゃないですか(笑)。

学振の調べによると「キャリアを重ねることで着実に、『常勤の研究職』に就いている。また、特別研究員終了後もポスドクフェローとして研究活動を継続している者が、研究実績を評価されるなどして、『常勤の研究職』となっていくことも推察される。このように、特別研究員制度は有効に機能しており、我が国の研究者の養成・確保に大きな役割を果たしている。」そうです。終了後0年(直後)、1年、4年、10年で調べたようですけど、10年経過した人が終了直後に今と同じ割合で常勤・PDF・その他に割り振られていたのかについては言及されていません。昨今の厳しい状況を考えると、今から10年後に果たして9割以上の人が「常勤の研究職」についているか疑問です。

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あっという間の一週間(Oct. 23~27)

2006-10-28 12:53:33 | 研究留学
更新を頻繁にする予定が、この一週間は全く更新せず・・・。
特に変化もなく、細胞を培養したり、Westernの準備をしたり、Westernをしたり。気が付いたら1日が終わってるんですよね。

今週は水曜にMINDセミナーがありました。Minjiが担当で、彼女はDr. Tanziのラボにいるので同じUnit Memberでもあります。話の内容はInsulin Degrading Enzyme(IDE)に関して。先日のNatureに構造解析の論文が掲載されていましたけど、基質としてInsulinを分解するだけでなくAβも分解するので糖尿病屋さんだけでなくAlzheimer屋さんにとっても興味深い分子の一つです。実際、AD患者のlymphomaから樹立した細胞の系ではIDEの活性が低下しているとのこと。lymphomaから樹立した系で神経機能と結びつけるのは遠いのですが、IDEの活性が低下しているのは事実として受け止めて良いでしょう。ただmRNA転写レベルでもタンパク発現レベルでも活性低下を説明できず(むしろ発現が共に上がっている場合もある)、アミノ酸配列の変化もないそうです。そう考えると、cofactorの存在を考えるのが常套手段かと思います。どうやってIDEを精製したか分かりませんけど、抗体で免沈して精製した場合だと結合タンパクも同時に落ちてくる可能性が高いので何らかの阻害効果を及ぼしているかもしれません。ただ、ScienceのHutchinson-Gilford病の論文でlamin Aのアミノ酸変異を起こさない点変異があってもスプライシングに変化を及ぼす例が報告されていて、一方の染色体がこの変異を持つとdominant negativeに作用して病気を引き起こす場合もあるので、その可能性もあるかもしれません。スプライシングに関しては特定のexonを挟む部位でRT-PCRをかけてチェックしていましたけど、念のためいくつかの範囲でやってみて配列を確認した方が良いのかな、と勝手に想像。

Alzheimer関連で今週のトピックをメモ。現在の研究テーマはAβを生み出すγ-secretaseであるPresenilinを対象にした研究です。簡単に言うと、生体内でAPPというタンパクがまずα-secretaseとβ-secretaseのどちらかで切断されて、その後γ-secretaseによって切断されます。α-secretaseというハサミで切られたAPPの破片は何も悪さをしません。β-secretaseで切断された破片をγ-secretaseが切断する時が問題で、40アミノ酸になるように切断してできてくるAβ40は問題がなく、42アミノ酸になるように切断されたAβ42が厄介な物質であると「考えられて」います。この切り分ける機構が未解明なうえ、本当にAβ42がアルツハイマー病の「原因」なのかも定かではないというのが現状です。それとはまったく別次元の問題で、Cellにこんな論文が掲載されました。γ-secretaseの核を成す(ハサミの刃にあたる)タンパクであるPresenilinがERにおけるカルシウムイオンの排出口として利用されているのではないかという考え方です。確かにPresenilinは9回膜貫通型と「考えられて」いて、制御機構の有無はともかくとして、膜の内外へ物質が透過する可能性も指摘されていました。これまではあくまでも「ハサミ」としての機能が注目されがちでしたが、これからはこの分野も重大な案件になりそうです。

参考:NatureのNews&Views, Nature NeuroscienceのNews&Views

今日はちょっと真面目に研究について書いてみました。今週末の予定は・・・両親が来週半ばに来るので部屋の掃除です。あ、家賃を払うのも最優先事項。銀行振り込みとかできれば便利なんですけど、こっちでは小切手支払いがメジャー。家賃支払い以外で小切手を切ったことは無いです。そういえば今週は「10月の給料」プラス「先月の源泉徴収還付」で予想外の収入。10月の給料は非課税になってました。非課税の恩恵があることを忘れていたら、2年後に税金がかかった瞬間のショックは甚大だと思います。それまでに無駄使いせず貯金にいそしみます(笑)

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一人だけのラボ

2006-10-17 10:29:23 | 研究留学
今朝は日本からの荷物をアパートに搬送してもらう予定でした。運送会社のボストン支店の担当者の人は「9:30~11:30にお伺いします」ということでしたので、普段どおりに起きて、ちょっと部屋の掃除をして待つことに。アメリカの運送事情に関して、あまり良い噂を聞かない(予定時刻があまり守られないとか)ものでしたから、昼前まで待つ可能性もあるかなぁと思っておりました。しかし9:40くらいに携帯電話が鳴って、「一方通行でうまくたどり着けないんですけど、あと5分くらいで到着できると思います」とのこと。さすが日系企業。時間厳守できっちり届きました。

赤字で「すぐ開ける」と書いてあった箱を開けてみると、普通に服が入った箱でした。よく考えると東京から実家への引越しの際に使った箱を使いまわしたので、東京→実家の際は「すぐ開ける」箱だったのですが、今回はそういったものは入っていませんでした。むしろ半袖のポロシャツとかあと半年は不要ですし。

いろいろお宝が入っているのですが、開けるのを我慢してラボへ直行。ラボメンバーは土曜からアトランタに学会に行っているので、ラボでは私一人だけです。隣のラボもEugeneとインド人の女性だけ。AndrewとPIの方がいないところを見ると、学会に行ったようです。Unit全体としてもいつもの半分くらいの活気でした。実験は昨日に続いて細胞の世話。今日はTransfenction用に細胞を播き直す作業。細胞実験の後は、以前に作成したタンパク濃度測定用ワークシートの改良。通常、一つのサンプルに対して複数回測定を行い、その平均値を取るのが望ましいのですが、今回はサンプルが非常に多くなったので、平均を取らないVer.を作成しました。

今回もまた細胞の数が少なかったので、明日のTransfectionは延期する予定です。明後日Transfection,木曜に細胞回収といきたいと思います。

家に帰って荷物の開封。服と本がメインの荷物で、日本からの実験ノートも入れていました。しかしこのノート、使い道があまり無さそう・・・。有益な情報は何も書いていない気がします。ファイルケースはこっちとは仕様が違いますけど、日本製のものが便利だと思うことも多いので、これは重宝しそうです。こっちは三つ穴のファイルがメインで、ルーズリーフも主に三つ穴。ノートも三つ穴が開いていて、切り取ると三つ穴バインダーに収めることができるようになっています。日本の26穴はこっちで見かけたことがありません。

ブログもちょっとだけデザインを変更しました。以前は灰色の本文でしたけど、白地に灰色ってどうよ?と思って黒に統一しました。元々のテンプレで文字色が灰色の設定になっているのもおかしいし、背景を他のテンプレートにしたら極端に狭くなったり、英単語が途中で切れて改行されるスタイルになったり、使い勝手が悪いブログかもしれません。

細胞、細胞、細胞・・・・ (Oct. 15)

2006-10-16 08:10:45 | 研究留学
標題のように、今日は日曜日ですが細胞の世話のためにラボへ。まぁ、きれいさっぱり誰もいません。落ち着いて一人で培養室で細胞をいじってました。

途中でいつものインド人女性が登場。こっちが彼女を「休日もラボに出てくるなんて、仕事熱心な人だなぁ」と思っているのと同様に、きっと向こうもそう思ってくれてるに違いない、いやそう信じたい(笑)。

帰りはPorterまで移動してShaw'sで買い物。そろそろ自炊をスタートさせようと思って、簡単な食材から購入しました。本当に自炊をするためには包丁や鍋、フライパンを買わないといけないんですけど。ちなみに鍋やフライパンって英語で何て言うのでしょう?どちらもpanですけど、
鍋:Saucepan
フライパン:Frypan or Sautépan

で、フライパンよりソテーパンの方が一般的かと思います。結局どっちも買いませんでした。

家ではちょっとプレゼン資料の作成。公開するあてがあるわけでも無いですけど、自分の勉強もかねてNeuron誌のA Hundreds Years of Alzheimer's Disease Researchを参考にアルツハイマー病の背景などを振り返ってました。今年が100周年というのは知りませんでした。何でも100年前にAlzheimerさんが初めてこの症例を報告したそうです。その4年後に初めてAlzheimer's Disease(いや、ドイツ語の本なのでdie Alzheimerkrankheitだと思います)という名前が登場したそうです。

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細胞、細胞・・・ (Oct. 13)

2006-10-14 12:09:45 | 研究留学
来週のNeuroscience Meetingに向けてみんな殺気立っています。というのは冗談で、いたって問題無し。発表はポスドク2人だけで、他のラボメンバーは付き添いというか社会見学気分。HenriもDooも慣れたもので、プレゼンは心配いらないようです。日本のラボでは発表する人しか学会に参加しないというのがほとんどではないでしょうか。ご褒美のような海外遠征も、何かしら発表をするという形を取っています。おそらくそうしないと旅費の申請ができないからでしょうけど、今回のNeuroscience MeetingにMary, Camilla, Coryが行くのは全く発表とは関係なく、良い経験をさせるための出張のようです。私は来て日が浅いので、自費参加なら一緒に来ても構わないという話でしたが、飛行機・ホテル・学会参加費を全て自費で賄うのは不可能なのでお留守番をすることにしました。日本の場合も柔軟な対応で、発表なしでも若い学生に国際学会で世界の最先端の研究を肌で感じる機会を設けても良いのではないでしょうか。そういった点で、東大医科研の若手研究者発表会で優秀者に海外学会渡航費用を援助しているのは非常に良い制度かと思います。

さて、留守役を仰せつかった私は昨日の問題点を克服すべく再度実験を計画。そのために必要な細胞、コンストラクトをもらって、準備万端に整えておきました。あとは細胞が増えるのを待つのみ・・・。あ、日曜に出勤?月曜にtransfectionして、火曜に薬剤処理と細胞回収。水曜に電気泳動とTransfer。これで全てOKでしょう。細胞の種類が増える、特にstable cloneが増えると薬剤耐性マーカーが増大するのでミスの原因です。日本ではせいぜいG418, hygromycin, puromycinが限度。こっちではさらにzeocin, とbrasticidinまで使っているので大変・・・。後々に使う予定の細胞は4つの選択マーカー含有培地。間違って他の細胞に使ったら全滅してしまいます。

金曜の夜は例によってScientific Writingのコース。出席者が増えたり減ったりするコースで、最初に来て$65払ってそのまま顔を見てない人もいますし、途中から出席する人もいて、総勢18人ぐらいの大所帯のはずなんですけどいまだかつて全員が顔を揃えたためしがありません。おそらく他の全出席している人も同じことを思っているはず。全部の講義に出席しているのは私と日本人の方、それから3人の中国人。なんとかDrop-outしないように頑張ります。今日の講義内容は論文セクションがAbstractに関して、文法セクションはAdjective(形容詞), Adverb(副詞)に関して。

Abstractの重要性は言うまでもありません。生命科学系の論文はPubMedでAbstractが閲覧可能になっており、キーワード検索をかけてヒットした論文の中からAbstractをざっと見て、論文へのリンクをたどるか判断する人がほとんどだと思います。その前にhigh-impact journalかjunk journalかでabstractを読むか読まないかも判断しますけど・・・。「junk=価値が無い」というわけでは決してないのですが、狭い専門分野の雑誌になると図書館が契約していないために無料閲覧不可の場合が多いのです。昔はそんな雑誌のためにいろんな学部の図書館を彷徨いました。

改めて自分の書いたAbstractを読むと改善すべき点が多くみつかります。自分の関与が多い文章ほど欠点が多々(笑)。一番最初の論文のAbstractは大先生に書いていただいたものなので、adjectiveとかadverbが程よいレベルで効果的に使われております。それに比べて後の2つはpoorなこと・・・。こればっかりは英文校正でも直せないことなので自分自身のblush up brush upが必要。

パスカルの残した名言(迷言?)
I am writing a longer letter than usual, because there is not enough time to write a short one.
つまり短い文章を書くには時間がかかるということ。この日記を見てもお分かりでしょう?いかに「考えない」で書いているか(自嘲)


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データ解析 (Oct. 12)

2006-10-14 11:06:21 | 研究留学
今日はWesternの結果をDooとdiscussion。発現効率には問題が無いということは分かったのですが、いろいろと問題も抱えていることが判明。まず、今回の実験ではAPPをβ-clevageするBACEを一過的に発現させたのですが、APPの切断効率から考えるとBACEが機能していない可能性がありました。BACEの働きを期待するためには一過的な発現ではなく恒常的に発現している細胞が適しているだろうとういことで、BACEのstable cellを使って逆の実験をしてみようということになりました。さらに、今回の実験ではCHO(Chinese Hamster Ovary)細胞を使ったのですが、対象とするタンパクは本来CHO細胞に発現していないので、神経系の細胞を使って実験を進めることになりました。これで来週も忙しく過ごせそうです。

今日はフィンランドからAnnakaisaがラボを訪ねてきました。来週のNeuroscience Meetingに参加するのでちょっとBostonに寄ったという形です。そういえば先週はBryceも顔を見せてくれました。Doraは忙しいけど、こういうときはきちんとみんなと一緒に過ごしてくれます。たまにラボの女性陣を囲んで、男抜きの話をしているようで、時間があるときは常にラボの人を気遣ってくれます。Henriの奥さんも赤ちゃんと一緒に訪問。手術したという話を聞いたときは心配しましたが、赤ちゃんも元気そうで何よりです。

夜は実家から電話がかかってきました。簡単に来月のボストン観光の打ち合わせ。親の嗜好は分かっているので、前もってそれに沿った提案をしていたものの確認。HarvardとMITのCOOPは必須というのも分かっていましたし、ブランド品を買い漁るという町でもないので、地元の雰囲気を味わう感じにしたいと思います。

こうして考えるとボストンって微妙な街で、日本人にとっては魅力の薄い街ではないでしょうか。独立戦争の発端となった街ですから、アメリカ人にとっては小さい頃に習った歴史を肌で感じることのできる街でしょう。しかしながら日本人の多くはアメリカの歴史を知るわけでもなく、サミュエル・アダムスとかポール・リビアとかは全く馴染みの無い名前でしょう。日本人に例えるなら坂本竜馬や西郷隆盛といった明治維新に関わったような人でしょうか。アメリカ史を専攻した人にとっては一度は訪れたい場所だと思いますけど、12時間超のフライトに耐えてまで来るべき場所なんでしょうか・・・。同じ時間我慢するなら、ニューヨークで充分かと思います。直行便でニューヨークまで行けますし。ワシントンDCも直行便が飛んでいると思いますので、東海岸ならニューヨーク、ワシントン。体力に自信があればフィラデルフィア、ボストンまででしょう。


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MINDセミナー (Oct. 11)

2006-10-13 09:13:12 | 研究留学
前回のMINDセミナーは"How to give a good talk"でしたけど、今回から通常のセミナー形式に戻りました。今日の演者はDr. Krainc。114番ビルで研究している人で、最近のCellに論文が掲載された人ですけど、今回はまさにその話。PGC-1αとHuntington病原因遺伝子産物Huntingtin(こっちではハンチントンと発音するようです)との関連を調べた仕事です。たまたまかもしれないですけど、Cellに論文が載った人がタイムリーにセミナーを開く、これもアメリカにいればこその経験でしょう。

今日は3回目のWestern Blot。同じメンブレンで3回もWesternができるなんてECLシステム万歳!今日もバンドがくっきり出ましたので、これで一連の仕事はひと段落。Dooが来週からのNeuroscience Meetingのプレゼン作りでお休みだったので、discussionは明日以降に持ち越し。Henriもようやく赤ちゃんの体調が安定したので、ラボに顔を出すようになりました。Neuroscience Meeting明けにはポスドク2人+半人前ポスドク(私)の通常体制に戻るでしょう。

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