ミズカタヒデヤの「外部脳」

Hideya Mizukata's "OUTBRAIN"

告白/中島哲也/6点

2013年09月29日 | 映画
娘を亡くした中学教師が受け持ちのクラスのホームルームで、この中に犯人がいる、と告発する恐ろしい話です。
原作の小説は傑作でした。犯人もさることながら、被害者の教師、周りの関係者達が、恐ろしい事件に遭遇して、少しずつ狂っていくんですね。単に勧善懲悪なだけじゃない、人が人を殺すとき、憎む時、そこには何らかの狂気が取り巻く、そんな禍々しさがよく表現されてました。
それを映画にするのは大変だろうな、と思っていたのですが、意外とうまくこなしてました。特に、オープニングのホームルームのシーンは圧巻。中学生という、最も悪意を明確に表す世代が、集団で教師を無視する、有る意味最も残酷な場面を、短いカットの連続で一気に描き切ってました。

女と男のいる舗道/ゴダール/4点

2013年09月29日 | 映画
自由に生きる主人公が悲惨な最期を遂げるのですが、何故か悲惨な感じがしないんです。
事象だけかいつまむと、女優に憧れて娼婦に身をやつし、ヤクザのトラブルに巻き込まれて命を落とす、って相当可哀想なんです。
でも、この映画では、そのプロセス、日常を、とにかく淡々と描写するんですね。そうすると、何故だか普通なんです。
結局、人生って、日常の積み重ねであり、分解してみたら、実に平凡、というか、ワタクシの人生とそんなに変わらないんですね。
主人公はここではないどこかに憧れて、色々やったんでしょうが、結局、日常はとこまで行っても日常。人生は、詰まらない。仮に女優になったとしても、やっぱり普通の生活が待ってるんでしょう。
そんなことをつらつら思いました。

ブラザー/北野武/5点

2013年07月03日 | 映画
子供のケンカをそのまま大きくしたようなヤクザの抗争。仲間を愛し、気に入らない敵を倒す。それだけなのに、気づいたらどんどんと大きくなり、やがてもっと強大な敵に倒される。結末は予想が付くのに、ただ破滅に向かって流されるだけ。そこに理念も打算もない。ただ、場面場面で自分のやりたいことへの忠実があるだけ。ある意味、実に正しい生き方だと思います。
でも、ワタクシはこんな勝手な生き方は認められない。仲間を愛するなら、もっとどうすれば皆が生き残れるか考えて行動すべき。暴力の世界だからこそ、厳格なルールがあるはず。だから、あんまり評価できません。
でも、途中のヤクザの自殺のシーンは凄い!

ジョーズ/スピルバーグ/9点

2013年04月20日 | 映画
久しぶりに観ました。筋をかなり忘れてました。幸せな時間を過ごせました。この映画の素晴らしさは幾らでも語れるのでしょうが、ワタクシは改めて、その丁寧な編集に感銘を受けました。
ビーチで監視する保安員の主人公が、不安げに海水浴客を観てるシーン。浮き輪に乗った若い女性、浜辺の小さな子供、沖にどんどん進む男性、足取りの覚束ない高齢者。誰もがサメの餌食になんような気がしてくる。ああ、あれは、サメの背ビレか?いや、見間違いか。恐ろしい。。。てな描写のために、実に細かくカットを刻んでるんですね。
ジョーズの怖さは中々姿を表さない怖さということは以前から理解してましたが、怖がってる人の心理状態を忠実に描写した映像のつなぎ方あってこそ、なんだな、ということがわかりました。

ミッション・インポッシブル/ゴースト・プロトコル/ブラッド・バード/8点

2013年04月20日 | 映画
派手なアクションの目立った前2作と違い、今回はスパイらしい騙し合いとサスペンスがてんこ盛りで、楽しめました。やっぱりスパイ大作戦はこうで なくっちゃ!という感じです。
もっと効率的な方法がいくらでもあるはずなのに、スパイのギミックが面白いからやってしまう作戦の数々。特にドバイ のホテルでの「二重に犯人になりすます作戦」は最高でした。
後、チームの友情や、イーサンの夫婦愛なんかが、うまくどんでん返し的に挿入されてい るのが良いです。こういう本筋と直接関係ないところに、しっかりした人間ドラマが挿入されることで、彼らの活躍に血が通うから、話が俄然面白くな るんですね。

人生の特等席/ロレンツ/6点

2013年03月29日 | 映画
イーストウッド主演、で、愛弟子の第一回監督作品だそうです。私はイーストウッド監督の映画は水島新司の浪花節的漫画にそっくりだ思うのですが、愛弟子の本作もまた、水島新司の世界がバリバリに展開されていて、泣かせます。
主人公はプロ野球のスカウトなんですが、もうとっくに引退していてもおかしくないロートル。眼を悪くして引退のピンチに、疎遠になっていたバリバリのキャリアウーマンの娘が助けることで、蟠りが溶けて、家族の絆復活、スカウトの仕事も何とかこなせてめでたしめでたし。そういう吉本新喜劇みたいなベタベタなでも、ハリウッドが本気で作ると、そこそこの映画になるから不思議です。
結薄っぺらい社会描写、御都合主義的展開など、幾ら何でも鼻につく場面が眼について、さすがに笑ってしまうのですが、まあいいのかなあ。

ライフ・オブ・パイ/アン・リー/7点

2013年03月28日 | 映画
太平洋を虎と漂流した少年の話です。インドで家族で動物園を経営していた少年が、動物園ごとカナダに引っ越すことになり、貨物船で動物たちと向かう途中、嵐に遭い、偶々虎と二人きりでボートで漂流することになるんです。
当初は只管逃げ回り、その後一定の距離を置きながら共存し、だんだん慣れてくると食事を共にし、やがて仲間として孤独を癒しあうんです。やがて奇跡的にメキシコ海岸に到達すると、虎は森に還り、少年は二度と会えなかった、という話なんです。
面白いのは、この話が取材者に向かって一人称で語られたお話だ、ということ。主人公は、かつての奇跡的体験を「事実だ」と語り掛ける。虎と主人公がだんだんと心を通わせるプロセスは実に丁寧に描かれ、なるほどこういうこともあるのかな、と思わせる。でも、やはり、現実には、とてもありそうにない話ですよね。
ひょっとしたら、虎はいないのかも知れない。虎は、主人公自身が孤独を癒すために作り出した妄想かも知れない。でも、主人公にとって、虎は間違いなく存在したんです。現実か妄想かは、主人公にとっては、どちらでもいい。その体験にこそ価値がある。
そういう含みを持たせて、映画はサラリと終わるんです。現実よりも大事なことが人の心の中には確かにある。そう思わせる作品でした。
CGが大変にリアルでいて美しく、幻想と現実の狭間の物語を見事に演出していました。

アルゴ/ベン・アフレック/8点

2013年03月24日 | 映画
いい映画でした。イラン革命の最中、カナダ大使館に避難した大使館職員を救出する実話だそうです。最近流行りの米国の暗部を告発する映画かと思いきや、意外にスリリングなエンターテイメントでした。
大使館職員を救出するために、彼らを架空のカナダSF映画、アルゴの制作スタッフに仕立て上げ、出国審査を騙そうとするんです。シリアスなシチュエーションそぐわないハチャメチャな作戦なんですが、革命後のイランにのこのこやってきておかしくないのは映画関係者くらい、ていうのが妙に説得力があって面白いんです。
イランと米国の対立に至った経緯を考えると、イラン国民を暴徒としてしか描かないこの映画はフェアじゃないなあ、と思いますが、その割り切りが、純粋に脱出劇としてのクオリティを高めていることも事実。
映画の面白さは、結局のところ、どう話をシンプルに見せるか、ということが大きいんでしょうね。

ミッション・インポッシブル/ブライアン・デ・パルマ/8点

2013年03月21日 | 映画
世間では地味だとかストーリーが分かり難いだとか言われてるみたいですが、ワタクシはミッション・インポッシブルはこの第一作が一番好きです。
まず、謎解きの楽しさがしっかりしてること。やっぱり、スパイ大作戦って、スパイの話なんだから、こういう化かし合いがないと面白くないと思うんです。
アクションもいいです。何と言っても、有名な白一色の部屋の天井吊り下げのパソコン操作シーン。最後にナイフがデスクに突き刺さる描写に痺れました。
俳優さんたちが実に楽しそうなのもいいです。ジャン・レノとか、いつもと違うずる賢い役回りを生き生きと演じてました。皆きっと、スパイ大作戦が好きなんだろうな。

テルマエ・ロマエ/武内英樹/4点

2013年03月19日 | 映画
漫画は傑作だと思うし、映画は漫画に素晴らしく忠実でした。古代ローマの舞台装置も見事な完成度だし、阿部寛の演技もコミカルで良かった。
でも、映画としてはあんまりでした。いくら何でも、漫画のエピソードを順番に並べただけでは、ドラマに迫力や説得力がなさ過ぎるのでしょう。自宅で斜めに観る分には面白いのですが。