ミズカタヒデヤの「外部脳」

Hideya Mizukata's "OUTBRAIN"

hhstyle.com / casa/安藤忠雄/4点

2005年07月23日 | 建築
アルマーニブランドの家具店、アルマーニ・カーサの日本第一号店です。だのに何故か、輸入家具のhhstyleの名前が付いていて、しかも安藤忠雄さんの設計。マスコミが企画したような「如何にも」さが多少鼻につきますが、ワタクシ、アルマーニ・カーサのお店は大好きですので、良しとしましょう。(後で気づいたのですが、このタテモノには他のテナントも一つだけ入っているみたいです)

アルマーニ・カーサは無印をグレードアップして色気をつけたような家具を扱っています。当然にシーン展示なのですが、家具の大きさに比べて部屋がやたらに小さく、どうも貧相に見えてしまうのが大問題。日本の住宅事情にアルマーニ氏が配慮したのかどうかは定かではないのですが、どうにも店のグレードに内部空間のボリュームが合ってない感じがしました。

外観の黒い鉄板は確かにアルマーニっぽくてカッコいいです。全然安藤さんっぽくありません。それでいて、外からほとんど中の商品が見えないところとか、内部が細かく仕切られて他への転用を許さないところとか、凡そ商業施設のセオリーを度外視したところなんかはまさに安藤節。隣の妹島氏の本店の汎用性とは全く相反する方向性です。ま、お店を経営する方も客も安藤さんとわかっていて来られるのだから問題ないのでしょうけど。。。撤退したら解体されるのだろうな。。。

見学中、麗しい店員さんが声を掛けてくださいました。ワタクシのような下賎の者、放って置いて欲しいのですが、食卓の真ん中に載せる長い布(ランナーというらしい)を探しているとか何とかやんわりと金のなさをアピールしたのですが、そしたら2万円もする布切れを持って来られました。即退散。。。

hhstyle.com / casa/安藤忠雄/4点
渋谷区神宮前6-14-5/03-3400-8821
http://www.hhstyle.com/cgi-bin/omc?port=33311&sid=U1122128482T87LOOB6M&req=IPRODUCT&code=shop_casa

武蔵野/とんかつ/上野/4点

2005年07月23日 | 飲食店
とんかつ。それは定食屋さんの定番メニュー。酒が弱く、蕎麦アレルギーのワタクシにとって、飲まなくても居心地の悪くない店として、鰻屋さんと同じくらい貴重なジャンルのお店であります。昔からよくお世話になってます。学生時代は味もわからずソースぶっかけて喰ってましたが、おっさんになるといい加減な奴は胃凭れしちゃうので、味を吟味するようになってきました。脂身が少なく、それでいてジューシー、衣は限りなくさくっと揚がって、薄塩と辛子であっさりいただくのが理想です。

さて、他に多くの特長があるので目立ちませんが、上野は数多くのおいしいとんかつやさんで有名なんだそうです。御徒町の駅を降り、色町を横目に双葉なる著名店を目指したのですが、閉まってました。まだ8時なのに。。。呆然としていたら、隣に瀟洒なカウンターのこれまたとんかつ屋が。。。うーん、著名店の隣って、基本的に小判鮫なんだろうな、と思いつつ、路頭に迷うのは嫌なので、上ロース1800円也を頂きました。

うーん。揚がり具合なんかはうまいと思うのですが、肉の脂身が多いなあ。ジューシーさを脂身が受け持っている感じ。不味くはないのですが、ヒトを連れて行こうとは思わない。微妙なところですね。ま、店内は凄くいい感じだったので、それなりに落ち着きました。1000円だったら良かったのに。。。東京のヒトは皆迷わず上頼んでいた。。。

武蔵野/とんかつ/上野/4点
台東区上野2-8-1/03-3835-2779/夜2000円
※看板の店の名前、読めません!


マンハッタン・ラブストーリー/TBS/7点

2005年07月21日 | 映画
TBSの連続テレビドラマ、プロデュースが磯山晶で脚本が宮藤官九郎、池袋ウエストゲートパークとかを撮ったヒトたちですね。

コメディと呼ばれる作品は数あれど、恋愛自体をいい加減で嘘臭いなものと認識し、笑いの対象としたこの作品はかなり珍しいと思います。ほとんどのラブコメディは恋愛自体はあくまで崇高なものと捉え、それに苦悩する登場人物達を笑いの対象にするものですから。

多分、作り手達には、トレンディ・ドラマが必ずといっていいほど展開させる「恋愛相関図」に対するアンチテーゼの意識があったのでしょう。恋愛感情ほど(良い意味で)いい加減なものはない、と僕も確かに思います。もちろん、恋愛している当人にはそんなこと思いも付かない、愛は永遠なのですけど。そこをこの作品は笑い飛ばしている。それでいて、それぞれのエピソードではクサイ恋愛ドラマをきっちりと描いてみせ、ホロリとさせるのですから、脚本家の達者ぶりが伺えます。

この磯山&宮藤はドラマにあるまじき実験的な演出を得意とされてまして、今回も冴え渡ってました。抱擁のシーンでハートマークを飛び回らせる漫画的演出や、後の韓流ドラマの隆盛を予見するようなベタな劇中劇など。中でも秀逸だったのが、全編に渡り、ドラマが喫茶店のマスターの一人称で語られていること。客同士の恋愛の観察者という立場なんですね。視聴者は彼の眼を通じて恋愛相関ドラマを見、時にはその進行に口を出す。最後には、恋愛相関に参加してしまう。そんな擬似的な視聴者参加の愉しみを味わえます。

惜しむらくは、どうして10回も続けたのか、ということ。途中どう考えても間延びした回があったように思います。後、宮藤勘九郎さんはすぐにファンサービス的なエピソードを挿入する。まだドラマを終えてもいないのに、こういうことがあったら面白いな、という場面を本筋と全く関係なくやってしまう。これは観ていて気恥ずかしかったなあ。

マンハッタン・ラブストーリー/TBS/7点

六番目の小夜子/恩田陸/7点

2005年07月21日 | 小説
所謂「学校の怪談」をミステリと捉え、解き明かしていくプロセスをきちっと描きつつ、怪談が如何にして生まれ、流布するようになるかを鮮やかに説明してくれる作品です。娯楽作品であると同時に、実に学術的な作品ではないかと。恩田陸先生、初めて読みましたがこりゃ只者ではありませんな。

かつての地域社会は、閉鎖的でありながらヒトが子孫へどんどん入れ替わってました。だから、ほんのちょっとした切欠で不思議な事件が風聞伝説の類に昇華し、それに対応する行事が講じられていたのです。高齢化とマスコミュニケーションの発達した現代日本において、そうしたメカニズムは消滅してきました。しかし、一箇所だけ消滅していないところがある。それが学校であると。

確かに、閉鎖的でヒトのどんどん入れ替わる学校からは、数多の風聞伝説が生じています。学校を失われた地域社会の代替と捉え、かつてのムラのような得体の知れない生き物として捉え、ミステリを展開していく。こういう視点で意識的に学校を捉えたことは画期だと思います。

特に作品中盤での舞台劇中劇「六番目の小夜子」は本当に怖い。読者の誰もが体験したことのある馴染み深い「呼びかけ」を使って、ここまで恐ろしいシーンを展開できるとは。先を読む手が震えました。本当に、怖かった。

本作では、学校の得体の知れなさを描くことを重視して、ミステリとしての謎の解明を匂わせるに留めた点も評価したいところです。これで答えがどーんと出ていたら、数多の先達の模倣に見えたでしょうから。

六番目の小夜子/恩田陸/7点
新潮文庫/540円

スター・ウォーズ・エピソード3/G.ルーカス/6点

2005年07月18日 | 映画
「主人公が悪に変貌していくプロセス」という、いかにも後味の悪そうな話をどうやって子供も楽しめるエンターテインメントに仕上げるのか心配でしたが、そうした足枷が逆にストーリーに深みを与え、大人もちゃんと楽しめる作品になってました。新シリーズの中では圧倒的に面白いと思います。

心優しいけどちょっと勝気な主人公が、愛する妻の命を救うために、仲間を裏切ってしまう。彼の行為を咎めることは中々できないと思います。そう、悪は善に対峙する形で生まれるのではなく、善の中に最初から存在していて、ちょっとしたきっかけで噴出してしまうんですよね。

何と言っても今回の作品は善と悪の対立がはっきりしていて、悪が3作品を経てやっとこさ形になったのが話を面白くしていると思います。正直、ジェダイのヒトたちって魅力ないっすよね。いいヒトな政治家って、本当に詰まらない。アナキンと皇帝がジェダイの評議員達をばったばったとなぎ倒すシーンに快哉を上げてしまいました。

今回は旧シリーズに話を繋げるために、色んな「説明」がなされてます。共和国が帝国に取って代わる過程や、シスによるジェダイの追放、オビワンとダースベイダーの因縁、ダース・ベイダーがマスクを手放せない理由など。ファンでもなければ、こういうのに一々感心したりしないと思ってましたが、いやー、意外に結構、楽しいですね。ワタクシも、スターウォーズのファンだったということなのでしょうか。

スター・ウォーズ・エピソード3/G.ルーカス/6点

パブ・カーディナル/銀座/6点

2005年07月13日 | 飲食店
下戸だけど酒の席が好き、というワタクシにとって、酒以外のメニューも楽しめる歓楽街のお店、というのはかなり重要です。特に銀座のような生き馬の目を抜くような土地では、ただライトな感じに見える店に入っただけで、女の子が出てきて、ハイ万札消えた!みたいなことにもなりかねません。

そんなワタクシの強い味方を銀座のど真ん中、ソニービルの1階、外堀通り沿いに発見しました。所謂パブです。パブとはつまり、イギリス風のカフェ兼居酒屋。かの地の労働者様方は、皆仕事帰りに屯し、思い思いの過ごし方で仕事の垢を捨てて家庭に急ぐと聞きます。酒を飲んでも飲まなくても良い、けど気分転換はしっかりできる。日本の立飲み屋をもうちょっとお洒落にした感じでしょうか。

本日は、銀座2軒目をさ迷い歩いた末に、空いている席を発見して滑り込みました。すごく良い立地なのに、前の人通りが少なく、夜には意外な隠れ家になるみたい。落ち着いたエンジ色の絨毯や椅子に包まれたトラディショナルな店内は夜の銀座にもこんなにゆったりできるところがあったのか!と、驚きでした。フィッシュ&チップスみたいないかにもなメニューがあるかと思えば、ピザやスパゲティがかなりの本格派。これは使えます。

パブ・カーディナル/銀座/6点
東京都中央区銀座5-3-1ソニービル1階/03-3573-0011
http://www.miyoshi-grp.com

ぼっけえ、きょうてえ/岩井志麻子/6点

2005年07月10日 | 小説
表題は岡山弁で「とても、怖い」の意味だそうです。

ワタクシ、いろいろ考えた挙句なのですが、結局のところ、オカルトはおろか神仏まで非科学的っぽいものは全く心が受け付けてくれません。いえ、別にそういう類を軽蔑しているわけではなくって、無為に信じられるヒト達が羨ましいくらい。きっと生きるのが楽だろうな、って。従って、妖怪譚や怪談の類は、どんなにうまく描かれていようとも、嘘か錯覚に決まってんだろ、ってなわけで、怖くも何ともありません。

そんなワタクシでも、怖いタイプの怪談があります。それは、化け物は幻と認めた上で、その化け物が見えてしまう異様な状況にいる人々が、次第にその異様な状況に慣れ、受け入れ、肯定していく。で、彼らを取り巻くオバケのいない現実自身が、オバケ以上に異様な状況を呈するタイプの奴です。結局、怖いのはヒトというわけで。

岩井志麻子さんの作品は基本的にオバケを見たヒト達の異様を描く構造で怖がらせてくれます。舞台は貧困と理不尽が渦巻く明治黎明期の岡山北部。世相がヒトの生活を極限に追い込み、意識朦朧とする中で化け物を見てしまう。ヒトはそうした状況におびえつつも、自分の境遇の方が化け物よりよほど恐ろしい状況にあり、次第に怪異にも慣れてしまう。で、怪異と慣れ親しんだ人間が、周りの普通のヒトから見たら、化け物のように見えてしまう。化け物の生まれる構造が実に説得力を持って描かれています。

表題作の化け物っぽい水商売のお姉ちゃんの独白は、仕掛けのあからさまさが多少鼻にはつきますが、それでも、めっちゃ、こっわいわー。

ぼっけえ、きょうてえ/岩井志麻子/6点
角川ホラー文庫/480円

若きウェルテルの悩み/ゲーテ/6点

2005年07月07日 | 小説
新作も旧作も等しく読んでます。

道ならぬ恋に苦しんで自殺してしまうという、情けない男の話です。恐らく発表当時新しい概念であったであろう、「肉欲の一切介在しない恋愛感情」を丹念に追いかけたルポのような作品でしょうか。キリスト教が支配したヨーロッパで次第に自由な市民社会が台頭しだした時期に、不倫純愛、というきっついテーマがバチっと嵌ったのでしょうか。韓国ドラマが日本でおばさんに流行るメカニズムと良く似ている、といったら失礼かな。。。

道ならぬ恋だが、自分で止められず、相手を苦しめてしまう。相手が好きなのに、迷惑ばかりかけてしまう。解決するには、自分が死ぬしかない、というわけです。それにしても、悪いのはヒロインのロッテさんでしょう。応えられないくせに、いい顔をしたら駄目ですよね。彼女の情は誰にとっても不幸だと思います。あれじゃあアルベルトが可哀想じゃないかあああああ。

若きウェルテルの悩み/ゲーテ/6点
岩波文庫/483円

ゲームの名は誘拐/東野圭吾/6点

2005年07月02日 | 小説
もう何か、凄いわ。東野先生。隙がなさ過ぎて、怖いくらい。ある程度予想がついていてもやっぱり驚かせる絶妙な謎解き、ワル独特の存在感あふれる魅力的なキャラクター、そこに適度に危険で適度に心地よいロマンスが挿入され、ヒットの要素が完全に押さえられている。映画化もそりゃされるわ、という感じ。

犯人と被害者が共謀して、身代金を山分けしようという話です。犯人は被害者の父親との対決をゲームになぞらえ、知能勝負に挑むわけですが、実は戦っている相手は彼じゃなかった、というどんでん返し。見事です。ある程度は想像がついていたけど、動機までははっきりわからなかった。で、わかってみると、それしかない、という印象。良いプロットの見本ですね。

けど、ワタクシ愛読者だからこそ言わせていただきたいのですが、この作品なんか、達者過ぎて、何故か、逆につまんないんですね。エピソードそれぞれに興味をそそるのですが、何故か新鮮な感動にはつながらないんです。自己模倣が見え隠れするというのか。ワタクシが飽きているのか。難しいもんだなあ。。。

ゲームの名は誘拐/東野圭吾/6点

チャオ/八重洲/パスタ/7点

2005年07月01日 | 飲食店
東京大丸のデパ地下の奥の奥、場末の雰囲気がぷんぷんと匂う最悪の立地に、カラッと爽やかな味のパスタを出す稀有な店。あるんだかないんだかわかんないような仕切り、駅構内の喫茶店みたいな安っぽいカウンターなど、味と不釣合いな外観に好感が持てます。客層も千差万別、東京駅を利用する有象無象が利用する、知る人ぞ知る名店だと思います。私はよくここでイカ墨パスタをかっ喰らってから新幹線に乗り込みまっす。

チャオ/八重洲/パスタ/7点