ミズカタヒデヤの「外部脳」

Hideya Mizukata's "OUTBRAIN"

クーザ/イベント/9点

2011年08月31日 | イベント

ドラリオン以来、1年ぶりのシルク・ド・ソレイユ。よく行ってるなあ。美しさ、ストーリー、どれをとっても一流なんですが、今回は何よりも、メインのパフォーマンス、ホイール・オブ・デスが圧巻の出来でした。ステージ中央に一本のワイヤーで吊るされた巨大な三連の車輪。真ん中の車輪が自転すると、周りの二つの車輪が公転する仕掛けになっています。周りの二つの車輪の内側に男がそれぞれ乗り込み、公転する車輪の中でちょっと重心を動かすと、三連の車輪全体が回転するんです。それも、かなりのスピードで。男たちはそこで、跳んだり逆立ちしたり、まるで空中遊泳のよう。更に途中からは、車輪の上に乗っかって、縄跳び、空転、更に大ジャンプを敢行。10m以上の跳躍に思えるその動きは、落ちやしないかと心底ハラハラ。凄いを通り越して怖いんです。どうにかしてもう一度観てみたい。


他にも、自転車綱渡りや柔軟、お客さんを相手の本物のスリの芸など、面白い仕掛けが盛りだくさん。2時間半の長丁場を全く感じさせません。今回は特に、お客さんを弄る仕掛けがたくさんあって、そこも飽きさせませんでした。日本語が上手です。

 


ロボット演劇「働く私」/平田オリザ+石黒浩/7点

2011年08月28日 | 舞台全般

ひょっとしたら、これが歴史の転換点なのかもしれません。ロボットが俳優として参加している演劇を観ました。三菱重工業の黄色いロボット「ワカマル」二台はここで、夫婦が使っているロボットの役として出演しています。ロボットの役をロボットが演じる。アニメやCGじゃなくて、本当のロボットがロボットを演じている。まさにあるべき姿。ロボット君は完全に、一人前の扱いなんです。


二台のロボットは夫婦にお手伝いとして仕えています。人間と会話し、一通りの家事をこなします。但し、ロボットなんで、人間の細かい感情のニュアンスを感じ取るのが多少苦手です。といっても、全く感情がないのではなく、阿吽の呼吸が通じない、という感じ。外国人、異邦人に近い扱いなんです。そのニュアンスのズレを通じて、人間の日々の営み、あるいは、働くということの奇妙さを、的確に表現しているんです。

働けない夫、気を遣う妻。二人は面と向かってその話をしない。で、ロボットが間に入って、ニュアンスを伝えることになる。でも、ロボットだから的確に伝えられない。おかげで、却ってお互いの本本音が伝わってしまう。ロボットにも、微妙に働く方と働かない方がいて、働かない人と、働かないロボットの立場が置換可能と示唆されるんです。ロボットはそもそも「働く」という意味。働かないロボットの存在を通じて、人間存在の意味派手問いかけてきます。

中々一筋縄ではいかない作品でした。

 


和酒吟蔵/大阪福島/和食/6点

2011年08月27日 | 飲食店

酒を飲んだわけでも和食をしっかり食べたわけでもなく、ただ昼飯を食べただけ。でも、8月最後の日曜日の昼下がり、裏路地にヒッソリ開いていたそのお店の定食は相当にレベルが高かったのです。おばんざい3鉢にカレー風味の唐揚6個くらいで750円。ハードワークの合間に涼しく暗い店内で1人佇み、しばしの休息を満喫する。素晴らしい時間でした。


第9地区/ニール・ブロムカンプ/6点

2011年08月24日 | 映画

ヨハネスブルグの上空に巨大宇宙船が数十年間停泊し、そこから醜悪な外見の異星人が降りてきたんで、隔離された居住区に住まわせている、という奇想天外な設定の作品です。恐らくは、タブー表現の多い現代映画界において、宇宙人の形を借りることで、人種差別を堂々と描写し、問い直すためなんでしょう。何しろこの異星人、エビが二足歩行しているような生理的にきっついルックスで、宇宙船に乗ってきたくせに、知識や技術力は全くダメ、という設定。人類に抵抗らしい抵抗もせず、与えられた食事を貪り、何ら生産活動もせず、粗暴で、意思が弱い。これらはまさにかつての植民地における原住民を描写する支配者側の勝手な視点。

 彼らの人間の都合で強制移住させようと現地に入った主人公のしがない役人が、はずみで宇宙人の体液?を浴びて、徐々に宇宙人に変身するトラブルを抱えたために、主人公は仲間たちから実験台として迫害され、追われる立場になるんです。迫害していたものが迫害される立場に立たされて、その悪徳に初めて気づく、というのは昔からよくある話ではありますが、宇宙人の話に仕立てることで、彼らが本当に気持ち悪い外見、行動をしていること、また、彼らに対する遠慮のない暴力シーンを描くことによって、支配する側される側の肌感覚の描写にかなり成功していると思います。CGにはこういう使い方もあるんだな、と。

異星人の体に次第に変貌していく主人公が、まさにその体のために、異星人の住む居住区に隠れ、自分の体を元に戻すためとはいえ、異星人が宇宙に帰られるように必死に助ける後半の筋書きはなかなかに感動的。人間が本当にどうしようもなく身勝手な種族であることを納得すると共に、気持ち悪かったはずの異星人がだんだん可愛く見えてくるから不思議です。慣れって大事ですね。

フィラデルフィア/ジョナサン・デミ/8点

2011年08月24日 | 映画

エイズで解雇された弁護士が会社を相手取って法廷闘争する話です。公開当時見てとても感動した記憶があったのですが、完全に中身を忘れてました。タイトルから、街の暗いトラブルの話だとばかり思っていたんです。いい加減だなあ。で、久しぶりに観た感想は、ありがちなネタをよくここまで感動的なドラマに仕立てたものだ、ということ。傑作です。

 
何しろ、当事者の視点で物事を描くのがとても上手いと思います。冒頭、どんな話かわかんないですね。順調なキャリアを積む若手弁護士と、人を食った人権派弁護士とのライバル譚かと思っていたら、急転直下、主人公はエイズを隠していて、それがとうとう発症してしまう。ここに至るまで、観客にも彼がエイズだという兆候(例えばホモであることなど)は一切隠されている。しかも、結構小気味のいいテンポで映像が流れていくから、突然の話にこっちもビックリ、えー、そうだったの?ありゃー、っていう感じ。だから、感情移入が早い。リアリティを持ってその苦しみを感じることができる。

まあでも、その感情移入を持続させたのは、主人公のハンクスと人権派弁護士役のワシントンの演技ですね。ハンクスはエイズで体が壊れていく主人公の痛々しさの表現が見事。最後ガリガリで目もうつろなんですが、その状態で感情を表現するのってかなり難しいと思うんですが、こなしていました。それはもう、ほとんど目の演技だけだったように思います。ワシントンはそれ以上に圧巻。人権弁護士ながら、喜怒哀楽のはっきりした気持ちの良いキャラクター。ホモは嫌いだと公言し、当初エイズの主人公に近づくのを嫌がってしまう。でも、法が侵されることには我慢ならない。善人とは言い難い彼が、弁護の過程で次第に主人公と信頼関係を築く描写が見事。

特に、ラスト近く、主人公が病魔を押してマリア・カラスのオペラをCDと一緒に歌い上げるシーンは圧巻。残された時間の愛おしさを全身を使って表現する主人公と、それに魅入る弁護士。それまで、正義のために弁護してきた彼が、初めてこの男を素晴らしいやつだ、本気で助けたい、と思う瞬間。参りました。
後、オープニングのスプリングスティーンの主題歌が素晴らしいです。最後にもう一度聴きたいくらい。

エクスペンダブルズ/スタローン/3点

2011年08月20日 | 映画

80年代の古式ゆかしさを踏襲したアクション映画です。一応筋書きはあるようですが、そんなことはどうでもいいのでしょう。とにかく、スタローンさんがジェット・リーとかドルフ・ラングレンとか一線級だったスターの皆さんと一緒に、任天堂の大乱闘スマッシュブラザーズの如く、只管大暴れししておられます。

CGを使ってないんで炎の迫力が半端ないし、格闘シーンがとってもリアルですごーいっす。どっかの島に組んだ壮大なセットをガンガン破壊するんで、スカっと爽やか、エコなんて糞くらえ!てな感じ。ファンの方には堪らないんでしょうね。

でもやっぱり、映画なんだから、ちゃんとした筋書きの中でスター軍団を生かして欲しかったです。全く感情移入できない戦闘シーンが、驚くほど退屈なことを学ばせて頂きました。


アリス・イン・ワンダーランド/T.バートン/7点

2011年08月20日 | 映画

大人になったアリスが再び不思議の国に迷い込む話です。最初は自分の夢の中だと思って流れに身を任せるままのアリスが、次第に自我を持ち、自分の力で状況を切り開き、最後には勇者となって、仲間を救うんですね。元の世界に戻った後も、安定した道を捨てて、果敢に人生にチャレンジしていく。普通の女の子の自立譚として、とても良く出来ています。

それにしても、マッド・ハッターを演じたJ.デップは、今までのバートン映画の中で一番嵌っていたと思います。あの跳ねるような歩き方、奇妙な顔面の仕草の変なキャラクターは、不思議の国で初めて納得感を持って見ることができました。アリスの自立を助け、見守るその慈愛に満ちた姿勢が心を打ちます。

グランドシェフ/和田山/ステーキ/8点

2011年08月15日 | 飲食店

 

国道9号線と312号線の交差点近く、ちょっと裏にあるコンテナハウスのステーキ屋さんって、何だか大丈夫かな、っていう感じがしますが、実際には全然素晴らしいお店です。お客さんの前に磨き上げられた分厚い鉄板があって、そこでシェフが直に料理をする、所謂ちゃんとした鉄板焼きを出してくれます。

外観はコンテナを二つ組み合わせたような形なんですが、中に入ると実にしっかりした造り。テーブルが5つあって、それぞれ中央に鉄板があって、フードもある。コンテナはイメージだけ、だそうです。一人シェフが全てのテーブルを料理するし、うちみたいに10人の団体だったら、一人で二つのテーブルを同時に料理しちゃう荒技ぶり。このシェフのパフォーマンスが中々ホスピタリティあふれてるんです。丁寧だし、説明もうまい、で、こっちが子供連れだったのもあって、ちょっとやり過ぎなくらい写真を撮ったんですが、ポーズを取ってくれるお茶目さもあって、見るだけでも十分に価値があります。

お肉は近所の有名な肉屋、平山牛舗から希少部位「ハネシタ(どこかわからん)」を取り寄せたもの。これがまずとにかく口当たりが抜群、とろけそう。しかも、肉の種類が微妙に三段階あって、脂の濃いやつから段々と薄いやつを出してくれます。岩塩、ポン酢、味噌だれの3種類の味付けも絶妙なバランス。肉汁ともやしを炒めたものをご飯に載せて、ちょっと味噌だれをつけて食べると、いくらでも入ります。エビ、牡蠣、ホタテもかなり美味。後、前菜、スープ、サラダがついて、全部で6000円くらいという、中々のコストパフォーマンス。いやあ、よくできた店でございます。

郊外のロードサイドでこれだけの本格的なサービスで美味しいステーキが食べられるなんて、本当に驚きです。願わくば、ちゃんとお客さんがついて、末永く商売していただきたいものです。また行こう。


もうやんカレー/渋谷/7点

2011年08月03日 | 飲食店

青山通り沿い。ブックセンターのちょっと向こうのカレー屋さんです。正直、かなり気に入った!ボリュームがあって、味もパンチがある。スパイシーでまろやか。そして、漫画喫茶並みの漫画の充実度。何といいますか、全てがワタクシ好みです。いいなあ。万人受けはしないでしょうけど。わかってます。アボカドカレーと豆腐サラダを注文。カレーを頼むと、薬味と何故かジャガイモが取り放題。良い時間を過ごすことができました。又来よう。

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