下北沢のザ・スズナリで、青年座の「深川安楽亭」を観て来ました。しょっちゅう暗転するし、音楽が「?」だし、劇場がアレなので外の車の音が聞こえるし…という按配で、決して「最高!」とは思いませんでしたが、キマジメな演劇で好感度は高し。
これはずいぶん前に「いのちぼうにふろう」というタイトルで映画化もなされた山本周五郎の小説が原作です。
私は原作を読んでいないのですが、小林正樹監督の映画が結構面白かった(仲代達矢、佐藤慶など、クセのある役者がずらりと揃ってました)ので、それを思い出しながらの観劇でした。『深川安楽亭』という名前の飲み屋にたむろする無頼のヤクザ者たちが、たまたま紛れ込んできた若者の純情にほだされて、身売りした彼の恋人を救うために命を張る…というのがだいたいの粗筋。映画で「いのちぼうにふろう」と名づけられたのは、自分の損得とも何もかかわりの無いことで命を棒に振ってみるのも悪くはないやな、という主旨の登場人物のセリフから。
記憶が少し曖昧なのですが、たしか映画では、そうやって命を張ってみても、結局はやっぱり棒に振ったのと同じで、ヤクザ者たちは皆命を落とし、若者も彼の恋人も(確かほんの少しの行き違いのせいで)命を落とし…という無残な結末だったと思います。しかしこの青年座の芝居では、確かに幾人かが命を落としますが若者は救われ、ほのかな希望を漂わせて終わりました。うーむ。原作どおりなのか、それが青年座の解釈なのか。
映画では勝新太郎が演じていた、ヤクザ者と若者との距離をつなぐ重要なキャラクターを、こちらでは山路和弘が演じていました(洋画の吹き替えなど多く手がけている方です)。この人ちょっと飄々としていて、それがわざとらしくなくて、とても良いのです。最初から最後まで酩酊している男が、最後に自分の過去や背負ってきた苦しみを吐露するシーンでは、あちこちですすり泣きが漏れてました。これが大衆劇場だったら「山路っ!」と声がかかりそうな名演(笑)。
そして、ヤクザ者たちの心の拠り所となり、彼らの苦しみを飲み込みながら黙って包丁を振るっている安楽亭の主人が、最後にチラリと垣間見せる、それまで抱えてきた(おそらくこれからも黙って抱えてゆく)苦しみ、哀しみ、怒りの表情。一人の若者は救えたけども、可愛がってきた、不器用な男たちが呆気なく散っていった、それを救えなかった悔しさをにじませるセリフ。これを演じる山本龍二氏の苦渋に満ちた横顔が大変印象的でした。
そのほかの役者たちもなかなか魅力的な面構えの人ばかり。なおクロノクル・アシャーの吹き替えをした檀臣幸氏は、ヤクザ者たちに救われる若者の役でした。今回は、とても繊細な感じだったなぁ。
くしくも仲代主演(無名塾)で同じく「いのちぼうにふろう物語」が1月に公演されるそうです。これは脚本が映画と同じ隆巴。どんなのかなぁ。観に行こうかなぁ。
これはずいぶん前に「いのちぼうにふろう」というタイトルで映画化もなされた山本周五郎の小説が原作です。
私は原作を読んでいないのですが、小林正樹監督の映画が結構面白かった(仲代達矢、佐藤慶など、クセのある役者がずらりと揃ってました)ので、それを思い出しながらの観劇でした。『深川安楽亭』という名前の飲み屋にたむろする無頼のヤクザ者たちが、たまたま紛れ込んできた若者の純情にほだされて、身売りした彼の恋人を救うために命を張る…というのがだいたいの粗筋。映画で「いのちぼうにふろう」と名づけられたのは、自分の損得とも何もかかわりの無いことで命を棒に振ってみるのも悪くはないやな、という主旨の登場人物のセリフから。
記憶が少し曖昧なのですが、たしか映画では、そうやって命を張ってみても、結局はやっぱり棒に振ったのと同じで、ヤクザ者たちは皆命を落とし、若者も彼の恋人も(確かほんの少しの行き違いのせいで)命を落とし…という無残な結末だったと思います。しかしこの青年座の芝居では、確かに幾人かが命を落としますが若者は救われ、ほのかな希望を漂わせて終わりました。うーむ。原作どおりなのか、それが青年座の解釈なのか。
映画では勝新太郎が演じていた、ヤクザ者と若者との距離をつなぐ重要なキャラクターを、こちらでは山路和弘が演じていました(洋画の吹き替えなど多く手がけている方です)。この人ちょっと飄々としていて、それがわざとらしくなくて、とても良いのです。最初から最後まで酩酊している男が、最後に自分の過去や背負ってきた苦しみを吐露するシーンでは、あちこちですすり泣きが漏れてました。これが大衆劇場だったら「山路っ!」と声がかかりそうな名演(笑)。
そして、ヤクザ者たちの心の拠り所となり、彼らの苦しみを飲み込みながら黙って包丁を振るっている安楽亭の主人が、最後にチラリと垣間見せる、それまで抱えてきた(おそらくこれからも黙って抱えてゆく)苦しみ、哀しみ、怒りの表情。一人の若者は救えたけども、可愛がってきた、不器用な男たちが呆気なく散っていった、それを救えなかった悔しさをにじませるセリフ。これを演じる山本龍二氏の苦渋に満ちた横顔が大変印象的でした。
そのほかの役者たちもなかなか魅力的な面構えの人ばかり。なおクロノクル・アシャーの吹き替えをした檀臣幸氏は、ヤクザ者たちに救われる若者の役でした。今回は、とても繊細な感じだったなぁ。
くしくも仲代主演(無名塾)で同じく「いのちぼうにふろう物語」が1月に公演されるそうです。これは脚本が映画と同じ隆巴。どんなのかなぁ。観に行こうかなぁ。