メルマガ「週刊正論」令和4年2月24日号
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【ロシアのウクライナ侵攻】
ロシアが24日、ウクライナに侵攻を開始しました。この事態に際して、岸田文雄首相がどのような発言をするか注目していました。
首相は同日昼、記者団に対し「プーチン大統領の発言などさまざまな報道があります。まずは情報の収集、そして事態の把握に全力で取り組みます。いずれにしても情勢は緊迫しておりますので、G7(先進7カ国)をはじめとする国際社会と連携しながら取り組んでいきたいと考えます」と述べました。
その上でウクライナにいる邦人保護について「まずは情報収集、事態の把握に努めてています。その中で邦人の安全確保、これは重要な課題です。何が適切なのか、情報、状況をしっかり把握したうえで、的確に対応していきたいと考えます」と強調しました。
これが日本国のリーダーの発言です。もちろん邦人保護は重要ですが、発言を聞いた複数の現役官僚から失望の声が寄せられました。
ある官僚は「これは恥ずかしすぎて世界にとても発信できない」ともらしました。別の官僚は「今語るべきは、ロシアの侵攻により、民主主義という普遍的価値が危険にさらされている、戦後秩序が瀬戸際にあるとの危機認識でしょう」と語りました。
岸田首相の対応ぶりを予言したかのような論文が3月1日発売の月刊「正論」4月号にあります。杏林大学名誉教授、田久保忠衛氏が書いた巻頭論文で、タイトルは「国軍がないゆえのビクビク外交」。
「口先だけで大きなことを言うのは自由だが、軍事力の基本を米国に依存しただけの国家は国の形としては片肺だ。日本で高度成長時代に宏池会が中心になって謳歌した『軽武装・経済重視』はとどのつまり、現在の日本を形づくっている」
まさに、プーチン大統領を非難することすらできない岸田首相の姿を予想したかのような書き出しです。岸田首相は宏池会会長です。
岸田首相は24日午後の国家安全保障会議(NSC)会議後になってようやく「今回のロシアによる侵攻は力による一方的な現状変更を認めないとの国際秩序の根幹を揺るがすものであり、ロシアを強く非難するとともに、米国をはじめとする国際社会と連携して迅速に対処してまいります」と述べました。最初からそういうべきでしょう。
前述の官僚は異口同音に「当然、中国はロシアの侵攻に対する米国や日本の対応をみている。台湾に侵攻しても大丈夫だと判断したら台湾も危ない。台湾有事は日本有事でもあり、日本の安全保障にも直結する」との危機意識を語りました。
4月号では、今年9年ぶりに改定される国家安全保障戦略について、元陸上幕僚長の岩田清文氏が「中国に向き合う国家安保戦略“私案”」を提示しました。岩田氏は次のように記します。
「この戦略(国家安保戦略改定)を誤れば、いずれ我が国は中国の覇権拡大に飲み込まれ、自由、民主主義、人権、法の支配というこれまで我が国が大事にしてきた価値観の下での発展が阻害されるという危機感を持つべきである。今年一年は国の命運を左右する分水嶺になると言っても過言ではないだろう」