キ上の空論

小説もどきや日常などの雑文・覚え書きです。

はずれ

2016年01月05日 | リハビリ企画
 四つの星がマーキュルを巡る。
 巡りのたびに、誰かがその星の下に生まれる。
 ひとつは、運命の星。封印の解けかけた虚無神を何とかできそうな者たちが自動的に周りに集まる。
 今ひとつ、名誉の星。良かれ悪しかれ振り切れた連中に好かれやすい。
 そして、魔道の星。生まれ持ってあらゆる魔法を使うことが許されている。使いこなせるかどうかはともかく。
 重なることもある。ただ、それぞれの効果を打ち消し合うことはない。
 星の<守護>は、世界に虚無神を置いていくのと引き替えに、人間に与えられたものだ。
 その中に、厄介なのが、ひとつあった。
「非業の星って何だよ」
「モテないとか」
「水だけで太るとか」
「どんだけ頑張っても家督は継げないとか」
「大概死に様がひどいな」
「武芸に優れていると、割としょっちゅう死地に送られる」 
「知識はあっても知識バカが災いして酷たらしい暗殺されぶり」
「賢い奴いた?」
「魔道の星と重なった奴いたよな、死ねなくなったんじゃなかったっけ」
「それ別の奴」
 先祖を奴呼ばわりするほど、マーキュルでも非業の星は忌まれる。
 かつては破壊神と呼ばれた虚無神がその表記を変えたように、非業の意味づけを変えることは叶わなかった。
 巡りは五百年に一度という。古い記録は書き写しの書き写しの書き写しでしかないものもいくつか。それすらない先祖もいる。
 マーキュルの巡りに近い五人が、日々文献と格闘しながら、誰の元にどの星がと頭を集めて悩んでいる。
 聖王と邪王は神族と魔族の存続の是非を問う審判を五回行うものとされ、巡りと虚無神の封印の緩みはそれと同時に起こる。
 それぞれ六人目の聖王と邪王であるキリン・シーヴとシリン・シーヴが、「せっかく生き残ったならそのままいたっていいじゃん」と最初の王から合わせて五回目の結論を出したのは五百年前。
 マーキュルの治める国ツァイランファで合議制が始まるまで、あとほんの数年。

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