キ上の空論

小説もどきや日常などの雑文・覚え書きです。

ソウイウモノ

2008年05月31日 | 雑文
 平たく言うと、ろくでなしだ。
 居心地が良いのはただの生存本能。人を近づけず、遠ざけもせず、いつでも切り捨てる準備をしていながら、両手を広げる振りをしている。
 だから、人から熱を奪わない割には、温度もなまぬるい。
 手が冷たいのはただ血行が悪いからだとか、背を丸めるのは支える筋力が足りていないからだとか、淡々と言う。
 勝手に出かけて、勝手に帰ってくる。
 たとえば、鬼束ちひろの『私とワルツを』に千昌夫の『星影のワルツ』を返すような、重なり合ったと思った部分が決定的なズレだったりする、そういうことを(多分)わざとやる。
 人の気持ちに寄り添うようで、ただ居るだけ。それで充分と言ったら居なくなる。
 踏み込むようなことを言ったかと思えば、視線を向けたときにはもう別のどこかへ行っている。
 空気のような軽やかさと寒々しさとを内包しているから、暖かくはなりきれない。
 けれど、温度を必要とするときには大体そば近くにいて。
 ほどよいなまぬるさに溶かされたりもする。

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