キ上の空論

小説もどきや日常などの雑文・覚え書きです。

身も蓋もない

2006年12月16日 | みるいら
 風呂上がりに急いで寝間着を着て、こたつに潜り込む。ついさっき浮かんだレポートの続きを書き込むべく向きを変えて、筆記具を引き寄せる。
 できればこたつからは出たくない。
 夕食後の片づけをして、机を拭く兄さんは素足だ。
「足、寒くないの?」
 見ているだけで寒い。
「寒いよ」
 のんびりと返る。それほど気にしている様子もない。
 机を拭いた台ふきんをそのまま流しに持ってゆく。この部屋は畳だけど、台所は板張りだ。
 夏は扇風機、冬はこたつ。
 兄さんは、ぐうたら学生のぼくと違って、一日のほとんどが仕事で、この家(下宿だから〔部屋〕の方が正しいかも)に用事があるのは朝食と夕食と就寝のときだけだ。
 だからって。
「何でここエアコンないの?」
 レポートに書く内容を忘れた腹いせのように言うと、兄さんはちょっと考えたあと、やっぱり何でもないように答えた。
「貧乏だから」

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