あまりにも悪者に…」元大蔵次官が「安倍回顧録」に反論 財務省の「省益追求」の正体、増税を主張し資産売却を渋る天下り体質

 

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【日本の解き方】「あまりにも悪者に…」元大蔵次官が「安倍回顧録」に反論 財務省の「省益追求」の正体、増税を主張し資産売却を渋る天下り体質(1/2ページ)

 

「10年に1人の大物大蔵次官」といわれた齋藤次郎氏の「最初で最後」というインタビュー記事が月刊「文芸春秋」に掲載された。

『安倍晋三回顧録』を読んで、あまりに財務省が悪者に扱われていることに我慢ならなかったようだ。そこに書かれていることは単純で、債務を減らそうと一生懸命やっているのに、安倍さんから「省益」を追求し政権をも倒そうとしていると言われて、財務官僚は困っているということだ。

しかし、筆者から見れば、齋藤氏ほど財務省の志向を体現している人はいない。その意味で、最もわかりやすい人が出てきたといえる。

筆者は、大蔵官僚時代の1990年代前半に政府の貸借対照表(バランスシート=BS)を作っている。それは政府の金融活動ともいえる財政投融資が危機的状況だったからだ。

 

政府の財政状況を見るには、BSの借金残高だけでは不十分で、左側の資産も考慮し、具体的には資産を控除したネット借金残高で見なければいけない。これはファイナンス論・会計論のイロハのイである。しかし、当時の大蔵省は資産を対外的に明らかにすることには恐ろしく消極的で、筆者はある幹部から「BSを口外するな」と厳命を受けた。それが事実上解けたのは小泉純一郎政権になってからだった。

小泉政権では、筆者は郵政民営化準備室・総務大臣補佐官として郵政民営化法の企画立案に携わった。一方、齋藤氏は、当時、民主党の小沢一郎氏と深い関係だったので、民営化阻止・国営化の立場だった。その後、自公から民主党への政権交代があり、郵政民営化法は改正され、事実上の国営化になった。そこで、齋藤氏は日本郵政社長となった。

これは、財政の見方と大いに関係している。というのは、筆者のようにBSで借金とともに資産を考えると、借金は返済しなければいけないが、その財源として資産売却になる。しかし、齋藤氏のように借金だけに着目すると、増税で借金返済となる。

一般論として言えば、資産の中には、天下り先の「米びつ」である出資金や貸付金が多く含まれている。増税は資産が温存されるので、官僚にとって好都合だ。逆にいえば、借金は返済せざるを得ないから、資産売却となれば天下りもできなくなる。民営化は資産売却の典型例なので、官僚が民営化を否定するのは、天下りを維持したいためであることがしばしばだ。

 

安倍さんが、財務省が「省益」を追求しているというのは、例えば借金返済のために増税を主張するが、一方で、資産売却を渋り、天下りに拘泥することを言っている。

ちなみに、齋藤氏は民主党政権が終わると、自分は退任し、次の社長には再び財務省出身者が就任したが、安倍政権に見つかり短期間で退任した。

もちろん、増税することで財務官僚の差配するカネが増えるのも財務省の「省益」だ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一

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