このように尊敬を集める資産家は、中国共産党の脅威とみなされる
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経済より党が重要な中国

中国はコロナ不況からいち早く脱出したように見えるが、水面下で不穏な動きが起きている。

一つは地方政府が100%出資する自動車メーカー「華晨汽車集団」の経営破綻で、従来では考えられなかった。

もう一つは11月11日の独身の日ネットセールで、アリババは前年比8割増など大幅増加した。
 
だが中国全体の小売売上高は近年5%台なので、ネット消費増加は実店舗での売り上げ減少を意味している。

同じ11月11日に有名な慈善家で事業家の孫大午が逮捕された事が、中国では大きく報道されていた。

孫大午は苦労の末に農業で事業を起こし、数千人の労働者を雇い農民学校から数千人の卒業生を送り出している。

病院も開設し貧しい農民が医療を受けられるような積立金制度を作り、道徳家として知られていた。

大富豪となった現在でも労働者と同じ共同宿舎に住み、車や豪邸などは所有していない。

孫大午はこうした慈善家であるが故に、そうでない人から恨みを買い妨害を受けてきた。


電線を切られるなど日常茶飯事で、毒を盛られたり闇討ち、嘘の罪で警察に捕まった事もある。

近くで低料金で良質な医療をやられたら病院は困るし、良心的な自治をされると共産党が困る。

こうして孫大午は共産党と敵対するようになり、20年11月11日に逮捕された。


孫大午とジャックマー

例えば孫大午は1998年に自費で10キロの道路を建設したが、地元の共産党幹部は激怒し妨害したり襲ったりした。

2000年に広東省から肥料の大口注文があり、省の高官らは1トンにつき60元のリベートを要求した。

リベートを拒否すると広東省は「こんな事は初めてだ」と言って取引を拒否した。

北京の国営企業からニワトリ1万羽を買おうとした時、「1羽4元を6元で買ってくれたら、5千元キャッシュバックしましょう」と持ち掛けられた。

孫大午はワイロを出さず受け取らない罪で2003年に逮捕され半年間拘束されたが、公式な罪状は「他人の預金を不法に引き出した」というものだった。

2020年11月の逮捕は借りている公有地の問題らしいが詳細は公表されず、どうせ役人が要求したワイロを拒否したなどの理由でしょう。


中国には裁判制度が無く、特別に有名な事件以外は裁判が開かれず、逮捕理由も判決も何も公表されない。

逮捕した事実すら公表しない場合が多く、家族が捜索願を出しても逮捕した事を隠し通す。

今回はたまたま周囲に大勢の人が居たので「登山中に行方不明」等にはならず、中国全土で報道された。


もうひとつ中国の経済界を驚かせたのは、あのアリババ創業者のジャックマーが共産党を批判し逮捕される可能性が出てきた。

ジャックマーは10月24日、金融監督当局や大物が集まる会合に出席し演説したが、監督当局や銀行を公然と批判した。

中国の銀行はまるで「質屋」のように遅れていて、金融規制が技術革新の足を引っ張っていると発言した。


アリババグループのアリペイを運営するアントの上場が11月12日に突然中止になり、習近平が直接中止を指示したと報道されている。

孫大午の件と考え合わせると、中国ではいかなる大物であっても共産党と対立したらあっさり逮捕される。

習近平と江沢民の対立の時は、江沢民を支持した多くの企業経営者が逮捕されたり、行方不明になった。

中国の資産家や富豪とは、このように不安定な立場なので、皆ビットコインで外国に送金し海外に住みたがる