開業医に治療を拒否できないように」 日本一コロナ患者を診た「町医者」が語る日本医師会の問題

 

「開業医に治療を拒否できないように」 日本一コロナ患者を診た「町医者」が語る日本医師会の問題(デイリー新潮) - Yahoo!ニュース

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コロナは人災です。日本は諸外国とくらべて感染者数も死者数も少なく、あえて言いますが、日本のコロナは「さざ波」でした。だから死亡者を限りなくゼロに近く抑えられたのに、政府と日本医師会は、その有利な条件を活かすどころか、悪い方向に持って行ってしまいました。長尾院長がそう語ることができるのは、昨春から「町医者」として発熱外来に対応し、コロナ患者を治療し、ワクチンを接種しながら、コロナによる死亡者をゼロに留め、約100人のスタッフから感染者を一人も出していないからである。〉
日本では日本医師会の会員たる「町医者」の大半がコロナ患者を診ない。それなのに医療機関の8割超が町医者を中心とした民間病院だから、感染者数が少なくても、医療はすぐに逼迫する。だが、町医者の多くが長尾院長のようなら、コロナは本当に「さざ波」ですんだのではないか。長尾院長は「日本医師会には開業医に、コロナ治療を拒否しないように言ってほしい」と訴えるが、事実、長尾クリニックの1年余りの取り組みを振り返れば、日本のコロナが「人災」である理由も浮かび上がるはずである。うちで患者さんが初めて陽性と判定されたのは、昨年4月3日。その日のうちに外にテントを張って「発熱外来」を開設し、それから430日近く、ほとんど毎日、コロナ患者さんを診てきました。
一番大変だったのは年末年始の第3波で、ほとんどの開業医や一般病院が発熱患者を診ないなか、保健所が「年中無休の長尾クリニックに行け」と指示し、患者さんが集まってきました。ピーク時は1日40人が発熱外来を訪れ、陽性率も40%以上に。その多くが入院できず自宅療養となったので、24時間体制でフォローしました。対面診療を希望する患者さんには、ドライブスルー診療を実施。一時は裏の駐車場がコロナ病棟のようになりました。また患者宅に往診し、在宅酸素を導入し、薬を配りました。
 

保健所の介入で重症化

発熱外来やドライブスルー診療は僕以外の医師も担当しますが、自宅療養者のフォローは感染リスクが高く24時間体制なので、私一人で対応し、気づけば日本一コロナを診た医師かも知れず、おかげで多くのノウハウが蓄積されました。コロナ対応は、発熱外来での抗原検査やPCR検査を用いた診断に始まり、採血やCTによる重症度の評価、治療、自宅療養者の管理と続きます。9割以上の開業医が、最初の発熱対応すら拒否するなか、僕は1年3カ月、フルコースでやってきました。こうして話すとコロナだけ診ているように思われがちですが、私たちは多様な生活習慣病やがん、認知症などの患者さんを毎日150人ほど、通常外来で診ています。また、約600人の在宅患者さんに24時間対応し、年間約160人のお看取りがあります。膨大な業務は、感染の恐怖と戦いながら現場で働く看護師に支えられている。また、長尾院長はコロナの後遺症外来も開設したが、受診中の60代の女性が言う。 「5月に感染しましたが症状がなく、下旬から仕事を再開。ところが倦怠感で起き上がれなくなり、近所の発熱外来を訪れても後遺症は診られないと断られ、保健所も、10日間の隔離は終わっているのでなにもできないと言う。藁にもすがる思いで長尾先生に頼みました」長尾院長は、狭いホテルに閉じ込められたストレスで、線維筋痛症になりかけたと診る。運動もできないままテレビから不安を煽る情報を一方的に受け、交感神経が常に優位になるなどした結果、免疫機能が崩れたのだという。しかし、それが無視される現実――。〉
そう訴える根拠を、さらに掘り下げてもらう。重症化を防ぐために重要なのは、すでに述べたように早期の診断と治療。ところがそれを開業医が拒否したため、放置された患者さんが難民化しました。診断でも、多くの患者さんが自宅療養を余儀なくされ、その数は大阪府で1万人以上、兵庫県でも3千人以上におよびました。それなら大半が軽症か無症状というこの病気の特性から、自宅療養を基本としたほうが合理的です。その場合、各患者に主治医をつけ、毎日テレビ電話で診断する。重症化の兆しが見えたらすぐ入院できるようにする。現状のように不透明な入院配分ではなく、医師同士がホットラインで直接情報交換したうえで、トリアージを行うべきです。
障壁となる保健所の介入をなくすためにも、政府は現在の指定感染症2類相当を、インフルエンザと同じ5類にしてほしい。こうした問題は第1波のときから明らかなのに、だれも声を上げないのは本当におかしいと思います。さる患者は自宅療養中、保健所から、薬なしで平熱に戻ったのかを確認したいからと、長尾院長処方の薬の服用をやめるように求められ、従ったところ体調が悪化したという。「保健所が医療行為に口をはさむ現実がある」(長尾院長)のである。〉
 

町医者がコロナの防波堤に

たくさんの医療機関があり、大勢の医師がいるのに、今日もうちの発熱外来に県をまたいで多くの発熱難民が押し寄せる。日医はこの現実を直視すべきです。ところで、長尾クリニックはワクチン接種も行っている。だが、長尾院長は「集団接種をメインにして、日本医師会の中川会長が進める個別接種は、集団接種会場に行けない人などに留めるべきだ」と強く訴える。〉
こうしてワクチン接種には、調整、受付、問診、接種、誘導、状態観察などに常時20人近く必要で、それを通常診療と両立させなければいけません。打つだけでいいインフルエンザのワクチンとは、ハードルの高さが段違いで、診療所には難しすぎます。
中川会長は個別接種ばかり勧めますが、あちこちでミスが起きている。発熱対応をしなかった後ろめたさをワクチン接種で挽回したいなら、より安全で効率的な集団接種への協力を呼びかけるべきなのに、間違いに間違いを重ねています。
 
一方、早期の診断と治療は町医者の役割だというのが、長尾院長の主張である
。先述したように、この1年、私はコロナでの死亡を一人も経験しておらず、かかりつけ医がきちんと対応すれば死亡者を限りなくゼロにできる、という思いがあります。コロナで亡くなる方が全国にいるのは、初期対応に課題があるからではないか。最初に対応するかかりつけ医の機能を強化すれば、死亡者をゼロに近づけられるのです。
長尾院長は中川会長に、ある医学誌上での対談を2回持ちかけたが、2回とも「緊急事態宣言下だから」という理由で断られたという。長尾院長が言うように「Zoomでも可能なのにおかしな話」だが、中川会長にとってコロナは、政治資金パーティや寿司デートの大切さにくらべれば、取るに足らないのだろう。
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