大手町の片隅から] 中国に「火の中に連れ込まれる」 乾正人

産経

【大手町の片隅から】中国に「火の中に連れ込まれる」 乾正人

あの事件発生から5分後、現場から徒歩2分の通りを歩いていたのに、まったく気が付かなかった。

あの事件とは、もちろん8日夕、東京・銀座の高級腕時計専門店で起きた強盗事件である。

平穏だった5分後の銀座

身柄を確保された4人が、16~19歳の少年だったのも衝撃的だったが、もっと驚いたのはほとんどの通行人が、初めはテレビか映画のロケだと思い込んでしまったことだ。

もし、私が5分前にたまたま現場を通りかかったとしても同じ反応をしたことだろう。

日本一の繁華街である銀座の大通りで白昼堂々、強盗事件が起きるとは、想像もつかなかったからである。吉本隆明流に書けば、われわれは「日本は平和で安全である」という「共同幻想」にどっぷりとつかり、現実を現実として受け止められなかったのである。

今回の強盗事件で、けが人が出なかったのは不幸中の幸いだったが、他人に危害を加えても自己の利益を確保しようという強欲で悪意ある人間はそこら中にいる。

しかも大国に自己中心的な妄念に取りつかれ、他国に対する悪意を濃厚に持つ権力者がいれば、近隣諸国はたまったものではない。

ロシアのプーチン大統領は、対独戦勝記念日に「われわれの祖国に対して再び本物の戦争が起こされた」と、あたかも西側がロシアを侵略したかのような演説をした。小学生でも騙(だま)せないような妄言だが、それでも鈴木宗男センセイは「プーチン大統領にも言い分があることを考えるべきではないか」とおっしゃる。

銀座の強盗犯にも言い分がある、というのと同じ理屈だが、鈴木センセイが所属する日本維新の会も同じ考えなのか。いつまでも老兵にやりこめられていては、統一地方選の勢いもしぼみますよ、馬場伸幸代表。

 

そんなプーチン大統領がすがるのが、中国の習近平国家主席である。演説でも「日本の軍国主義と戦った中国の戦士たちの偉業を記憶し、尊重している」と涙ぐましいほどヨイショしたが、習主席は、今のところ洞が峠を決め込んでいる。ウクライナ情勢が、彼の悲願である「台湾統一」の妨げになりかねないためだが、上ばかり見ているヒラメ外交官たちは、主席様の歓心を買うため、発言がヒートアップしている。

赴任したばかりの呉江浩駐日大使も例外ではなかった。

呉大使は、4月28日、日本記者クラブで行われた記者会見で、安倍晋三元首相が主張した「台湾有事は日本有事」との認識を「あまりにも荒唐無稽で危険だ」と非難。さらに、「日本という国が、中国分裂を企てる戦車に縛られてしまい、日本の民衆が火の中に連れ込まれることになる」と述べたのである。

なぜ外相は抗議をしない

もし「台湾有事」が起き、台湾救援に動いた米軍を支援すれば、躊躇(ちゅうちょ)なく、日本を攻撃するぞ、という明白な脅迫である。かつて北朝鮮高官が「ソウルを火の海にする」と韓国を脅したのに匹敵する妄言だ。

 

林芳正外相は10日の衆院外務委員会で、「外交ルートを通じて抗議した」と述べたが、なぜ即座に大使を呼んで抗議しなかったのか。こんな弱腰では、「ポスト岸田」はほど遠いですぞ! (コラムニスト)

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