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“中国忖度”の「朝日新聞スクープ記事」 新型コロナ報道で“異例の取材”が許された訳
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【朝日新聞研究】“中国忖度”の「朝日新聞スクープ記事」 新型コロナ報道で“異例の取材”が許された訳
朝日新聞の2月23日朝刊の1面と2面に、新型コロナウイルスの中国での状況に関して、注目すべき記事が掲載された。
まず1面カタの「未知の肺炎7人始まりだった」という見出しの、北京の西村大輔記者による記事は、「新型コロナウイルスの発生地である中国湖北省武漢市が『封鎖』されてから23日で1カ月が経つのを前に、最も早く感染者を受け入れた武漢の拠点病院『金銀潭病院』の張定宇院長(56)が朝日新聞の取材に応じた」ものだ。
「取材は21日夕、SNSのビデオ通話で武漢にいる張院長と結んで行った。新型肺炎をめぐり、張院長が外国メディアの取材に応じるのは初めて。武漢の医療機関幹部が応じるのも極めて異例だ」とある。
内容は、昨年12月29日に7人の患者が運び込まれてきたこと、1月上旬には診療体制を強化したこと、同月23日に武漢が封鎖されると、治療が一層困難になり、春節(1月25日)のころが極限状態だったこと、現時点ではピークに達したと考えていること、などが紹介されている。
この記事に注目するのは、内容もさることながら「朝日新聞のスクープ記事」であることである。それは、張院長が外国メディアの取材に応じるのは初めてであり、武漢の医療機関の幹部が取材に応じるのも極めて異例だ、と述べられていることから、疑問の余地はない。
朝日新聞はこの記事が自慢らしく、3月12日の新型コロナウイルス問題の別刷りの特別版にも、再掲載している。
しかし、この記事は、朝日新聞にとって自慢できるものだろうか。
異例な取材を許されたのは、中国の共産党独裁政権から「完全に安全なメディア」として、信頼されているからではないのか。一方で、中国外務省は同月18日、米主要3紙(ウォールストリート・ジャーナル、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト)の米国人記者に対し、記者証返還を要求した。共産党政権にとって好ましくない記事を書いたようだ。
朝日新聞の“中国忖度(そんたく)体質”は、冒頭の2月23日2面の「時時刻刻欄」の記事にも、明確に表れている。
それは、「問われる強権『失敗許されぬ』」との見出しで、書き出しは「1100万人の大都市を封鎖するという決断は、中国特有の政治体制だからこそ可能だったとも言える。中国の呼吸器系疾病の第一人者である鍾南山医師は『これほどの動員力を持ち、市民を一斉に動かせる国は中国以外にはない』と語る」となっている。
次いで、強権的な手法を具体的に説明し、「政権はこうした中央集権システムの『優位性』を誇り、武漢封鎖が感染の拡大阻止に効果を示したとアピールし始めている」と述べている。中国側の驚くほど勝手な言い分を、そのまま紹介しているのだ。
その後、中国は中国発生説を否定し、「米軍が持ち込んだ」とまで、主張するようになる。
■酒井信彦(さかい・のぶひこ) 元東京大学教授。1943年、神奈川県生まれ。70年3月、東大大学院人文科学研究科修士課程修了。同年4月、東大史料編纂所に勤務し、「大日本史料」(11編・10編)の編纂に従事する一方、アジアの民族問題などを中心に研究する。2006年3月、定年退職。現在、新聞や月刊誌で記事やコラムを執筆する。著書に『虐日偽善に狂う朝日新聞』(日新報道)など。
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