恐怖…世界が注目の「毒殺未遂事件」から見えた「深い闇」

 

 

恐怖…世界が注目の「毒殺未遂事件」から見えた「深い闇」(美馬 達哉) @gendai_biz

旧ソ連で開発された軍用の神経ガス「ノヴィチョク」

ノヴィチョクとは、ロシア語で「新人」を意味しており、1980年前後に旧ソ連で開発され量産されていた化学兵器(毒ガス)

サリンと同じタイプの神経ガスなので、鼻水やよだれや冷や汗が止まらなくなり、瞳が点のように小さくなり、腹痛や筋肉のけいれんが生じて意識消失し、多量に浴びた場合には呼吸筋の麻痺や脳の呼吸中枢の障害によって数分で窒息死する(アセチルコリン過剰状態)

化学兵器そのものではなく、毒性のない原材料2種類を容器に詰めておいて、直前に混合して毒物を生成する仕組みだ(2種混合型)

原則として、化学兵器は、それを念頭に置いた診療(や特殊な救急セット)によって救命可能になるよう設計されている(後遺症を残すこともあるが)

毒ガスが近代の戦争に用いられたのは、1915年の第1次世界大戦中に、ドイツ軍がフランス軍の塹壕に対して塩素ガスを新兵器として用いたのが最初

第1次世界大戦に敗北したドイツは巨額の賠償金に苦しみ、食糧不足に陥っていた。

その状況下で、シュレーダーは、食糧増産を助けるための殺虫剤や殺鼠剤の開発を行っていた。1936年に合成されたある有機リン系の物質が、今までにない強い毒性をもっていることを発見したシュレーダーは、そのことをナチス政権下の陸軍省に報告する。その実験結果を聞いた一人が「これは毒性が強すぎるのでタブーだ」といったことから、この物質は「タブン」と名付けられ、神経ガスの最初のものとなった

 

サリンやタブンに続く第3世代として開発されたのが「VXガス」だ。

VXガスは、シラミの駆除に使われていたDDTの代替として、1952年にイギリスで開発された殺虫剤アミトンから派生した。いったん発売された殺虫剤アミトンは、人間の皮膚から吸収されやすく毒性が強すぎたため、すぐに市場から回収された。

だが、ヘビ毒(ヴェノム)と似た新しいタイプの化学兵器としてV剤という名前で秘密裏に研究開発が進められ、その一つとして、1950年代に米国陸軍が実用化したのがVXガスだ。

 

戦場での大量殺人ではなく個人の暗殺に用いられるとは、まさに現代史の闇を感じさせる。

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