歴史を捨てたドイツ

西尾幹二
歴史を捨てたドイツ

ただし、ドイツが強いられた苦しみというのは、日本の比ではなく、その結果、自国の歴史を捨てたということに現われます。ドイツは自国の歴史の連続性を捨てたんです。嘘をついたのですね。ナチスが支配した12年間は歴史の穴で、それ以前にナチスはなく暴力はなく、それ以降にも暴力はないという歴史を作った。つまり、悪魔が支配した、ならず者の集団が支配した12年間はドイツの歴史ではない。それ以前にならず者はいなかったし、それ以降の歴史にもならず者はいないと。ドイツ民族はならず者に集団的に捕縛されたので、自分たちも被害者であり、自分たちも犠牲者であった、と。

 こんな嘘ありますか?しかし、そういう嘘をつく以外にドイツは生きて行くことができなかった。憲法にまでそう謳っている。その恐るべき嘘によってドイツは生き抜きました。ヴァイツゼッカーの演説もそれです。そしてヨーロッパ諸国はドイツを許している。ユダヤ人迫害にはフランスも、スイスも、東欧にも見に覚えがある。それに、ドイツを許さなければやっていけないからですよ。それがEUの実態なんです。

 ではドイツで今何が起こっているかと言ったら、ドイツは自分の歴史を捨てたから、文化がことごとく没落しました。ドイツ哲学はなくなりました。ドイツ音楽も水準がものすごく低い。演奏でも何でも。ドイツ文学も消えました。ドイツの医学もなくなりました。昔日の花は全くないです。

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