首相献金問題 法に抵触する可能性 選挙運動者への報酬提供の疑い

IZA  2011/08/20
首相献金問題 法に抵触する可能性
菅直人首相(64)の資金管理団体が、北朝鮮による日本人拉致事件容疑者の長男(28)が所属する政治団体「市民の党」(酒井剛代表)から派生した政治団体「政権交代をめざす市民の会」に6250万円の政治献金をしていた問題は、菅首相側が政治資金規正法に抵触する可能性も浮かぶ事態に至っている。めざす会の巨額の「人件費」が公職選挙法違反にあたるとの指摘も浮上。民主党全体に根を下ろす献金問題について「捜査で解明すべきだ」との声も上がっている

■「残高マイナス」の謎

 菅首相の資金管理団体「草志会」は2007(平成19)~09年、めざす会に計6250万円を献金。特に07年は4月15日~12月28日に計8回に分け、規正法で定められた上限額の5000万円を献金している。 この07年の献金をめぐり、矛盾が浮かび上がる。収支を日付順に並び替えてみると、草志会が5月8日にめざす会に500万円を支出した段階で、草志会の資金残高がマイナスになることが判明したのだ。その後、5月25日に民主党本部から3000万円を受領するまでは現金が足りない状態が続く。借入金などの記載はない。

元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士は「帳簿上の金額が不足した状態での献金は不可解。不透明な借入金の存在なども考えられ、首相には説明責任が求められる」と話す。

 ■不透明な「人件費」 市民の党、めざす会側にも不可解な点がある。菅首相から巨額の献金を受け取った07年に、めざす会は「人件費」5515万円を計上した。06年は0円だったことから、突然、巨額の人件費が発生した格好だ。 市民の党やめざす会は、「有権者へのはがき送付など独自の選挙ノウハウを持っている」(政界関係者)とされる。07年は参院選と統一地方選が重なった年であることから、多額の人件費は民主党候補陣営に派遣した“運動員”への報酬ではないか、との指摘が出ているのだ。 谷口将紀東大教授(政治学)は「人件費はあくまで、その政治団体のために働いた人に払う報酬。別の団体のために働いていたとなれば、人件費を肩代わりしていたことになる」と説明。候補者側とめざす会側で選挙活動の応援などで合意があった場合、公選法で禁じられている選挙運動者への報酬提供の疑いが浮上するという。 ■解明へ徹底的捜査を また、市民の党系地方議員が、市民の党や民主党議員の国会議員関係政治団体などに毎年多額の献金をしている実態を問題視する声もある。 自民党の「菅首相拉致関係献金疑惑追及プロジェクトチーム」の古屋圭司座長は、地方議員からの献金が最終的に市民の党に流れており、一団体に対する個人献金の年間上限額の150万円を超える形になるのではないかと指摘。「 (民主党の団体を使った)迂回献金に当たるのではないか」との見解を示している。

 一連の疑惑について若狭弁護士は「水面下で何らかの動きがあったと疑わざるを得ないが、違法性を問うことは容易ではない。刑事事件として徹底的に捜査を進めることでしか、疑惑を明らかにすることは困難だろう」としている

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