企業は有能な人を無能化する装置である


人を無能化するメカニズムとは

人は誰でも有能になりたいと願っているが、多くの人は自分はその反対だなと感じているのではないでしょうか?

最初有能だった人が転落していく過程を説明した「ピーターの法則」というのが的を射て分かりやすい。

能力主義では出世によって地位や報酬が上がるので全員が出世したがり、有能な人はどんどん高い地位に上がる。

有能な若者は出世によって無能な管理職になり、会社のポストは無能な人間で埋め尽くされる。

能力主義ではその人が到達できるもっとも難しい仕事をやらされるので、出世によって最も自分に向かない仕事をする羽目になる

例えば最も売り上げが多いセールスマンは売り場から外され、部下を統率する仕事に回されます。

最も優秀なエンジニアは設計や開発から外されてしまい、社外や経理や人事課との交渉をやらされます。

人が無能になるメカニズムは野球を例にすると分かりやすく、どんな選手も最後には無能化します。

小学校の時に天才と呼ばれた野球少年が居たとして、中学高校と進むにつれて難易度が上がっていきます。


甲子園に出場すると県内1位でも通用しない事が良くあり、プロに進むとどんな選手も新人扱いされる。

今まで大威張りだった天才は先輩のパシリをやらされ、プロで成功するとメジャーやWBCなど国際大会に出場します。

三冠王を何度も取った落合選手は日米野球で自分がアメリカでは通用しないのを悟ったそうです。


日本で最高の野球選手でも少し上に上がると通用せず、結局全員が最後には無能化してしまうのです。

仮にメジャーや国際大会で最高の成績を収めても、引退前のイチローや松井は球団のお荷物になっていました。

役場の職員から総理大臣まで日本政府の公務員は全員が無能ですが、こうしたメカニズムが働いているからです。


ジョブズの方法

有能になるためには、或いは有能であり続けるためには『人を無能にするメカニズム』から外れる必要があります。

それは専門性の強化で、平たく言えば自分が得意な事を続け、苦手な事を避ける事です。

アップルの創始者であるジョブズは神格化されているが、最初は普通の学生よりかなり劣っていました。


父はシリア人の過激活動家で捨て子同然に養子に出され、ジョブズ夫妻に育てられたので名字がジョブズです。

生涯父親を憎み会おうとせず、母親にも30歳を過ぎるまで会ったことがなく相当な感情を抱いていたと想像できます。

ジョブズの長所はイケメンで社交的で人を動かすのがうまい事で、技術者として有能だったという逸話はない。


頭は飛びぬけて良かったが、その優秀さは違法に長距離電話を掛ける装置を友人に作らせて金もうけするなどに使われた。
このビジネスモデルはアップル創業につながり、一生涯のジョブズの生き方にまで昇華した。

大学をさぼってインドを放浪したジョブズには就職先が無く、以前バイトをしていたアタリに入社したが、使い物にならなかった。

部外者のウォズニアックに仕事を代わってもらい、ウォズニアックに「給料」を払うというビジネスをした。


その人が最も得意な仕事をさせる

ウォズニアックは優秀な技術者でアップルコンピューターを開発し、初期のアップル製品の殆どを手掛けた。
ウォズニアックは経営はまるでダメで社交的でもなかったため優秀な技術者のままであり、最後は分け前を貰ってアップルから離れた。

ジョブズはイケメンの若手実業家としてアップルにイメージを与え、アップルコンピューターは大成功し今日に至る。


ジョブズのやり方を今のアップルも受け継いでいて、有能な技術者を昇進させて無能な管理職を作るような事はしていない

アップルではそれぞれが製品の専門家であり、某日本企業のように「二段階認証って何ですか」と社長が発言することはない。

日本企業では自動車会社の社長がタイヤ交換できないなどは普通で、IT企業重役がパソコンを使えない事もある。


モーレツ営業マンを営業成績が良いからという理由で出世させたり、親会社や銀行から天下りして上司になるためです。

銀行から金を借りると銀行から役員や重役が送り込まれるが、彼らは製品知識などないので質問にも答えられない。

こうして社内の全員が無能化したのが旧東芝や旧シャープで、同じような例は枚挙にいとまがない


得意分野から外して苦手な仕事をやらせる、という悪習がある限り社員の無能化は避けられないのです