「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和2年(2020)10月10日(土曜日)
通巻第6666号 <前日発行>
書評
社会の矛盾に素朴な疑問を抱いて一直線に政治を目ざす愛国女子
こういうタイプの新世代が増えると、未来に明るい展望が拓ける
小林ゆみ『君が代を歌えなかった私が、政治を目指した理由』(ワック)
北海道は美唄市生まれ。日教組がしぶとく教育現場を支配するところ。歴史、道徳、国語など教育が荒廃している。君が代にちゃんと歌詞があることを知らずに、サッカーの歌かと思っていた筆者は、偏向教育の現場で多くの矛盾に気がつき始めた。
佐藤優氏の影響を受けて外国語大学をめざし、スウェーデン語を選択した。
ムーミンに影響されたというあたり、現代っ子である。使われる用語も、評者の世代が理解できない新語まで飛び出す。
小林さんは最初、銀行に勤めるが、日々空しく、一念発起して自民党議員秘書のインターン生活。そして突如、杉並区議に立候補して上位当選、二期目は無所属ながら二位当選と、サイレント・マジョリティを引きつけた。
こういう女性議員が誕生したことは、悦ばしい現象ではないか。
参議院でも松川るい女史、衆議院では稲田朋美、杉田水脈女史。地方議員には無数の女性議員が男性顔負けの活躍をしている。
これまで女性議員の枠に留まらず、しかも愛国的思想に傾いているのが最近の傾向である。
なぜか。女性は本能でものごとを考えるからだ。屁理屈を云わず、自然に反応するからだ。正義や道徳に悖る行為や発言をなす議員を、その本能が許さないのだ。
男性はどちらかと云えば、論理的にものごとを考えて、行動するようになる。そうなると戦士には向かない。社会が衰退するのは男性の女性化である。とくに現代は「草食系」が増えて、女性に圧倒されるのだ。
古来より、女性は強い男性に憧れ、豪腕な戦士の子を産んだ。社会が健全だったときに大原則である。これを忘れた欧州は、滅びゆくしかないが、日本の少子高齢化社会も、日本の衰滅に繋がりかねない。
北海道ではアイヌ問題が燃え、背後に左翼の組織運動が連携した政治工作の結果だが、先住民族として認めた。筆者の小林ゆみ氏は美唄市にアイヌが殆ど居なかった経験から、それならアイヌの前にいた人々をどう扱うのかと初歩的な疑問を抱く。
本書はまさに木訥にして素朴、初歩的な疑問から、自ら勉学して政治を志すいたる三十年余の人生を語るのである。
社会の矛盾に素朴な疑問を抱き、一直線に政治を目ざす愛国女子が輩出中である。こういうタイプの新世代が増えると、未来に明るい展望が拓ける