弾劾裁判 証人喚問となったら波乱万丈の長期戦となる

AC通信 No.772 Andy Chang (2020/01/28)
波瀾万丈の弾劾裁判

トランプ大統領の弾劾裁判は第二週目に入ってトランプ弁護士団の反対弁論になった。先週の第一階段は弾劾側の弁論で既に分かっている事を繰り返しながらさらに臆測や嘘を繰り返す一日8時間の演説が3日も続き、新しい発見もないつまらないものだった。呆れたことにシフ議員は「トランプを選挙に出させないために上院議員は彼を弾劾すべきだ」と述べたのである。土曜日の弁護団側の反論は簡単明瞭でわかりやすく、たった2時間で弾劾側の弁論を論破したのでメディアも喝采を惜しまなかった。

月曜日になって弁護団の反対弁論が始まった。弁護団は与えられた24時間を2日16時間でで切り上げると言われていた。共和党側はトランプ弁護団の反論が終われば次の階段で上院議員の質問を16時間で切り上げ、票決で裁判を終結させるつもりだった。

ところが日曜日26日夜にニューヨークタイムスが、ジョン・ボルトン元大統領補佐官(国家安全保障担当)の追想録の原稿を入手し、その中にトランプ大統領が「ウクライナがバイデンと民主党の疑惑調査に協力するまでは4億ドルの軍事援助金を保留する」と述べたと発表したので、民主党側は大喜びでボルトンを証人に喚問すると言い出し、裁判が長引く可能性が出て来た。

共和党側にも証人喚問に賛成する議員がいて、中でもロムニー議員は「これでボルトン補佐官の証言を聞く重要性が明らかになった」と述べた。53人の共和党議員のうち証人喚問に興味ある議員は4人と言われているが、3人が喚問に賛成すれば裁判での投票は50対50となる。もしも50対50になればロバーツ裁判長に最終決定権があるかどうかはまだ討論されていない。

月曜日のトランプ弁護士団の論述は素晴らしかった。予定された8時間の弁論は最初にケン・スター元特別検察官が下院の弾劾案が違法行為であることを実証し、続いて弁護士団が代わる代わる弾劾案の違法を論破したあと最後にアラン・ダーシュイッツ憲法学者(民主党員)が大統領弾劾案の憲法の基礎を説明して今回の下院のトランプ弾劾の違法性を糾弾した。彼の主張が上院裁判で受け入れられたら弾劾案は否決される。

スター元特別検察官は弾劾調査で証人喚問に必要な委員の票決を無視して独断で証人を喚問したのは違法と述べた。しかもシフ委員長はトランプの弁護士の参加を拒否し、共和党委員の証人喚問要求も拒否したと弾劾の違法性を糾弾した。続いてペロシ議長が司法委員会の調査に先立って「弾劾案の作成」を命じた違法を糾弾した。ナドラー司法委員長は調査を2日で切り上げ、ペロシは総会の票決もなく弾劾案を決定した。選挙のために弾劾案をでっち上げたのである。弾劾は民主党と共和党の賛成が必要なのに票決で共和党は一人も賛成しなかった。しかもトランプ側の参与を拒否しながらトランプの資料拒否を「国会に非協力」と弾劾した。結論として弾劾案の「権力濫用」と「国会非協力」は違法であると述べた。スター元検察官の論述は理路整然でわかりやす名演説だった。

ダーシュイッツ憲法学者は、アメリカの憲法では大統領罷免は犯罪証拠が明らかな時に限るとし、憲法では大統領を弾劾するよりも勝手な弾劾から大統領を守る法律で、政党闘争や恣意、臆測で大統領を弾劾する行為を防ぐために作られたものであると説明した。そして今回の下院の弾劾案は憲法で規定した弾劾の条件に当たらないし、証拠不足、臆測や又聞きの政党闘争であるとし、下院の政治闘争のでっち上げ弾劾案は却下すべきと述べた。

ダーシュイッツはNYタイムスのボルトン記事にも触れ、大統領が条件付きで取り引きを行う事、つまりQuid Pro Quoは国際関係において日常茶飯事で権力濫用ではない。たとえトランプが軍事援助をバイデンの汚職調査の条件付きとしても弾劾できない。例えば国会が「ゴランハイツの建設中止を条件にしたイスラエルへの軍事援助」は明らかなQuid Pro Quoだったと述べた。

トランプ弁護団の反論は28日で終わり、29日と30日は議員の質問と応答が16時間予定され、31日から提案と票決に入る。共和党側は弾劾案を却下する予定だがボルトン記事のため民主党側が証人喚問を提案し、共和党側の4人が賛成すれば裁判は長引く。弾劾案が却下されればでトランプ裁判は金曜日で終わるが証人喚問となったら波乱万丈の長期戦となる

証人喚問が議決されたら民主党側は真っ先にボルトンを喚問するが、ダーシュイッツが述べたように「見返りを要求したことが有罪証拠となる可能性はない」し、66人がトランプを弾劾する可能性はほとんどない。しかもボルトンの供述が事実としてもトランプはウクライナへの援助金を保留しなかった。たとえトランプとボルトンに「見返り条件で援助金を保留するつもり」と言ったのが事実としても実際に援助金を保留しなかったら罪になるはずがない。ダーシュイッツが言ったように「見返り要求で大統領の罷免はできない」。

証人喚問が可能となれば裁判は本当に波瀾万丈となる。共和党はハンター・バイデンとジョーバイデン、密告者、シフ議員と彼の部下などを喚問するから民主党に不利だ。証人を喚問するのは上院議員の全員の投票で決まる。共和党と民主党は53対47だから共和党側の提出する証人は賛成多数で通るが民主党が出した証人は却下されるかもしれない。裁判の行く先は金曜日になったらわかる。

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« ソフトバンク... 優秀なベトナ... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。