最近「道草」というハンドルでのコメントが登場するようになり、懐かしい話を聞かせていただいている.コメントでのやり取りや道草さんのブログ訪れたり、また地元の先輩の話を聞いて分かったことは、この道草さんとは、上野道雄さんといい、その「冬の実」という随筆作品で第51回日本随筆家協会賞を受賞された随筆家である.
氏の名に始めて触れたのは「北桑時報」という北桑田郡(京北町と美山町)で発行されている雑誌に投稿されていた随筆の中に、「欽ちゃん」という名が出て来たのを見つけた時であるが、実は小生にも「欽ちゃん」という従兄弟が宇津にいるので目にとまったのである(作品に登場する欽ちゃんとは違うが、、). という訳で職場にあった北桑時報のバックナンバーを漁り、「冬の実」「栃本八幡宮の椿」「今中の井戸」等々、氏が投稿された作品を読ませていただいた.終戦直後にここ京北の宇津地区に疎開して来られ少年時代を過ごされた様子などを読んでいると、自分の少年時代を思い出し懐かしい気持ちいっぱいになる.少年の心理や行動がその風景描写の素晴らしさに包まれて何か記録ビデオを観ている、あるときは白黒撮影の、ある時は鮮やかなカラー撮影の、といった気分になる.
期せずしてその頃ブログを通じてお遇いした(実物は未だである( ^_')).何回かのやり取りがあったのであるが、ある日この「冬の実」が著者から我が家へ送られてきた.
この本の「はじめに」によると; (引用部分は<< >>で表示しました)
氏は昭和13年西陣で生まれたあと、ここ京北の宇津に疎開、<<まったく環境の異なる世界で少年時代を過ごし>>宇津小学校から周山中学校で学ばれる.<<少年期の後半から青年期を、これも近隣の口丹波の田舎で過ご>>され、<<やがて結婚と同時に、現在の市内の住居へ移>>られたとのこと.
そして随筆を書き始めたのは、<<そうした、変転の多かった私の少年時代の貴重な体験を、二人の娘達に伝えてやりたい.そんな動機で、私は随筆を書くことを始めた.60歳のときである.>>と説明されている.
この本には38編の随筆が収められているが、そのテーマは著者の成長過程の歴史順に並べられているようである.小生のお気に入りはやはり「冬の実」と「夏椿の下に」(^.^)何れも映画を見ているような気になってしまう.でもやっぱりその小学生時代を題材にされた数々の作品に魅せられます.著者自身<私は、いまだに小学校や中学校のころをうろついている.いずれは、次の段階に進んで行ければとの願いを持っているのにも拘わらず、果たしてどうなるのか.>と著の「はじめに」で書いておられますが、個人的にはそのまま少年時代に留まって、もっともっとそのころの事を書いてくださいよ~、と言いたい気分である.少年時代を題材にされた作品にはじ~んと来るものがありますね.活き活きしている.
風景描写で好きなところを一つ: 「水しぶき」の冒頭;
太陽が高くなるにつれ油蝉の鳴き声がいちだんと強くなる.障子を開け放った縁側から、青々とした水田が視野いっぱいに広がっていた.風が止まり、長く伸びた稲穂はまるで動かない.田圃は穏やかな段差を見せて扇形を描いている.その緑一色の畦道に赤紫色の野薊が転々と色を添えていた.
柏木亜希さんは、この本のカバーにある「選評」で;
-----------------------
「冬の実」(上野道雄)は、少年期の思いで鳥を捕る仕掛けにからめて書いている.
風景描写が素晴らしい.余計な力が入っておらず、シンプルである.作者の語るままに読者の脳裏にも、風景が見えてくる達者な筆使いだ.
それに増して、鳥の仕掛けをつくるのを手伝ってくれたさぶやんという旧友の描写が、白雪の上の南天の赤のように効いている.2,3行の描写の中で、さぶやんのその後の生活や性質までが、何となく想像される.少年期の各々の一途な思いが交わる中で、里山の静けさと、はかなく亡くなったさぶやんの命のメロディーが、きこえてくる.それを奏でる上野氏の筆は自由で、並々ならぬ奥深さを感じた.
----------------------
と評されている.
著者のお歳は小生の7つ年上であるが、少年時代過ごされた環境はそう違っていない.その時代を彷彿とさせてくれるこういった素晴らしい著作に出会えて幸せ気分であり、これは是非皆さんにもこの著作を知っていただき、読んでいただけたら、との思いでここで紹介させていただきました.
この本は;
「冬の実」
著 者:上野道雄
発行者:原島史郎
発行所:日本随筆家協会
現在名随筆叢書 72
2005年9月 5日 印刷
2005年9月16日 発行
ISBN4-88933-299-5 C0095
1,500+税
なお、ブログも開設されています.このブログにもブックマークさせて頂いていますので訪問してみて下さい.
こういった発見・交流ができるのもインターネットのおかげです(^.^)
道草さん、これからもこのブログに楽しいコメントを書いて、我が記事に色づけして下さいませm(. .)m
氏の名に始めて触れたのは「北桑時報」という北桑田郡(京北町と美山町)で発行されている雑誌に投稿されていた随筆の中に、「欽ちゃん」という名が出て来たのを見つけた時であるが、実は小生にも「欽ちゃん」という従兄弟が宇津にいるので目にとまったのである(作品に登場する欽ちゃんとは違うが、、). という訳で職場にあった北桑時報のバックナンバーを漁り、「冬の実」「栃本八幡宮の椿」「今中の井戸」等々、氏が投稿された作品を読ませていただいた.終戦直後にここ京北の宇津地区に疎開して来られ少年時代を過ごされた様子などを読んでいると、自分の少年時代を思い出し懐かしい気持ちいっぱいになる.少年の心理や行動がその風景描写の素晴らしさに包まれて何か記録ビデオを観ている、あるときは白黒撮影の、ある時は鮮やかなカラー撮影の、といった気分になる.
期せずしてその頃ブログを通じてお遇いした(実物は未だである( ^_')).何回かのやり取りがあったのであるが、ある日この「冬の実」が著者から我が家へ送られてきた.
この本の「はじめに」によると; (引用部分は<< >>で表示しました)
氏は昭和13年西陣で生まれたあと、ここ京北の宇津に疎開、<<まったく環境の異なる世界で少年時代を過ごし>>宇津小学校から周山中学校で学ばれる.<<少年期の後半から青年期を、これも近隣の口丹波の田舎で過ご>>され、<<やがて結婚と同時に、現在の市内の住居へ移>>られたとのこと.
そして随筆を書き始めたのは、<<そうした、変転の多かった私の少年時代の貴重な体験を、二人の娘達に伝えてやりたい.そんな動機で、私は随筆を書くことを始めた.60歳のときである.>>と説明されている.
この本には38編の随筆が収められているが、そのテーマは著者の成長過程の歴史順に並べられているようである.小生のお気に入りはやはり「冬の実」と「夏椿の下に」(^.^)何れも映画を見ているような気になってしまう.でもやっぱりその小学生時代を題材にされた数々の作品に魅せられます.著者自身<私は、いまだに小学校や中学校のころをうろついている.いずれは、次の段階に進んで行ければとの願いを持っているのにも拘わらず、果たしてどうなるのか.>と著の「はじめに」で書いておられますが、個人的にはそのまま少年時代に留まって、もっともっとそのころの事を書いてくださいよ~、と言いたい気分である.少年時代を題材にされた作品にはじ~んと来るものがありますね.活き活きしている.
風景描写で好きなところを一つ: 「水しぶき」の冒頭;
太陽が高くなるにつれ油蝉の鳴き声がいちだんと強くなる.障子を開け放った縁側から、青々とした水田が視野いっぱいに広がっていた.風が止まり、長く伸びた稲穂はまるで動かない.田圃は穏やかな段差を見せて扇形を描いている.その緑一色の畦道に赤紫色の野薊が転々と色を添えていた.
柏木亜希さんは、この本のカバーにある「選評」で;
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「冬の実」(上野道雄)は、少年期の思いで鳥を捕る仕掛けにからめて書いている.
風景描写が素晴らしい.余計な力が入っておらず、シンプルである.作者の語るままに読者の脳裏にも、風景が見えてくる達者な筆使いだ.
それに増して、鳥の仕掛けをつくるのを手伝ってくれたさぶやんという旧友の描写が、白雪の上の南天の赤のように効いている.2,3行の描写の中で、さぶやんのその後の生活や性質までが、何となく想像される.少年期の各々の一途な思いが交わる中で、里山の静けさと、はかなく亡くなったさぶやんの命のメロディーが、きこえてくる.それを奏でる上野氏の筆は自由で、並々ならぬ奥深さを感じた.
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と評されている.
著者のお歳は小生の7つ年上であるが、少年時代過ごされた環境はそう違っていない.その時代を彷彿とさせてくれるこういった素晴らしい著作に出会えて幸せ気分であり、これは是非皆さんにもこの著作を知っていただき、読んでいただけたら、との思いでここで紹介させていただきました.
この本は;
「冬の実」
著 者:上野道雄
発行者:原島史郎
発行所:日本随筆家協会
現在名随筆叢書 72
2005年9月 5日 印刷
2005年9月16日 発行
ISBN4-88933-299-5 C0095
1,500+税
なお、ブログも開設されています.このブログにもブックマークさせて頂いていますので訪問してみて下さい.
こういった発見・交流ができるのもインターネットのおかげです(^.^)
道草さん、これからもこのブログに楽しいコメントを書いて、我が記事に色づけして下さいませm(. .)m
私の小学校・中学校時代は、もう50年以上も昔のことになります。どんな時代でも良い事もあれば悪い事もあって、どの時期が人間にとって好適なのか。その結論を出せるはずもありません。
ただ、私の少年時代は総じて貧しくはありましたが、豊かな自然や暖かな人の情に満ちていたことは、まぎれもない事実です。学校では、校内暴力やいじめや登校拒否など、そんな言葉さえもありませんでした。現在より生徒数は多くても、受験戦争などとはまるで無関係な日々でした。
今、子どもの数は減りつつあり、母校の小学校は廃校になってしまいました。中学校は、これからどうなのでしょう。そんな時代であればこそ、人と人との繋がりは一層大切になるはずです。いっとき、量へ走った時代は、これからは質へと目を向ける社会にならざるを得ません。
そんな時にあって、太平洋戦争を挟んだ日本の一地域で過ごした少年の生活がどの様なものであったのか。拙い内容ではありますが、年齢を問わずそれらを読んだ方々に何かを感じ取ってもらえれば嬉しく思います。
小川は姿を変えメダカの姿は見えません、ホタルもあの頃に比べると少なくなりました.最近はだんだん以前に戻りつつあるようですが.でもまだまだあの頃の自然は残っていると思っています.ページを開くだけでなく、また是非現地を訪れてみて下さい.アッシー君になりますよ( ^_')
ちょっと浅く勉強したことをアップしているだけのブログですが、ぜひお読みいただき、いろいろとコメントして、間違いを正していただいたり補足頂けたら幸せです.
笹舟は僕も作って遊んだ思い出があります(^.^)
実に素晴らしい心の故郷を書き出されているのに感心しました。
昨年小学校のクラス会が56年振りにありましたが、恩師が健在ですので、この本をプレゼントします。
上野さんの随筆を読んでいると少年時代にもどれますね.
あ、そうだ僕たちもこの5月に小学校の同窓会があるんだった.僕も恩師にプレゼントしようかな.