ふと気付くと小児科の先生が揃い始めてました
まだ4時、出勤の時間ではありません
もしかして、ゆみの為に?
「お風呂入れませんか?」と看護師さんが声をかけてきました
「はい!」笑顔になれました
ゆみ父と2人、このお風呂はゆみが転院してから4ヵ月、入院していた時に使っていたお風呂です
「懐かしいね、ゆみ、大きくなったよね」と涙と一緒に話しながら、お湯に浸けて、髪を洗って・・・
するとうんちが少しお湯に浮いてました
さっきオムツにも付いてた、鼻も詰めて耳も詰めてる、そうやね、死んだもんね・・・
身体を拭きながらもうんちは少しづつ出てました
ティッシュで拭きながら新しいオムツを着けようと両足をぐいっと持ちあげた時、ゆみの肛門が目に飛び込んできた。
それは小さなお尻には不釣り合いな、ほら穴のように暗い暗い大きな穴。
私はこれを見てさーっと気持ちが覚めるのが分かった
こんな身体ではもう生きてけないよね・・・
ゆみはまた観察室で新しい服に着替えて髪を乾かしてもらっている間、
私は病室に戻りお家に帰る為に荷物を片づけ始めた
こんなことになるなんて、思ってもみなかった
また数週間入院して、少し身体が弱ったとしても退院してまたゆっくり体力を戻していく、そう思ってた
涙が溢れてきた
泣きながら片づけた、どんどん、片づけた、早く家に帰してあげたかった
ゆみ父がゆみを抱いて戻って来た
「あ!」ゆみを見て驚きました
とても穏やかな安心した顔になっていたから。
口元や鼻は血が付いて痛々しかったけど顔はとてもいい顔している。
「顔が変わったー!やっぱりお父さんに抱っこして貰いたかったんやね」ゆみ父は嬉しそうに笑い、泣いた。
少しして、主治医の先生と看護師さんが挨拶に来ました。
先生が「ゆみちゃん」と声をかけると今度はとっても優しい、ふわぁっとした顔に。
「わぁ、すごい、ゆみちゃん先生に会いたかったんやね」
先生は悔んでいるようでした、ゆみと私達に謝りました。
でも先生、ゆみはこんなにも先生に会えて喜んでいる、ありがとうって言ってるんやと思う。
私達も先ほどと同じように感謝の言葉を伝えました。
先生に出会えて、先生にきちんと診てもらえて、最期も先生で、望んだ通り。
先生が居てくれた事でどんなに救われたか。
この後ゆみ父がまとめた荷物を車に積む為に今度は私がゆみを抱っこ、
するとゆみは眠たそうな顔になりました
「そっか、眠りたかったん、そうやね、ずっとしんどくて眠れなかったもんね、眠りたかったんやね」
ゆみの頬に寄せてまた泣きました。
そしていつものように頭を反らせて戻してと、ゆみが眠る動きをさせてあげました。
するとより深く眠っていくよう、たまらなく可愛かった。
戻って来たゆみ父もゆみを見て頷いて泣きました。
そして病室を出ました。時計を見ると5時10分、今回入院の際に救急からこの病棟へ上がって来た時も同じ時刻。
へぇ・・・と偶然に少し頬が緩みながら
「ここにもう入院で来ることはないなぁ」それはちょっと寂しかった。
廊下を歩いて行くと先生達が勢ぞろいで出てきてくれました、
やっぱりゆみの訃報の連絡で集まってくれたみたいです。
主治医の先生のおかげかなぁ・・・
結局、私達の車が見えなくなるまで正面玄関から見送ってくれました。
良かったね、ゆみちゃん。ゆみちゃんは幸せものだよ、こんな風に手厚く送ってくれてね。
外はもう明るく、爽やかな風が吹いてました
家に着いて空を見上げると白い月が高く高くありました
忘れない 私はこの一日を、この空気を忘れない
「ただいま、ね」と玄関の扉をあけました
ゆみはただ眠ってました
口元が少し笑ってるようでした