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ま、おいおい、適当に...

野田版研辰

2008年02月25日 | IXY700

初演のときからずっと気になっていたけど、ずっと見ることができなかった『野田版 研辰の討たれ』がシネマ歌舞伎として上映されることとなり、ちょっと観にいってきました。

http://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/togitatsu/index.html

これは木村錦花原作の歌舞伎狂言『研辰の討たれ』をあの野田秀樹が新しい視点で書き直し、演出したものです。

演出はもちろん、舞台装置もまんま夢の遊眠社ですね。役者の個性を上手に引き出し、でもそれを逆手にとる。歌舞伎という伝統芸を現代風にアレンジしてひねくり回す。勘三郎はともかく、福助の素っ頓狂ぶりとか、三津五郎がうひょひょひょって小躍りするところなんざちょっと思いつかないし、だんまりがいつのまにかウェストサイドストーリーみたくなったりとか、ね。そうやって、いつの間にか野田ワールドに魅せられてました。でも、歌舞伎。紛れもなく歌舞伎。そのむかし八代目幸四郎(今の幸四郎のお父さん、初代白鴎)が「歌舞伎役者が演じればそれは歌舞伎です」と言ったけど、なんとなくわかる気がする。

テーマは「無責任な大衆」ってところでしょうか。赤穂浪士事件ですっかり美化された仇討ちに、勝手にあこがれ関わろうとする余り、討つ側の辰次に言い寄る、ところが辰次が実は仇討ちされる側だとわかるや今度は辰次が討たれることを望む。辰次の生への執着を目の当たりにすると翻って助けてやれと言い出す。。。

現代にも通じるこの普遍的で、どうにかしようにもどうしようもないテーマ。野田秀樹が数多い歌舞伎の演し物のなかで『研辰』を選らんだ理由はそこらへんにあるのかもしれません。

いいもん、観させていただきました。次は時間を作って『鼠小僧』にいきたいと企んでいます。