「おばあちゃんが19歳で嫁いできた時の婚礼布団です。生きていれば120歳になるので101年も前のものですが、打ち直し出来そうですか?」という依頼がありました。
こちらの婚礼布団は、近所の元農家のお客様が蔵を整理されていた時に出てきたもので、少々のカビ臭さや使用感はあるものの奇跡的に保管状態は良好で、そのまま歴史の資料として保存しておきたくなるような婚礼布団でした。
今回打ち直しを依頼されたお客様の話しによると、婚礼布団の格子の側生地も中の綿も、全ておばあちゃんの実家で作られたものだそうです。
側生地は手織りの絹で、全ての縫製はもちろん手縫いです。中綿はヘタってはいますが101年前のものとは思えないくらい綺麗な状態を保っていました。
布団の綴じ糸は、当時主流だった麻糸が使われています。麻糸は綿糸よりも丈夫ですので、101年経っても緩むこと無くしっかり綴じてありました。
気になる布団のサイズは、側寸法で掛け布団170cm×200cm、敷き布団105cm×175cmでしたが、一番驚いたのは掛け布団の中わたが9.3kgも入っていた事です。今どきのダブルの敷き布団でさえ7kgちょっとしか入れませんので、現代ではとても考えられない綿の量です。この布団から当時の寝具事情や、住宅や暖房事情などが窺えます。
側生地を剥いて中綿を出すと綿の周りには満遍なく真綿が引いてありました。現代の製綿技術で作られた綿布団には真綿はほとんど使いませんが、この時代の綿布団は中綿が切れたり型崩れしないように、必ずと言っていいほど真綿が引いてあります。
例え101年前の綿でも状態さえ良ければ、打ち直しでこんなにふかふかに再生します。少々のカビ臭さも、打ち直しと同時にオゾン消臭をしますので殆ど気にならなくなります。
逆に今どきの輸入綿よりもコシがありましたので、新品のような敷き布団に仕上がりました。
これまでも戦前に使われていたという布団の打ち直しは時々出ていましたが、明確に101年前と年代が分かっている布団が出たのは今回が初めてでした。仕事とはいえ、とても貴重な体験をさせて頂きました。ありがとうございました。
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ふとんのマスダ
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