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<<下らない夜のお話>> ラーメン的に必然的な味的に顔的に

2010-07-01 09:29:20 | 日記
男はすぐに飽きてしまう。またしても事業に飽きてしまう。そしてラーメン屋は必然的に始まる。
男がラーメン屋を始めたいと思ったのは、ある人間に興味を持ったからだった。Q君とでもしておこうか。彼は男の会社でアルバイトをしていた。将来の夢は自分のラーメン屋を開くことだという。Q君にカルボナーラを作ってもらって食べた男は、Q君の料理の才能を確信した。それまで食べたどの店のパスタよりもうまかった。だがそれよりも何よりも、そのうまさにはQ君の人柄が関係しているように思われた。同じ味のパスタでも、気難しい人が茹でたパスタは気難しい味になるし、朗らかな性格の人が茹でたパスタは朗らかな味で、食べると楽しい味がするものだ。Q君は決してモテ顔ではなかったが、彼の顔は何と表現しようか、とにかくおいしそうな顔をしていた。
男はQ君に出資して、一緒にラーメン屋を始めた。でも、男はまたすぐにやめてしまった。店は今でも繁盛している。
Q君は女性にモテるようなタイプではなかったし、それはQ君自身も承知していた。だが、もし一緒に苦労したいのであれば、彼のようなタイプの男性がいいだろう。苦労を苦労と感じさせないようなやさしい力を彼は持っている。彼と一緒にいれば、苦労していても女性はきっと楽しい気分でいられるだろう。
男は基本的に気難しい性格だった。お金があったとしても、一緒にいた女性は決して幸福ではなかった。
「君は決してナンバーワンではないけれど、僕にとってはオンリーワンだ」
男は何人もの女性に対してそう言ったが、男はナンバーワンの女性にもオンリーワンの女性にも巡り会えなかった。
「僕はずっと迷ってきた。やっと守るべきものを見つけたんだ。君だ」
男は何人もの女性に対してそう言ったが、守るべきものなどどこにも見出せなかった。

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