男は疲れていた。
「お前だけじゃないよ、疲れているのは」男の中のもう一人が言った。
「ただのリリシズムさ」男は声に言い返した。
(そう言えば、ネットカフェで1000円以上使ったことないな)と男は思った。
久しぶりに入ったネットカフェのドリンクバーで、男は下らないカクテル遊びをしていた。オレンジジュースにカルピスソーダを入れてみたり、グーレープジュースにリアルゴールドを混ぜてみたり。
横では一人の若者が精算を済ませて出ていくところだった。若者の支払った代金は2千円だった。その店の料金は3時間で600円だった。男は複雑なものを感じていた。
通りを歩いていて男は声を掛けられた。
「あなたは神を信じますか?」
男は答えた。
「神は信じるものではない、感じるものだ」「神はx²+1=0の解だ」「x²+1=0という式が菩薩でその式の解が如来だ」「神は気配だ。気配を求めたり気配に促されたりして人は高い山に登ったり、ヨットで太平洋を横断したりする」「たまには恋をしたりもする」
声を掛けた方が言った。
「今日は貴重なお話を伺いました。すぐそこで集会をやっているので是非いらしてください」
「そう?じゃあ、今度気が向いたら」
声を掛けた方はチラシを渡した。男はチラシを受け取って立ち去った。チラシの下の方に太字で『The last day is beginning』とあった。帰る途中、コンビニのゴミ箱にチラシを捨てた。
帰ってから部屋のテレビをつけると「天国で糞でも垂れてな」と言って、一人のいかしたガンマンがとどめの一発をブッ放つところだった。天国にも糞はあるのだな、と男は思った。じゃあ、蠅もいるんだろうな。蠅にはかなわん、蠅は苦手だ。