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<<下らない夜のお話>> M首相と目隠しなしの銃殺

2010-07-01 09:30:39 | 日記
M首相のことを男はよく思い出す。文部大臣などを歴任してから、日本の首相になった。「日本は天皇を中心とした神の国である」という発言でも有名になった。神が中心になることはあるだろうが、人間である天皇が中心となることなどあるのかしらん、と男は思ったものだ。その発言が出た当時、日本のマスコミはあまりにも無批判だったので、男は知らないうちに日本語の遣い方が変わってしまったのかと不安になった。仮にもM氏は元文部大臣だったのだから。
当時、男の知り合いの中に、政治心情が右寄りの人がいた。一緒に食事をしている時に、その人が粋がってこう言った。
「日本は結局、天皇を中心とした神の国だよね」
男自身はノンポリだったが、それを聞くと男はなぜか不愉快な気分になるのだった。
その人の口からは、度々中国や朝鮮に対する批判も聞かれたが、元々天皇は大陸からやってきた渡来人ではなかったのか?百済王との繋がりを、平成天皇自身も言っている。日本人は頭がいいとか文化の水準が高いとか多くの人が言うけれど、一体どこからが日本人でどこからがそうでないのか。中国や朝鮮を批判し、日本人の優位性を説いて気持ち良くなれるのであれば、男もそうしていたかった。
天皇を敬うとは、一体どういう意味なのか。そもそも天皇自身は、天皇をやりたくてやっているのだろうか。男には天皇が自分の人生を嫌々引き延ばし、引き延ばされているようにしか思えなかった。職業選択の自由さえない。無理やり天皇をやらされて、気の毒としか思えなかった。そのことを友人に聞いてみた。
「本当に天皇を敬ってるのなら、代わりに天皇やってあげたら」
「ああ、やるよ。もちろん」
本気だろうか。今の世の中に、天皇になりたい奴などいるのかしらん。
人生には二種類ある。目隠しされて銃殺される人生と、目隠しなしで銃殺される人生。男には、少なくとも自分が銃殺されかかっていることが分かっていた。しかし、どうにも目隠しが邪魔だった。



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