田んぼが辺りに広がる閑静なコンビニ、そのゴミ箱の前の車止めブロック、白髪交じりの化粧っ気のない御婦人一人、座ってポテトチップス食べてる。馴染まない光景。私はそれを車から二十分くらい見ていた。彼女はポテトチップスを一本一本愛しむように食べているのだった。その一袋を食べ切ってしまえばもう明日食べる物はない、と想像せずに居れない。夕方仕事帰りの客達が、何人も店を出たり入ったり。当たり前の光景の中で、その御婦人だけ明らかに浮いているのだ。私が断層崩壊を起こし始めている。世界は溶解し始める。私は車から降りる。
「すいません」私は彼女に尋ねる。「ハッ、ハイ」彼女は普通に答えた。「ここで何をしているんですか」私はなるべく親切な人に見えるように聞きたかったが、少し角が立って聞こえたかもしれない。「イエ、何もしてないです」ひどく恥ずかしそうで、彼女の全身から嫌悪感が滲み出ていた。気まずい。この状況は非常にリスキーだ。だが、さらに聞く。「この辺の人ですか?」「はい」失礼かと思ったが、大福をポケットから出して聞いてみた。「これ食べますか?」「イ、イイエ」彼女はろくに大福の方は見ていなかったし、言葉から感情の揺れを読み解こうとしたが、私にはその能力はなかった。彼女の自転車の籠に大福を放り込んで、サッサと帰ってしまえばよかったものを。
五分程して彼女は自転車で田舎道をゆっくりこいで行き、私も車で帰路に着いた。
明日あの時間にもう一度行かなければ
「すいません」私は彼女に尋ねる。「ハッ、ハイ」彼女は普通に答えた。「ここで何をしているんですか」私はなるべく親切な人に見えるように聞きたかったが、少し角が立って聞こえたかもしれない。「イエ、何もしてないです」ひどく恥ずかしそうで、彼女の全身から嫌悪感が滲み出ていた。気まずい。この状況は非常にリスキーだ。だが、さらに聞く。「この辺の人ですか?」「はい」失礼かと思ったが、大福をポケットから出して聞いてみた。「これ食べますか?」「イ、イイエ」彼女はろくに大福の方は見ていなかったし、言葉から感情の揺れを読み解こうとしたが、私にはその能力はなかった。彼女の自転車の籠に大福を放り込んで、サッサと帰ってしまえばよかったものを。
五分程して彼女は自転車で田舎道をゆっくりこいで行き、私も車で帰路に着いた。
明日あの時間にもう一度行かなければ