『風にのってきたメアリー・ポピンズ』をはじめ、
一連のシリーズを書いたパメラ・リンドン・トラヴァースは、
1964年に封切られたディズニーのミュージカル映画『メリー・ポピンズ』を
気に入ってはいなかった。
『メリー・ポピンズ』の映画化は、
もともとウォルト・ディズニーが娘の愛読書を読んで、魅了されたことによる。
1944年の話だそうだ。
以来20年映画化の企画を温めて、
1963年にやっとトラヴァースを説き伏せ、映画化を実現した。
なにしろ作者のトラヴァースは
「私の物語がハリウッドの軽薄さで台無しにされてしまう」
「アニメーションはダメ。ミュージカルなんて論外よ!」と言い放っていた。
そのあたりは映画『ウォルト・ディズニーの約束』に描かれていた通り。
『メリー・ポピンズ』が映画化され、大成功を収めた後でも、
1980年代のジョナサン・コットによるインタビューのなかで、こんな不満を述べている。
(『子どもの本の8人』ジョナサン・コット著/晶文社)
(メアリー・ポピンズはの恋人は)
いずれにしてもマッチ売りのバートじゃないことはたしかね。
彼はおまけの登場人物なのよ。
それにメアリー・ポピンズのいろいろの面をきわ立たせるために出てくるのであって、
彼女に恋するためではまったくないのよ。
メアリー・ポピンズが煙突掃除と屋根の上でカンカン踊りみたいなのを踊るとき、
スカートが舞い上がって下着がすっかり見えてしまうのよ。
ええ、もちろん、メアリー・ポピンズがカンカン踊りを踊るのはかまわないわよ。
でも彼女のスカートはぜったいお行儀をわきまえているはずだわ。
ご主人様にそむくようなまねはしませんよ。
ね、そうでしょ?
心の中をやたらに見せないメアリー・ポピンズが
人前でペチコートを見せたりするもんですか。
彼女はそんなに安っぽくはありませんよ!
けっこう手厳しいでしょ?
さてさて、今回50数年ぶりに続編が公開された
『メリー・ポピンズ リターンズ』を
もし天国のトラヴァースが見たら
なんと言うでしょうね。
たぶん、もう見てると思うけど。
撮影している最中から注視していたに違いない。
きっと、アニメが出てきたり
ミュージカル映画だったり
踊ったりしていても、トラヴァースは気に入ったんじゃないかな。
いい映画だもの。
『メリー・ポピンズ』のバートのかわりに
ジャックが登場するけど
ジャックはメリー・ポピンズの崇拝者ではあっても、
恋する相手はジェーンだし。
こう言うのもなんだけど、下着が丸見えにはならないし。
個人的には、映画の出だしからワクワクしっぱなし。
エミリー・ブラントもよかったし。
『プラダを着た悪魔』のエミリー・ブラントも
なかなか好きだったけど
メリー・ポピンズを品よく、素敵に演じていて、
大好きになりました。