@サラ☆
CDジャケットの写真を大きく出したのは
中に映っている森の写真をはっきりお見せしたかったから。
この森の写真は、ピアニストの高木竜馬さんご自身が
ウィーンの森で撮影したものだそうだ。
前々から、ドイツやオーストリアなどヨーロッパ中央の森に
興味がある。
それはグリム童話の森でもあり、マルシャークの『森は生きている』の森でもあり
フランスのぺロー童話集の森(etc.)でもあるからだ。
どんな深い森なのか、この目で見てみたいもの。
高木さんは、今回の「ピアノの森 ピアノコンサート」ツアーの
ブックレットとCDジャケットのために、
ウィーンの森の写真を撮ってきてほしいと、マネージャーに頼まれた。
高木さんがウィーン国立音楽大学大学院を卒業したあと、
現在も同大ポストグラデュエート課程に在学しているからかな?
(そういうの、どのくらいすごいことなのかは、理解できていないけれど…)
高木さんが撮影のために訪れた森は、
ウィーンの森ハイリゲンシュタット。
森にたどり着くまで、けっこう遠い道のりらしい。
最初100枚ほどパシャパシャ撮って、日本に送信したところ
マネージャーから「申し訳ないけれど、撮りなおしてくれないか」と
連絡があり、
結局4、5回ほども訪れて撮影したそうだ。
構図やアングルもさることながら
森の深みとか拡がりとか、物語性とかが
感じ取れる写真じゃないとね、ということだと思うけど。
何よりも、ヨーロッパの森と一瞬で感じ取れる写真がいい。
「森は静かにそこに在り、鳥が鳴き、風が吹き、木々の葉が揺れる。
かってベートーヴェンが歩いたその森に、今身を置くこと。
悠久の時の流れに想いを馳せました。」
と、高木さんはジャケットに書いている。
「ピアノの森」も森に捨てられたピアノが発端となって、漫画が紡ぎ出された。
「森は大きなキーワードだったんだな」といまさらながらに実感したりして。
ブックレットに、漫画の原作者・一色まことさんのメッセージが載っている。
「ピアノの森」大好きなので、掲載しておきたいと思います。
↑ 一色まことさんから送られた大きな花と、会場に展示されていた「ピアノの森」の原画
最初に「ピアノを弾く少年の話」を描こうと思ったのは、NHKの
ショパンコンクールのドキュメンタリー番組(再放送)を見た時のこと
だったと思います。
緊張と張り詰めた空気を、まるで編むように、時には裂くように、
響くピアノの音にドキドキが止まりませんでした。
そのピアノを演奏していたのは、当時19歳だったロシアの
スタニスラフ・ブーニン氏でした。
ピアノを習うのも、コンクールに挑戦するのも、恵まれた環境が
あってこそ。……だと考えた私が、漫画の中でまずやったことは、
森にピアノを捨てたことです。
野ざらしのピアノが、どれだけ持ち堪えられるものなのか?
……は一切無視して、貧しい少年・海にピアノを与えました。
どんな化学反応を起こすのかと。
その物語を紡ぐために多くの年数と、多くの人々の力を借りました。
次にはアニメ映画、TVアニメとなり、またまた多くの方々の力で
音を再現していただきました。
そして「ピアノの森コンサート」が開かれる運びとなったのも
化学反応の一つだと実感しています。
ピアニスト高木竜馬氏が紡ぐピアノの旋律が、次は誰の胸に、
人生に、化学反応を起こすのか、楽しみでなりません。
私も、この幸せな時間を共有できることを心から感謝いたします。
2021,8月吉日
一色まこと