サラ☆の物語な毎日とハル文庫

『ゴッホのあしあと』を読んでゴッホの人となりと人生に思いを馳せるのだ

ゴッホの中で、大好きな絵「夜のカフェテラス」

 

本屋に立ちよってふと手に取った本。

池袋の西武デパート地下の三省堂だったかな。

『ゴッホのあしあと』(原田マハ著/幻冬舎文庫)という本を見つけました。

 

そんなに分厚くもないし、あの絵画の世界を小説化してベストセラーを連発している

原田マハさんが書いたゴッホの解説本らしい。

(まだ読んだことのない作家さんですが)

この本、読もうかな…

 

そんな経緯で読み始めました。

ちょうどいま使っているA5のノートの表紙が、ゴッホの『ポピー畑』という絵。

可愛らしい絵で、気に入っています。

本を手に取ったのは、頭の中のゴッホつながりかも。

 

この本は、ゴッホをごく身近な存在に感じる内容でした。

ゴッホって、そんな画家だったのかと、胸を打たれます。

絵を描くためにがんばって、人の何倍も凝縮した時間を生きて

きっとそれはそれでよかったんだろうな…

 

ゴッホの人生は、原田マハさんによると、こんなふうでした。

 

 

★ゴッホが生きている間に売れた絵は、《赤い葡萄畑》一枚だけだった。

 

マジですか?

いまや百億を超える値段で売買されたりするゴッホの絵が、一枚しか売れなかった!

当時の人の眼力はいかがなものか。

あるいはゴッホが少しだけ、当時の人々よりも先行した感覚の持主だったのかも。

客間に飾る優しい絵ではなく、生きることの感覚そのものをキャンバスにブチかました。

人々はそれを「狂気」と呼んだかもしれません。

でも、生きるとはそもそも、狂気すれすれの平常心のなかでバランスを保つことだ(といったのは私です)。

 

↑「自画像」

 

★ゴッホが画家を志したのは27歳のとき。

 

子供のころから、絵はそれなりに上手かったんでしょうけど

画商の叔父さんの紹介で、画商として働いたり、

伝道師を志したりしたあと、(落ちはしましたが、アムステルダム大学神学部を受験したりしています)

27歳で画家を志します。

 

それから亡くなるまでの時間はたった10年です。

うち、私たちが「ゴッホ」と聞いて頭に思い描く絵は、

32歳でパリに出て以降の約4年間に描かれたものでした。

 

ゴッホはパリで2年間(弟の画商)テオと過ごし、

日本美術や画家仲間に感化されて作風を一変させたのち、

1888年、34歳でアルルへ行きます。

ゴーギャンとの共同生活、耳切り事件があり、その後1889年、サン=レミ修道院の療養院へ移ります。

1年後の1890年には、オーヴェル=シュル=オワーズというパリ近郊の村に移り住み、

7月に拳銃で自分の胸を撃ち抜いて2日後に永眠します。

アルルに行ってから、その間、たった2年半です。

(原田マハさんの本からそのまま引用した部分は、ピンクの文字で表記します。

また基本的にどの部分も、原田さんの本から得た内容です。)

 

 

★あの有名な「自分で自分の耳を切り落とした事件」の真相は、耳たぶの一部分の話だった。

 

ゴーギャンはアルルにやってきてゴッホとの共同生活を開始したものの、わずか2カ月で引き上げていきます。

1888年12月、ゴーギャンが「もう君との共同生活を続けていけない」と言って、家を出ることを告げると、

ゴッホは剃刀で自分の左耳の耳たぶの一部を切り落とし、

その肉片を自分の馴染みの娼婦に届けたそうです。

警察沙汰になったというけど、それ当然かも。

 

片耳をスパッと切り落としたわけではなく、ほんのちょっと切っただけ。

いや、それだけでも、ちょっと尋常ではないけれど。

また、わざわざ娼婦に届けるというのが、なんだか猟奇じみているけれど、

片耳スパッというのとはちがって、まだ理性の一片が残っている状態だったようです。

(やっぱり、普通じゃないけど。)

 

担ぎ込まれた市民病院を退院したゴッホは、そこいらを徘徊して意味不明なことを口にし始めたそうです。

アルルの人たちがゴッホを幽閉してほしいと歎願したのも、まあ、仕方ない話かもしれません(そう思います)。

ゴッホが誰かを傷つけたとか、そういうことは一切ないのですけれどね。

この耳切り事件のあと、「狂気の画家」という通説がついてまわるようになったということです。

 

 

★サン=レミ修道院の精神科病院で1年間療養する。

 

サン=レミでの1年間は、彼の全作品の中で、もっともすぐれた作品が生み出されています。

素晴らしい風景画を残しています。

 

極限まで自分を追い込んで描いた作品には、隅々まで冴えわたるような明るさと透明感があります。

ゴッホはサン=レミで画家としてのある種の勝利を得た、何かに打ち勝ったという気がします。

↑「星月夜」

 

 

★「ゴッホ他殺説」もあるらしい。

 

ゴッホは1890年7月27日、ピストルで自分の胸を撃ち、自殺を図ります。

胸を血だらけにして、下宿していた「ラヴー亭」まで自力で戻り、

その翌日にテオが駆けつけて最後の別れをし、

7月29日の未明に息を引き取りました。

 

最大のミステリーは、ゴッホを撃ったピストルが発見されていないこと。

ゴッホがなぜピストルをもっていたのか?

撃ったあとピストルはどこにいったのか?

なぜ銃声を聞いたものがいないのか?

そんなこんなで、ゴッホ他殺説も飛び出しているらしい。

 

それにしても、死ぬことはなかったのに。

あと10年も待っていれば、ゴッホの絵が熱烈に迎え入れられる環境が整ったでしょうから。

 

ゴッホが亡くなったあと、1年もたたないうちに、弟のテオは心を病んで後を追うように亡くなってしまいます。

 

ゴッホは、苦しくて、苦しくて仕方なかったかもしれないけれど、

それでも生き抜いてくれたらよかったのに。

(原田さんが言うように、試しに撃ったら、命を落としてしまった、というようなことかもしれません。)

 

★ゴッホは弟を相手に大量の手紙を残している。

 

ゴッホと弟のテオは毎日のように手紙のやり取りをしていたようです。

ゴッホの膨大な手紙が残っていて、『ゴッホの手紙』というタイトルで、岩波文庫でも出ているらしい。

上中下・3巻!

 

かの小林秀雄氏も、『ゴッホの手紙』というタイトルの優れた評論を残しています。

ゴッホは文章も達者で、小林秀雄氏によると「ゴッホの手紙は告白文学の最高傑作だ」そうです。

 

★ゴッホはインテリだった。

 

『ゴッホの手紙─絵と魂の日記』という本を監訳した千足伸行氏によると、ゴッホはかなりの知性派で明晰な頭脳の持主、そしてインテリだったということです。

ゴッホはオランダ人でフランス語は母国語ではないのに、テオとの手紙はほとんどフランス語で書いている。

スペルミスは一切なく、正確なフランス語。

自分の感情も、的確な言葉を選んで書いているそうです。

 

絵を描くときには、「色とりどりの毛糸を使ってとなり合う色の組み合わせを考えながら色彩を決めていた」そうです。

「(そのことを)知ったときには、驚きと感動を覚えました」と原田マハさん。

原田マハさんによると、

「ゴッホはインテリで、語学の才もあり、ラテン語にも精通していたということです。」

「読書家で、本もたくさん読んでおり、一時は聖職者となることを目指していたくらいですから、聖書も隅々まで知り尽くしていました。」

 

狂気の人と思われているけれど、「ゴッホを知れば知るほど、狂気ばかりを強調するのは間違いだと思うようになりました」と書いておられますよ。

 

うーむ。

37歳という、自分の描いた絵がまったく受け入れられない、孤独で短い人生だったかもしれないけれど、

生きる意味も、絵を描く意味も達成した(結果的に、いまではものすごい評価を得、人々に愛されていますから)

すごい画家の人生だったんですね。

 

↑「ポピー畑」

コメント一覧

サラ☆
zerocolarさん、コメントありがとうございます。
原田マハさんの『ゴッホのあしあと』によると、統合失調症という説には反対のお立場のようです。
ただ、画業に打ち込んだ感性豊かな一人の画家として、その人生を見つめておられます。

ゴッホの絵は、色彩や描写の深い研究に基づいた結果だともいえそうです。
ネットの記事ですが、こんなことが書いてありました。
「ゴッホは色彩理論について強い探究心を持っており、フランスの芸術家であるチャールズ・ブランクの記した色の分析法や、ミシェル=ウジェーヌ・シュヴルールの色彩理論などについて勉強していました。」
「また、絵具は混ぜれば混ぜるほど暗くなってしまうという性質があるため、外界の光を再現しようとしてさまざまな色を混ぜると絵が暗くなってしまいます。これを避ける方法として、キャンパス上で混ぜたい色を並置することで網膜上に混合された色彩を作り出す、『視覚混合』という手法についてもゴッホは知っていました。」

わたしとしても、画家として超一流だった、という評価や受け止め方のほうを好ましいように思っています。
zerocolar
興味深いお話をありがとうございました
知人から聞いた話は、
ゴッホは統合失調症だった説
光り輝く星や渦巻きのようなものは、彼には実際に見えていた光景なのでは?
耳を切った奇怪な行為やピストル自殺等も病気のせいでは?
今でも統合失調症で自殺する人は多いのだそうです
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