日々、雑多な日常

オリジナル、二次小説、日々の呟きです。

苛められていた女子高生が前向きになるストーリー

2022-03-01 18:00:58 | オリジナル小説

 歩道橋の上から走る車をのぞき込んでいるとき声をかけられた、顔色が悪いわ、良かったら家へ寄って行かないという言葉にうなずきながら、不意に涙がこぼれそうになった。
 見ず知らずの老婦人の言葉に思わず頷いてしまったのは、今思い出しても不思議だった。
 
 あなたが飛び降りるんじゃないかと思ってしまったのよ、だから声をかけずにいられなかったの。
 アパートの一室で出されたお茶を飲んでいると涙がぼろぼろと出てきた。
 

 言葉が、こぼれるように口から出てしまった。

 「学校に行くの、毎日が嫌で辛くて、どうしようもなくて、死ぬしかないって思っていたんです」

 見ず知らずの他人だからこそ、言っても構わないと思ったのかもしれない、涙が止まらず、ただ、泣き続けた。

 「あなたに似た人を知っているの、その人も学校で虐められていたわ」
 
 学校、虐め、その言葉に何も言えない。

 「非道いことをされていたわ」

 どんなイジメをと言いかけて思わず口を閉じた。

 「持ち物を隠されたり、悪口、裸になれって言われて、頭から水をかけられたり、ある日、男子生徒に乱暴されてね、我慢が限界にきていたのね、それで」
 
 老婦人はそれ以上何も言わない、少しばかり寂しそうな笑顔を向けられて言葉に詰まってしまった。

 「我慢できるなんて思っていると自分だけでなく、周りも不幸になってしまうわ、あなたのお母さんは、泣いているあなたの顔を見たことがあるかしら」
 
 言葉の代わりに首を振ってしまった、心配をかけたくないから、知らせていない、だが、目の前の老婦人は知っているかもしれない。

 
 「人は弱いけど、強くもなれるの、お友達はいる」
 「クラスの人は皆、知らないふりを、だから先生も」
 「よくないわねぇ」
 

 まるで子供を叱るような口振りに思わず吹き出しそうになってしまった。

 
 老婦人は自宅近くまで送ってくれた、時々、軽く右足をひきずるので、もういいですと言うと、ふふっと笑った。
 そして、突然、道の真ん中でタップを踏みはじめたのだ。
 驚いたのも無理はない。

 「何、あれ、年寄り、ババアかよ」
 「こんなところで、ストリートダンス、変なの」
 「でも、ちょっと」
 

 数人の通行人の言葉は最初のうちこそ、馬鹿にするような嘲笑の言葉だった、ところが、だんだんと無言になっていく。
 若者のようにキレのある早い動きではない、それなのに老婦人の一挙一動、動き、伸ばされた手足に視線が奪われてしまうのだ。
 観客となった人達は老婦人の一挙一動を見逃さまいとするように瞬きさえ惜しんでいたのかもしれない。
 
 
 ダンスが終わると周りから聞こえる拍手の音に老婦人は、にっこりと笑い会釈をした。

 
 「ああ、あの、凄く上手で、素敵で、ダンサーですか」
 
 驚きのあまり、ありきたりの凄いという言葉しか出てこない自分に老婦人は笑うだけだ。
 もしかして、足をひきずっていたのもと聞こうとした彼女は、このとき自分が泣いていることに気づいた。
 
 「元気が出たかしら」
 「は、はい」
 「じゃあ、特別に、教えてあげましょうか、さっき話した女の子のこと」
 
 ドクン、心臓が何故か激しく高鳴った、もしかしてと思ってしまった。
 いいえと首を振った、代わりに、名前を教えてくださいと聞いてしまった。
 不思議な事に少し前まで、ぼろぼろと泣いていたのに、今は目の前の出来事、老婦人の踊ったダンスのこと、驚くようなものを見たという興奮と事実に体も頭も、全てが奪われていた。

 

 「あー、また陰気臭いのが来たよ、やめればいいのに、学校」

 美人で気の強いと言われるクラスの女子、彼女の一言に教室内はいつもなら、嘲笑や賛同する声が聞こえる筈だった。
 ところが。

 「あっ、いたー。よかったー」

 突然、入ってきた男子生徒に教室内はしんとなった、それというのも男子生徒があまりにも他の生徒と違っていたからだ。
 金髪なのはハーフかクォーターのせいだろうか、顔立ちも少し日本人とは違う、男子生徒は教室内を見回すと、ああーっと声をあげた。

 「初めまして」

 ずかずかと教室内に入ってきた男子生徒は窓際の席、立ったままの女子生徒を見つけ近寄ると右手を差し出した。
 握手を求めていることに彼女は驚いた、ところが、続いてもう一人、女性とが教室内に入ってきた。
 長身で人目をひく美少女といってもよかった。

 「も、もしかして、昨日の、あれ本物なの」
 「言っただろう、一度でも見れば十分だよ、あっ、自己紹介します、彼女は」
 
 女生徒は邪魔よといわんばかりに美少年を押し退けると、呆然としている彼女の手を取り、握手を求めてきた、まるでアイドルのような美少年、そして長身の美少女に教室内の生徒達は驚いたように呆然と、この様子を見ていた。

 
 
 大手新聞社の一室だった。

 「おい、どういうことだ、これ」
 「間違いない、彼女だ」
 「だって、顔が」

 変装だと男が呟いた。

 「どうせ、この映像もすぐに消される」
 「何故です、動画サイトでしょ、拡散されたら削除なんてされたって」
 
 返事の代わりに男は若い記者を睨んだ。
 
 「いつ日本に帰ってきた、死んだなんてデマかよ、これ、誰が取った、いや、もう、遅いか、ああ、くそっ」

 ばんっと机を叩いた男は制服姿の女子高生、映像に目をとめた。

 「インタヴュー、できたら、いや、ああ、ジレンマだ」

 悔しさの滲む言葉に、そばにいた若い記者は不思議そうな顔をした。
 
 「もう一度、見て、確認しましょうよ」

 若い記者はパソコンのキーを叩き、先ほど見せられた動画をもう一度、再生しようとした、ところが。

 「あれ、おかしいな、さっきは何ともなかったのに」
 
 削除されましたというメッセージに若い記者は、不思議そうな顔になり、他のサイトにupされているかもしれませんと先輩の記者に声をかけた。

 「無理だ、印、中、露、富豪の国のサーバーだろうが、今頃は、全部消さてる、徹底しているからな、彼の国は」
 「どういうことです」

 わけが分からないと若い記者に中堅の記者は、ついてくるかと声をかけた。

 



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