夏の終わりの・・詩3編

2014-09-14 23:01:54 | 日記

 

 

  こんにちは

  暑かった今年の夏も、もう終わりになりましたね。

  みんなで暑い暑いと頑張ってそして、ようやく終わった涼しくなったねとみんな一緒

  にホッとしている今頃、わたしは割に好きな時期です。  

  まだ秋の気配は感じないけれど。

  夏の思い出ばかりが残されている。

  そんな晩夏に似合う詩を2、3ご紹介します。 

 

   

  

      

 

       私の耳は貝の殻(から)  海の響きを懐かしむ   

                                  <ジャン・コクトー「耳」>

 

  いきなり、たった一行の短い詩なので驚かれたかもしれませんけど、これも詩です。

  コクトーの有名な詩ですのでご存知のかたも、この詩が好きなかたもいらっしゃるこ

  とでしょう。

 

  昔ある教室で、この詩を読んでどんなイメージが浮かびますかと訊かれたことがあり。

  夏の賑わいが嘘のように静まり返った海、白い砂浜に波がくり返し打ち寄せている

  遠景です、といったようなごく平凡な答えをしますと。

  海の響きが入っていないんですね。

  ・・・・・・・・?

  いえそれでいいんですよ、イメージに音は入りませんからね。

  なんか難しい質問をされたのを未だに思い出します。

 

  ジャン・コクトーはフランスの有名な詩人。1889年~1963年を生きた人でした。

  わたしはこの詩が好きで、夏が終わる頃になるといつも繰り返し思い出します。

  この詩はとくに夏の終わりの詩、というわけではないのですけど。

 

    

         

 

  夕方、久しぶりに公園まで足を延ばしました。

  夏休みの間、遅くまで声が響いていた小学生たちの姿はもう無くて。

  地面が夏の猛暑の火照りを冷ましているような。

  ヒグラシはまだ鳴いていました。

  賑やかな秋の虫の音が勢いよく、アブラゼミやツクツクボウシ、ミンミンゼミも鳴い

  ていて、やはり主役はヒグラシの時々もの哀しく響き上がるあの高音。

  虫たちのハーモニーを楽しんできました。

  

 

  

              小さなみなとの町    木下夕爾(ゆうじ)

 

              母とふたりで

              汽車でとおった

              小さなみなとの町

 

              たれかのたべのこした

              アイスクリームが

              まどわくのところでとけていた

 

              汽車のとまっているあいだ

              波の音がきこえていた

              つくつくぼうしが鳴いていた

 

              それだけをはっきりとおぼえている

              もう二度とくることもないだろうと

              おもいながらとおりすぎた

              小さなしずかなみなとの町

 

 

  夏の思い出の詩。

  自分にも似たようなことがあったな、と気づかされます。

  詩を読むと、そんなことを人と話すことはまずないけれど、みんな同じような心情

  経験をしていることが分かって嬉しくなります。

  集合意識に触れたような詩が多くて、さすがに詩人の感性ってすごい。

 

  この木下夕爾(ゆうじ)という詩人は広島県福山市に生まれ、1914年~1965年

  を生きた人でした。

 

 

     

 

 

  最後にそのものずばり、「夏の終わり」という伊東静雄の詩です。

  この詩人は1906年に長崎県諫早市に生まれ、1953年に亡くなりました。

  伊東静雄賞という現代詩の賞が残っているそうです。

  あなたもきっと見たことがあるような情景。

 

  

              夏の終わり    伊東静雄

 

              夜来の颱風(たいふう)にひとりはぐれた白い雲が

              気の遠くなるほど澄みに澄んだ

              かぐはしい大気の空をながれてゆく

              太陽の燃えかがやく野の景観に

              それがおほ(おお)きく落す静かな翳(かげ)は

              ・・・・・・さよなら・・・・・・さようなら・・・・・・

              ・・・・・・さよなら・・・・・・さようなら・・・・・・

              いちいちさう頷く眼差しのように

              一筋ひかる街道をよこぎり

              あざやかな暗緑の水田の面を移り

              ちいさく動く行人をおひ越して

              しづかにしづかに村落の屋根屋根や

              樹上にかげり

              ・・・・・・さよなら・・・・・・さようなら・・・・・・

              ・・・・・・さよなら・・・・・・さようなら・・・・・・

              ずっとこの会釈をつづけながら

              やがて優しくわが視野から遠ざかる

   

      

      

 

 

  八月はブログを長くお休みしまして、せっかくいらしてくださったかた、申し訳ありま

  せんでした。

  これに懲りず、またお出かけくださいね。

  

                             

 

  

 

  

 

 

 

 

        


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