こんにちは。
去年の12月にロンドンの繁華街ピカデリーサーカス駅の近くにあるハー・マジェスティーズ・シアター
でミュージカ「オペラ座の怪人」(THE PHANTOM OF THE OPERA)を観てきました。
今日はそのお話をしたいと思います。
↓下の建物はそのハー・マジェスティーズ・シアターです。
ハー・マジェスティーは女王陛下という意味だそうで、1705年開設の老舗の劇場です。
↑上はプログラムの表紙です。右が表紙で、オペラ座の怪人が着けている仮面、そして左の裏表紙
は、怪人の部屋に置いてあった猿のオルゴール。
この二枚の写真を見ただけで、怪人の身を引き裂かれるような悲しみとダイナミックに展開した
シーン、そして数々の名曲が蘇ってきます。
「オペラ座の怪人」は、1986年にこの劇場で世界初演されて以来30年のロングラン中。
今なお、満員御礼が続いているというマンモス・ミュージカル。
ブロードウェイでも日本でも上演されていて、やはりロングランです。
なお、初演の時には作曲を手がけたアンドリュー・ロイド=ウェーバーの妻だった若い無名のソプラノ
歌手のサラ・ブライトマンが初代クリスティーヌの役に大抜擢されました。
というより、彼はサラ・ブライトマンのためにこのミュージカルの曲を書いたと言われています。
自分を怪人に、サラ・ブライトマンをクリスティーヌに投影して作品にしたとも。
本質的にはそういう関係だったのか、何年か後に二人は離婚しています。
「オペラ座の怪人」に出てくる曲はテレビやラジオで流れますし、フィギュアースケートでもよく
取り上げられてきましたので、皆さんご存知の曲が多いことでしょう。
英語の上演ですし日本語字幕も無いのですけど、事前にストーリーをしっかり読んでいれば英語に
自信が無くても大丈夫です。
↑上は、幕間の休憩時間に撮りました。これは劇中劇の舞台。本来の舞台はもっと広いのです。
舞台や観客席は日本の一般的なホールよりひと回り小さいので上演中の密室感は濃厚でした。
ここの舞台で30年前にサラ・ブライトマンで初演され、以後30年間毎夜上演され続けてきたこと
を思いますと感動が湧き上がってきます。
母親にさえ見捨てられたほどの醜い顔の怪人は仮面で隠し、パリ、オペラ座(ガルニエ宮)の
地下に隠れ住み、孤独にオペラの作曲をしています。
彼は美しいコーラスガールのクリスティーヌに恋をし、彼女に歌のレッスンをしてオペラの
プリマドンナに育て上げるのです。
↑上は、怪人の魔力に魅せられたクリスティーヌが「そしてもう一度夢見るのかしら」と歌いな
がら地下の湖を渡り、怪人の隠れ家へと連れ去られる幻想的な名場面。
湖だけでなく、オペラ座の表舞台(劇中劇)、舞台裏、稽古場、地下の隠れ家、屋上などの
シーンがまるで映画でも観ているようにスムーズに移り変わるそのテクニックには驚くばかり。
一枚の板舞台でここまでシーン展開ができるものかと感心しながら観ていました。
練りに練って舞台設計をしたのでしょう。
また、劇のプロローグの場面でオークションにかけられているオペラ座の古びたシャンデリア
が突然浮き上がり舞台を越えて観客席の天井に移動して輝きはじめ、同時に時が1880年代の
最盛期に戻ってこの劇が始まる、という出だしはお見事と言うしかありません。
舞台のシャンデリアが客席に来たことで、舞台と自分との距離感が一気に縮まるのを感じました。
↓このシャンデリアです。大きくて、揺れながら上がってゆくので迫力がありました。
また、このシャンデリアは劇中に今度は落ちてきて、前から4分の1くらいの観客席の頭上を
舞台まで走り、舞台直前の天井まで上がってゆき止まるという大胆なサプライズ。
どうやって止めているのか落ちてこないのかとちょっとはらはらしましたけど、リピーターが
多いのか事前に知っているのか、観客はほとんどが平気な様子。
このおどろおどろしいエキセントリックな怪人劇には、効果的なサプライズでした。
シャンデリアだけではなく、舞台上で本物の火を焚く大胆シーンも。
炎が高く上がり煙が客席に流れてきて、珍しい体験、臨場感。驚きと共に拍手が起こりました。
もちろん歌も踊りも舞台も素晴らしかったのですけど、それに加えて観客をあの手この手で楽し
ませる、娯楽をたらふく食べさせて満腹になって帰って貰うことに徹したプロ根性が凄い。
↓クリスティーヌがラウルと愛を誓い合うのを見た怪人が、怒りと嫉妬に狂いシャンデリアを彼女
の上に落としたのです。
↓少し戻って、隠れ家にクリスティーヌを連れ込んだ怪人が「ミュージック・オブ・ザ・ナイト」
を歌い上げるシーン。この歌はポピュラーソングとしても、ヒットしています。
↓ところが好奇心から仮面をはぎ取ったクリスティーヌは、怪人の醜い顔を見る羽目に。
やがてラウルへと愛が深まってゆくのです。
破れかぶれの怪人は殺人をも犯し、クリスティーヌを拉致して地下の隠れ家へ。
ラウルが救出のために後を追い、いよいよ劇は大詰め。
最後は怪人が、クリスティーヌの愛に負けて二人を逃がしてやり、姿を消して終るのでした。
終わるや否や、客席は総立ちのスタンディングオベーション。指笛まで聞こえてきました。
いやァ・・面白かった面白かった!
↓開演直前の客席です。満席でした。
最前列の前にオーケストラ・ピットの半地下空間があり、40人くらいのオーケストラが入って
演奏していました。
途中、休憩が15分くらいあり、その間に待ってましたとばかりにアイスクリーム売りやプログ
ラム売りの人たちが客席を回ります。映画館のようにお菓子でも何でも座席で食べていいのです。
↓下は1階のロビー。正面入口を入ってすぐの所。右がチケット売り場の窓口です。
チケットはネットで買う方法もありますけど、劇場のチケット売り場まで来て買うほうがいい席が
取れる可能性が高いし、より安いのです。
↓劇場の正面入口。開場されて入ってゆく人たち。
ミュージカルといえばかってはブロードウェイの独壇場でしたけど現在はむしろ逆転して、ロン
ドン発のウェストエンド・ミュージカルをブロードウェイでも上演するといったパターンが増え
ています。
ロンドンのウエストエンドと呼ばれる歓楽街エリアに劇場が集中していることから、これらの
劇場で初演されたミュージカルをウエストエンド・ミュージカルと呼ぶようになりました。
もちろんここもウェストエンドです。
ウェストエンド生まれのミュージカルは「オペラ座の怪人」をはじめ、「レ・ミゼラブル」、
「キャッツ」、「ミス・サイゴン」、「マンマ・ミーア」等々、近年のロングランはほとんどが
ウエストエンド発です。
5時に終演して劇場を出ますと夜になっていました。イギリスの冬は4時になると暮れるのです。
夏場は11時頃まで明るいのですけど。↑地下鉄のピカデリーサーカス駅まで歩いて5分。
2時30分からのマチネがあったお陰で帰りが遅くなる心配もなく、友人と別行動にして一人で
観に来ました。なんとか一人で来れました。
↓サラ・ブライトマンのが歌う「オペラ座の怪人」(トニー賞受賞の時)です。よろしかったらどうぞ。
https://youtu.be/oZDcSrODALQ?list=PLCW3dTashS8ypKCGPN5vyriEjeZKDywuL