人魚姫 ハンブルク・バレエ

2009-02-15 | ballet
NHKホール 2009/2/15 ソワレ

振付 ジョン・ノイマイヤー
音楽 レーラ・アウエルバッハ
指揮 サイモン・ヒューウット/ 東京シティ・フィルハーモニーック
ヴァイオリン アントン・ヒューウェット
テルミン カロリーナ・エイク

配役
詩人     イヴァン・ウルバン
人魚姫    シルヴィア・アッツォーニ
王子     カースティン
王女     エレーヌ・ブシェ
海の魔法使い オットー・ブベニチェク

 作家アンデルセンを熟織していからこそ生まれたノイマイヤーの渾身の作品、総合芸術の究極「人魚姫」はタイトルロ-ルをアンデルセンの投影に仕立てた。心の暗鬱、不条理な世界を尊く叙情的に卓越した振付・ダンサーの表現によって、心を鷲掴みされ、感性を揺さ振られた。この作品を創作するにあたって、オリジナル音楽を駆使し、振付家・ダンサーが時間を重ねて構築してきたのだろう。ノイマイヤー、ダンサー達、音楽家達、美術・衣装担当、作品に携わった全てのスタッフに1000回のブラボーを贈りたい。

★嘗て座席おいての後悔はしたことがない。NHKホールの3階席は想像以上に舞台から距離があった。従来の古典バレエだとしたら(白鳥、ジゼルのようないわゆる白物バレエ等)、2・3階席でもコールドバレエの様式美を十分楽しめ、性能の良いオペラグラスを利用することによって主役の表情まで鮮明だ。人魚姫の舞台においては、ダンサーの動きが違うので、サラウンド方式で観ないと、1シーンを見逃してしまう。オペラグラスでは悠長に観てはいられない。良席で鑑賞するべき作品であった。



ライモンダ 新国立バレエ

2009-02-14 | ballet
新国立劇場(オペラ劇場)2009/2/14
振 付 マリウス・プティパ
改訂振付・演出牧阿佐美
音楽 アレクサンドル・グラズノフ
ライモンダ        スヴェトラーナ・ザハロワ
ジャン・ド・ブリエンヌ  デニス・マトヴィエンコ

ライモンダ(中世時代の騎士とその婚約者ライモンダの物語)はチャイコフスキー3大バレエ、ジゼルのようには頻繁に上演されないが、昨今また全幕の上演が目立つようになってきた。バレエ鑑賞人口が増えれば、自ずと上演演目も増えるのだろう。3幕だけの上演、ライモンダのヴァリエーションなどは、ガラコンサート、バレエ教室の発表会などに用いられるので比較的3幕は馴染みのある作品。ライモンダ役は全3幕を通して踊るので、体力的にはキツイと思う。今回主演ライモンダはスヴェトラーナ・ザハロワ。キラキラ舞台で輝くスターダンサー。軸足がカックンと一瞬なり、ひやりとしたが十分にザハロワワールドを堪能する。新国立劇場の舞台装置、衣装は洗練されている。例えば、1幕、夢のシーンでのコールドバレエの衣装。モスグリーン色で中は幾重にも白地のシフォンの布があしらわれている。コールドが同時にジュテアントラセ、ピルエットのPASを踏むとダンサーの衣装が一斉にふわ~と舞い上がる。夢のシーンらしく幻想的。チュールで衣装を作るとそうはいかないだろう。粋な美しさの計算だ。夢のシーン第一ヴァリエーションの厚木三杏が優美で、次回の新国立劇場の演目で厚木三杏のオデットを観たいとそそられた。


Altro Canto Ⅱ・Ⅰ  モナコ公国モンテカルロ・バレエ

2009-02-10 | ballet
(文化村オーチャードホール) 2009/2/10

1部)Altro Canto Ⅱ
音楽:ベルトラン・マイヨー

2部)Altro Canto Ⅰ
音楽:モンテヴェルディ、マリーニ、カプスベルガー

振付:ジャン=クリストフ・マイヨー


 '89年にモナコにてモンテカルロバレエ団を観たのが始めてだったが、その時の舞台は印象が薄かった。マイヨーが芸術監督になり、東京で'04年に「ロミオとジュリエット」「La belle」(眠りの森の美女)'06年に「Le songe」(真夏の世の夢)マイヨー版を観た。作品は古典という主題が進化したヴァリエーションになり、斬新で洒落たマイヨーのオリジナルテーストは稀有なる作品。
 今回観た作品はAltro CantoⅡ&Ⅰ。1部はスクリーンに映ったシルエットをバックにダンサー達が踊る。不思議なムーブメントがまるでダンサーによって催眠にかけられたように身体か心地良くなった。音楽会でモーツアルトの名演奏を聴いた如く…。2部は暗転と光(照明)、舞台装置の蝋燭、モンテヴェルディの音楽、衣装が荘厳さを醸し出す。中世時代風とモダンなムーブメントが融合していた。Altro CantoⅡ&ⅠはNYのモダン美術館とイタリアの伝統ある美術館の対比のようだ。知識人マイヨーのセンスが鏤められた作品。ベルニス・モルロッティの中性的な体躯は幾重にも見惚れてしまう。お気に入りのダンサーの1人。小池ミモザは数年前、ロミオとジュリエットの群舞の頃から目を引かれる若手注目株。手足が長く、良い個性がある。次世代モンテカルロ・バレエのスターダンサーになる逸材。

懺悔

2009-02-07 | film
(岩波ホール)2009/2/7
1984年/ソビエト(グルジア)映画

監督 テンギズ・アブラゼ

出演
アフタンディル・マハラゼ
イア・ニニゼ
メラブ・ニニゼ
ゼイナブ・ボツヴァゼ
ケテヴァン・アブラゼ

 偉大と称される市長の訃報が、ケーキの上に乗せる教会の型を作っていた中年女性ケティヴァンに伝わり回想から描かれる。荘厳な葬式・埋葬後、市長の屍が息子アベル(市長と二役)宅の庭に戻っている。数度となく続き犯人ケティヴァンを突き止め、何故そのような罪を犯したかを裁判で問う。そこから彼女の過去が明かされる。彼女の少女時代、両親が教会で科学の実験をすると古い教会の建築物が振動で崩壊してしまうと抗議に対して市長(スターリン、ヒトラーを彷彿されるよう容貌)は反逆者とみなし両親は粛清された。だから市長は眠りにつくことは許されないと主張する。過去の粛清事実が明るみになり、ケティヴァンを精神異常者に仕立て上げ父の名誉を守ろうとするアベル。アベルは澄んだ瞳の美しい息子トルニケからケティヴァンに懺悔する事が筋と抗議されるが、立場を守る為にトルニケを否定する。トルニケは家族の罪に絶えられず自殺。残されたアベルは己の罪を認めトルニケの遺体に縋り嗚咽する。しかしながら両親の粛清された事実以外はケティのヴァン妄想に過ぎなかった。映像は始めに戻り老女が道を尋ねる。教会へ続く道はこの道で良いか?ケティヴァンは答える。「ヴァルラム通りは教会へ続いていないと…。
 哲学、普遍的史実、不条理、イデオロギーをさらりと科白に含ませ、幻想的映像はストレートな表現方法は時代が許されずカムフラージュなのだろうか?寧ろ比喩的な表現方法が文学的、芸術的になり、受け手側には重荷を背負うことなく(あと味の悪さななどはない)鋭敏な感覚が抉り刻まれる。ロシアの近代から現代までの歴史背景に拙い私の知識において、バックボーンを調べる切っ掛けにもなった。時間があれば再度、岩波ホールに足を運び、この映画を観たい。




Le Sous Sol/土の下 ピーピング・トム

2009-02-05 | ballet
(世田谷パブリックシアター) 2009/2/5

FROMベルギー

ガブリエラ・カリーソ(振付家・ダンサー)
フランク・シャルティエ(振付家・ダンサー)
サミュエル・ルーヴル(振付家・ダンサー)
マリア・オタル(俳優・ダンサー)
ユルディケ・デ・ブール(メゾ・ソプラノ歌手)


 5人のメンバーと数人のエキストラで構成される。舞台は一面に土が積まれ、ダンサーは自由自在にまるでトランポリンに倒れたように起き上がる。壁に設置されたランプは頽廃的な光を放し舞台照明になる。男女のダンサーが昆虫の「交尾」のように離れず激しく上手、下手を動き回り、老女が恍惚とその光景を眺める。またその男女の繋がったパフォーマンスに男性ダンサーが加わりそして繋がり徘徊するような動きが続く。ダンサーの身体能力と柔軟性に驚嘆。死と生命が交差するかのように舞台は展開をして行く。地を這うようなムーブメントと反比例してユルディケ・デ・ブールの美しい声量が融合していた。2F席から観ていたので客観的になったが、このフォーマンスを晩秋の空気の中、ベルギーの小劇場で観ていたら、この上ない刺激を受け街並みを漂っていただろう。


N.B.
ピーピング・トムとは覗き見という俗語。かの昔、ゴダイヴァ婦人が夫の圧政を止めようとした。夫は婦人を諦めさせる為、裸で馬に乗り城下を巡回すれば言い分を認めると言った。しかし婦人は実行をした。領民たちは彼女を支持し、布告の通り屋内に引き籠ったが、村人ピーピング・トムだけは婦人の裸を覗き見して、天罰で失明したことから、覗き見することをピーピング・トムと言うらしい…。老舗ベルギーのチョコレートショップゴディバは社名&シンボルマークはゴダイヴァ婦人からの由来との事…。




我が至上の愛  アストレとセラドン

2009-02-01 | film
(銀座テアトルシネマ)2009/2/1

2008/フランス映画

監督・脚本 エリック・ロメール

出演
アンディー・ジレ
ステファニー・クレイヤンクール

 美しい絵画が可動する宛ら、映像が流れていく。エリック・ロメールの真骨頂とも言うべき作品であるが、反して87歳の男性の感性なのだろうか?と少し懐疑的になってしまうほど女性的感覚。美青年役アンディー・ジレの美しさを引き出す撮影・演出方法はお見事。非現実的で草や霞を食べて生きている様な人達の生活は「愛」を語り感じる事。日常の超現実から2時間近く開放され、甘美な夢の世界の出来事を垣間見れる。感覚的に感じられ、クスリと笑える映画を久し振りに観た。

★主演のアンディー・ジレが韓国映画「西洋骨董洋菓子店アンティーク」にフランス人ゲイの菓子職人で出演。原作(よしがなふみ)とぴったり。キム・ジェウク(原作では魔性のゲイ菓子職人)との絡みが楽しみ。