俺は、記憶の女を探している。
そのはずだ─────。
でも、気付けば、牧野ばかり目で追っていた。
あいつのサラサラの髪を、触りたいって思った。
やわらかそうな頬に、触れたいって思った
俺が探しているのは、記憶の女だ。
牧野じゃねー。
こう思い、記憶の女を探す為に、何度も他の女を見渡した。
でも、気付けば─────。
俺は、牧野のことばかり探していた。
こんなことを繰り返していたある日。
授業も終わり、校門まで歩いて行くと─────。
校門付近が、英徳の生徒で埋め尽くされていた。
なんだよ、事故か?
こんなことを思いながら、近づいて行くと─────。
俺の視界に飛び込んできたのは、牧野と男。
しかも、その男は─────。
俺によく似ている男だった。
英徳の奴らが、俺に似ているとかで騒いでいたが…。
俺の耳に、その騒音は届かなかった。
ドクンっ。
変な胸騒ぎがしてきた。
ドクン、ドクンっ。
嫌な予感しかしねー。
牧野と男が歩き出した後を─────。
あきら、総二郎、類、三条の4人が後をつけだした。
当然のように、俺もこいつらと同じように、牧野と男の後をつけだした。
俺が幼なじみの3人と三条に合流すると、
「道明寺さんっ、もっと小さくなってくださいっ!」
っつー無茶なことを、三条が言い出した。
「俺の身長は、縮まねー。」
こんな俺の反論も
「ホント無駄にデカ過ぎて、邪魔ですわ。人相も悪くて目立つんですから、帰られたらどうですか?」
こんな辛辣なことを、三条は言ってきた。
理由はわかんねーが…。
事故後─────。
俺が学校に戻った頃くらいから、三条はかなり俺に辛辣だ。
無駄にデケーとか、邪魔とか、人相が悪いってなんだよ。
しかも、帰られたらどうですかって…。
こいつ、こんなことを言う奴だったか?
校門から歩くこと数分。
牧野と男の2人は、小さな公園に入った。
信じられねーが、俺たちは、生い茂っている木々に隠れた。
これ、マジ通報もんだ。
不審者にしか見えねー。
俺たち5人は、牧野と男がよく見えるように移動した。
木々の間から、男が見えた。
ドクンっ!
ドクン、ドクンっ!!
俺は、この男を知っている。
こいつは、俺の女を奪いに来た。
!!!
なんでそんなこと思ったんだ?
こう思いながら─────。
この男が、俺の女を奪いに来たってことか?
っつーことを自問した。
牧野と男が話しだした。
「お前、メシ食っているのか?」
俺は、この男の声を記憶していた。
ムカつく声だ。
あの時もムカついたが、今?
あの時って、いつだ?
この男を見てから、俺の知らねー俺の記憶が溢れだす。
しかも、俺の女っつーのを話し出した。
俺に女なんていねー。
それなのに、こいつらは─────。
俺の女が、スタイルが良いだとか、顔が良いっつー話をしだした。
「道明寺の付き合っている人のことなんて、あたしは知らない。」
っつー牧野の声に、
もう一人の俺が、必死になって訴えてきた。
そんな奴、いねー。
そんな女、知らねー。
お前は、誰のことを言ってんだよっ!
しかも、この男が─────。
「女の本性に気付かねーで、スタイルと顔で女を選ぶのは、ヤリたい盛りのガキのすることだ。」
なんてことを言ってきた。
俺は、ヤッてねー。
そうだ。
俺は、スゲー大切にしていた女がいたんだ。
大切で、守りたくて、
振り向いてもらいたくて、
俺だけを見てもらいたかった。
何度も逃げられて、
永遠に手に入らねーって思っても、
諦めきれずに、追い求めていた女がいた。
この男は─────。
俺に似ているっつーので、寄越したんだ。
誰が、なんの為に寄越したんだ?
スゲー嫌な記憶が、どろって俺の頭の中から流れ出した。
それと同時に、
俺の頭が、割れるような痛みに襲われた。
ズキズキと、頭に痛みが走る。
「泣けよ。俺の前でまで、我慢するな。」
亜門の声がした。
亜門…。
そうだ、この男は国沢亜門。
俺に似ているっつー理由で、ババアが寄越したんだ。
さっきからの頭の痛みは、異常な程、ガンガンしだした。
しかも、頭だけじゃなく、心臓まで痛くなりだした。
「今は泣かない、後で泣く。」
っつー牧野の声。
泣かないでくれ。
お前の泣き顔なんて見たくねー。
頭が割れるように痛い。
これ以上、耐えられねー。
それなのに、牧野は話しだした。
「あのね、今からあたしが話すことに、何も言わずに聞いて欲しいの。
えっと…道明寺の代わりになってもらってもいい?」
止めてくれっ。
そいつは、俺の代わりになんてならねー!!
「ありがと、道明寺。道明寺と過ごした時は、かけがえのない時だった。バイバイ。」
今にも泣きだしそうな牧野の声に─────、
俺の心が、張り裂けそうになった。
牧野が俺に別れを告げたのを、
第三者として見ているような不思議な感覚。
そして、牧野は亜門の胸に飛び込んだ。
「どうして、あたしのことだけ忘れてしまったの?」
亜門の胸で泣いているのは─────。
牧野だ。
道明寺の全てを捨ててでも、手に入れたかった女。
全ての記憶が戻った時、
俺は猛烈な眩暈と頭痛で、意識を失ってしまっていた。
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更新が遅くなってしまい申し訳ございません。