プラマイゼロ±

 某美少女戦士の内部戦士を中心に、原作、アニメ、実写、ミュージカル等問わず好き勝手にやってる創作、日記ブログです。

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2012-09-12 23:58:38 | SS






 その日は亜美の誕生日パーティーを目的に、火川神社に集合の予定だった。

 祝われる張本人の亜美といえば、いつもより早くに目が覚めて、いつもより入念に友人たちに会う準備をして、それでも待ち合わせ時間にはずいぶん余裕があることに気付き苦笑する。単語帳をめくってみたり参考書を読み返してみたりしてもどうにも落ち着かなくて。
 もちろん普段からいつもの友達に会うのは楽しいけれど、今日は殊更。自分の誕生日というより、自分のために誰かが何かをしてくれるという実感に、始まる前から心があたたかくなる。中学生の時に仲間たちと出会って、もう高校生になったけど、変わらずきっちり予定を揃えて祝ってくれることも。

 いつもなら、少しでも時間があれば何かを脳に詰め込もうとしていた。でもその日は妙に落ち着かなくて、亜美は勉強を諦め少し早めに家を出ることにした。




 亜美は家を出て、時間つぶしに十番商店街を特にあてもなく歩いていた。
 多少早く神社に行ったところで追い返されるということはないだろうが、やはり神社では都合も準備もあることだろう。だが店のショーウィンドウを見てもどうしても落ち着かず、時間が経つのはこんなに遅かったのかと一人で苦笑するばかりで。

 居心地の悪い空間にいるときは、それこそ時間が経つのは嘘みたいに遅く感じる。別にそういう状況には慣れていたから、頭の中で計算式でも唱えていればやり過ごせた。だが、なにかが待ち遠しいときも、やっぱり時間が経つのひどく遅く感じる。やっかいなのは、そういうときは計算式もなににも集中することができないことで。

 こんな感覚は、仲間に出会ってから。全員でなくても仲間内の誰かしらにはほとんど毎日顔を合わしているというのに、やっぱり、それでも。

「(早くみんなに会いたいな)」

 勉強や読書に集中しているときや、それこそみんなといるときは時間はあっという間に過ぎていくのに。
 何度も道端で腕時計を確認して、通りすがりの店に入ってみても商品が目に入らずそわそわするばかりで。そしてあまりの落ち着かなさにやっぱり一人で苦笑して、そうしてまた時計を見ることを繰り返している。

「(…本屋でも行こうかしら)」

 あまりに落ち着かなくて、少し冷静になろうと自分に言い聞かせて、少し遠めの書店に行くことを思い立った。歩いて15分ほどはある距離だが、目的があったら少しは落ち着くだろうと亜美は緩く考え、足の向先を変えた。

 そのときだった。

「むぐっ…」

 長く戦士として戦ってきたから、レイほどではないにせよ、亜美は多少は不穏な気配というものに慣れているはずだった。だがそれが慢心だったのかもしれない―亜美は唐突に後ろから口を手のひらで抑えられ、自分がいた場所のすぐ斜め後ろの建物の隙間に、ほぼ無抵抗で引っ張り込まれる。抵抗の暇はなかったが、自分以外の意志で流される視界に通行人の目線が自分にないことだけ、亜美は確かに確認した。

 狭く暗い建物の隙間、冷房の室外機のぬるい風を浴びながら、亜美は自分が囚われてる事実と、自力で逃げなければいけない事実、そしてここから逃れる方法を即座に思案する。

「おい、おまえ!金貸せ!」

 だが自分の頭上に振ってきた声が、亜美の思考を散らせる。現実離れした敵とばかり戦ってきたせいか、どうもそちらの可能性にばかり思考が行ってしまいがちだが、どうも相手は普通の人間のようで。
 これはおそらくカツアゲというやつか、と気づく。考えれば妖魔などよりそういうガラの悪い人に狙われる方が、はるかに現実的だろう。手のひらと密着してる体つきから考えるに、若い男だ。

 とにかくこれで変身して問題を解決するわけにはいかなくなった。亜美がさほど抵抗していないことを悟った亜美の体を捉えていた手は、意外にも紳士的な手つきで亜美の体を離す。そして、ゆっくり正面を向かせた。

 相手が一般人であれ、カツアゲは間違っている。そういうことはお断りです、もし事情があって困っているのならまず警察へ―そう亜美は真っ当な言葉を出そうとした。

 だが。

「頼む水野!金!金貸してくれ!」

 その人物は顔見知りで同級生で、何より今をときめくスーパーアイドルであるその人。狭い路地裏で室外機の風に髪をなびかせ、サングラスはしていたが一般人にばれないのか不安になるほどのわかりやすい格好で、その人物は亜美に向かって頭を下げた。

「…せ、星野くん?」

 ライツって意外と売れてないのかしら。亜美はそんな見当違いのことを一瞬だけ思って、恐々星野の顔を覗き込んだ。









「悪いっ!助かった!」

 今度は暗い路地裏ではなく、街の片隅にある公園のベンチの上、太陽を浴びながら亜美は星野と二人で座っていた。学校では同級生とはいえ、公共の場で星野とましてや二人きりでいる状況に違和感を抱きながら、亜美は曖昧に微笑んだ。

「でも、よかったわね、星野くん…その、言い方は変だけど、私に会えて」
「ああ、もう本当助かった!なんか水野がふらふらしてんの見つけたから…いやほんとありがとな!」

 お礼を言って、しかし亜美の方を向いていない星野の視線はもっぱら目の前のファーストフードの袋に注がれていた。これは先ほど亜美が十番商店街にある店で適当に買ってきたものである。
 要は道端で一文無しの空腹状態で困っていた星野が、偶然街中で見かけた亜美に泣きついた、というだけの話なのだが。

「財布、前のスタジオに忘れてきてなー。また明日行くとこだからいいんだけどさ」
「戻らないの?」
「どっから嗅ぎつけたんだか、スタジオの周り出待ちのファンがすっげーいてさ…収録の時間ごまかして何とかこっそり出て来たんだ。まだいっぱいいると思うし、ちょっと捕まったら大変だから」
「アイドルも…大変なのね」
「ああ、で、またあとで大気や夜天と合流して次のとこ行かなきゃいけないんだけど、ちょっと腹ごしらえでもしていくかって思ったら財布ないのに気付いてな。ないって思ったら余計腹減ってきて」
「ふふ、もうわかったわ。でも、いきなり金を貸せ、だからさすがにびっくりしたわ。カツアゲかと思っちゃった」
「いやー悪かったな。でもあんまり変装してないから道端で大声で呼ばれたりしたらまずいと思ったし、いざおまえ捕まえたらもうせっぱ詰っちゃって」

 名指しで助けを求めて来られて無視するほど、水野亜美はろくでなしではない。
 だが、たとえお金を貸したところで星野がろくに変装もせずファーストフードなどに飛び込んだら変に目立つのではないか、という考えから、亜美は自分が何か買ってくるから待つように、と星野に頼むことにした。そして適当に買ってきたものを持って、今は商店街から少し離れ人通りも落ち着いた公園の隅のベンチにいるわけで。

「じゃあ…これ、お口に合うか分からないけど…って、私が作ったわけでもないけれど、買ってきたから…どうぞ」
「おう」

 星野は本当にせっぱつまっていたらしく、亜美と話しながらも両手は器用にハンバーガーの外袋をはがしていた。そしてためらいもなく大口でかぶりついていく。
 勝手なイメージだが、アイドルもそんな風にものを食べるんだ、と亜美は妙に感心した。仲間内ではうさぎや美奈子もかなりよく食べる方だが、それでもまず男とは口の大きさ、動き、手の広げ方からして違う。決してがさつな仕草ではないが、食事に関しては友人の姿ばかり見慣れていた亜美には少し新鮮な光景だった。

「おれ、ハンバーガー好きなんだよ。ありがとな」
「そうなの?」
「あれ、好物とかいろんなプロフィールに書いた気がすんだけどな。つーか水野、お前スリーライツのファンクラブ入ってんじゃないのか?」
「入ってはいるけど…ごめんなさい、本当だったのね。好みのものとかはスポンサーの都合とかも考えた返答だと思っていたからあまり本気にしてなくて。単にすぐ買えそうなもの選んじゃった」
「いや、その辺はわりと自由にさせてもらってるし、好きな食い物くらい嘘つかねぇよ?」
「そうなの…」
「一度にパンとか肉とかまとめて取れるから時間ない時も重宝するし、片手で食べられるから台本とか見ながらだと便利なんだよな。それにうまいし」
「そうなの?」

 そこで亜美は改めて瞬きひとつして星野を見る。商品の中では大きいものを買ったつもりだが、すでに半分以上食べ進んでいる。話しながらよくそんなに早く食べられるな、とも思う。好物ということもあるだろうが、日頃の忙しさゆえもあるのだろう。
 確かいつだったか、自分も経験がある。人に思わせる方ではあったが。

「星野くん」
「んー?」
「私もね、星野くんと似たような理由でサンドイッチが好きなの」
「へえ?」
「まとめて栄養が取れるし、片手で食べられるから、お勉強しながらでも便利でって…それでうさぎちゃんに器用だねって言われてそうかしらって思ったけど、今星野くん見てたらちょっとうさぎちゃんの気持ちが分かったわ」
「おだんごが?」
「ええ。でも、私にはハンバーガーは片手で食べるには少し大きすぎるし、今こうやって見てたら星野くんって器用に食べるなって」
「そりゃ男と女じゃ手とか口の大きさが違うだろ。おれはアメフトやってるから握力結構自信あるしな」
「そうだけど…やっぱり、頭で考えるのと見るとじゃ違うんだなって」
「なんだよ、人が食べてるの見るのそんなに楽しい?」
「ええ、楽しい。こんなこと言ったら失礼かもしれないけど…」
「おまえ変わってるな」

 星野のからかうような声に亜美は苦笑する。さっきまでは、会うことすら想定していなかったというのに。
 同級生と言っても、やはりアイドルという壁があったようにも思う。うさぎを介してそれなりに顔を合わすことはあっても、やっぱり同級生で。こうやって二人きりになって話をするなんて考えもしなかったし、こうやって笑いあうことも。

 もちろんきっかけはうさぎであることは間違いない。だが、それでも、彼は自分の名前を憶えてくれていたし、偶然とはいえ頼ってくれたという事実が。

「あ、水野」
「え?」
「金は明日学校で必ず返すから…これ、いくら?」
「いえ、そんな…学校でお金渡してもらってるところなんて誰かに見られたら、なんだか私が星野くんをカツアゲしてるみたいに見えそうだし」
「どこの誰が、おまえがおれをカツアゲしてるように見るんだよ」
「そんなのわからないわよ?」
「おい…」
「ふふ、冗談よ。でも、本当にお金はいいわ。困ったときはお互い様だし…こうやって星野くんと話してるだけで楽しいし」

 そう、アイドルだから遠かったけど。
 こうやってゆっくり一対一で話して、食事をするところを見届けて、普通の友人同士みたいに笑って―どこにいても居心地の悪かった時期と比べると、こうやって偶然会っただけの面識がある程度の人と微笑みあってる自分は、ずいぶん変わったと亜美は思う。

 やはりきっかけはうさぎたちで。そうやって、出会って、仲良くなって信頼し合って一緒にいて、彼女たち以外の仕草を見て新鮮な驚きを覚えるくらいにはずっと一緒にいて―そして、少しは成長できたのだと思う。
 会話の術を覚えて、勉強や正論以外の自分の意志を伝えられるようになって、こうして仲間や身内以外の人と取り留めもない会話で笑えるようになった。

「じゃあ今度はおれがハンバーガーおごってやるよ。ちょっと遠いけど気に入ってる店あるから、そこ行ったらおまえもサンドイッチからハンバーガー派になると思うぜ」
「本当?楽しみにしてるわ」
「あ、これ社交辞令じゃなくて本気だからな!大気や夜天はつきあってくれないけど、ほんといい店だしおまえにも知ってほしい!」
「え…」

 身を乗り出すような星野の態度に、亜美はまた瞬きを繰り返す。
 きっかけは偶然で、でもおまえにも知ってほしいという言葉は亜美には嬉しかった。自分が使命も勉強も何もない場所で認めてもらっている感覚が。急に予定が動き出す事態には少し困ったけど、それこそ杓子定規で生きてきた亜美にとってはこの感覚は、確かに少しの困惑と大きな喜びをもたらした。 

「おれこの後インタビューの仕事一本だけ残って、二時間くらいで終わると思うんだけど…そっからフリーだけど、おまえは空いてるか?大気が金持ってるから合流したら借りられるし」
「あ…いえ、今日はこれから予定が」
「そういや、おまえひとりでふらふらしてたけど、どこか行くとこあったのか?時間大丈夫か?」
「え?あ!」

 亜美は慌てて時計を見る。
 間に合わない時間ではないが、確かに迫っては来ている。あれだけ落ち着かなくて、あれだけ時間の経過を鈍く感じるほど待ち遠しかったものが―確かに来ている。だが、今はここから去りがたいと思っているのもまた、事実で。
 こんなとりとめもない会話に、胸を躍らせている事実。もう独りではないはずだけど、やっぱり一人でいる時間よりは。

「心配してくれてありがとう星野くん。急いではないけど、実はこれからうさぎちゃんたちと誕生会があって…ごめんなさい。今日は、無理だわ」
「そうか?いや、おれも無理やり捕まえたうえ引き留めて悪かったな。今日おまえらの仲間内で誰か誕生日なのか?」
「…えっと、私が」
「え、水野が!?」

 星野はそこで目を剥いた。確かに偶然会って捕まえた同級生が誕生日だったという偶然は驚くべきものだろう。
 別に言うつもりもなかったが、話の流れで隠すほどでもない。だがかえって気を遣わせてしまうのではないかと亜美に少しの後悔がよぎったが、そんな亜美の心中に反し星野は気さくな笑顔を向けた。

「そっかー…水野今日誕生日か。おめでとう水野!」
「ありがとう星野くん」
「だったら尚更悪かったな、誕生日なのにとっ捕まえておごってもらったりして。何かしたいんだけど今持ち合わせないし…」
「いえ、そこは本当に気にしないで。さっきも言ったけど困ったときはお互い様だし、そう言ってくれる星野くんの気持ちがすごく嬉しいから、それで十分」
「ふーん…それってさ」
「え?」
「おれがアイドルだから?」

 亜美は頭の回転は速い方だ。だが残念ながら人間関係に関してはやや疎い部分がある。だからわずかに下がった星野の声のトーンやサングラス越しに細められた目線には気づかなかった。そして言っている意味も潜められた真意も気づかなかった。
 ただ言葉通りに受け取った。

「いえ、星野くんと一緒にいて楽しいって今思ってるから」

 だから混じりけのない本音で返した。
 すると星野はサングラス越しの目を見開き、亜美の顔をまじまじと覗き込んで、そして一拍して、カメラに向けているものでも先ほど見せた人懐っこい顔でもない、亜美の知識をもってして形容できないような笑顔を見せた。サングラス越しなので尚更真意が読めなくて、亜美はそこでようやく自分が何を言ったか、を思案する。失礼なことを言ったかしら、なんてしばし考えて、結論が出る前に星野は声をあげて笑った。

「…おまえ、面白いやつだな」
「え、え…?」
「いや、まーわかってたんだけどさ。とにかくハンバーガー屋には付き合えよ。また予定合わせて…絶対だぞ」
「ええ…えっと、それは構わない…し、嬉しいけど」
「あとさ、悪いけどテスト前とかたまに勉強見てくんないか?授業とか気が付いたら進んでるし、大気はぜんっぜん教えてくんねぇし」
「え?それも…その、私でいいなら…」
「おまえがいいんだよ。成績トップって言うのは知ってたけど、それとは別で」
「え…」
「おれもおまえと一緒にいたら楽しいから」

 そう言って、ハンバーガーの最後のひとかけらを飲み込んで、ペーパーで口を拭って星野は立ち上がった。その言葉の意味をかみしめる前に、潮時かと感じ亜美も立ち上がる。
 確かに待ち遠しかった仲間と会う時間、でも、ここにいる時間が惜しいと思う気持ちも確かにある。これは以前経験がある。むしろ、ずっと大事にしてきた。

「じゃあ星野くん、気を付けて。ハンバーガー屋、楽しみにしてるわ」
「おう。おまえも気を付けて行けよ。またおれみたいなやつにとっ捕まらないように」
「ええ。カツアゲされないように、ね」
「…じゃあな。ごちそーさん」

 苦笑いで返し、ファーストフードの袋を掴んで亜美に背中を向ける星野。亜美はその背中を見送りながら、自分の心の内を分析していた。
 彼といて楽しくて、もう少し一緒にいたい感覚。次の約束がある現実に心躍らせる感覚。これは仲間たちから教わって、ずっと、亜美の中で一番大事な感情だった。

「あ、水野!」

 これは友達ができた、あのときの喜び。

「星野くん?」

 数メートルも離れていないところで、星野は唐突に振り返る。なにかあったのかと亜美が首をかしげたところで、星野はためらいもなく戻ってきた。そして悪戯な笑みを浮かべて、先ほど亜美を路地裏に引っ張り込んだように亜美の口元に手のひらをぶつけてきた。

「ぶっ…」
「次はちゃんとしたのをやるから!今日はこれで我慢してくれ!」

 先ほどのように死角からならともかく、真正面からの攻撃をかわせなかった事実に亜美は顔をしかめる。だが不快なのは自分の不覚であって星野の行動そのものではなく、そして手のひらを亜美の口に押し付け笑顔を受ける星野の顔は、昔から見知った友人のような柔らかさがあった。

「誕生日、おめでと…な!」

 唇に触れるのは、先ほどのように手のひらではない。もっとかさかさと水気のないものだ。亜美が慌てて手を添えるのを確認してようやく手を離した星野は、今度こそ背中を向け足早に去っていく。
 唇に押し付けられたものを見て、亜美はすでに遠い星野の背中を思わず追いかけそうになった。頭に熱が上った。悪い冗談だと思った。

 だけど、そんな風にふざけ合えるような相手と思ってくれていたことに喜びを覚えているのも否定できなかった。

「…星野くんって」

 先ほどハンバーガーを食べた後、口を拭いていたペーパー。唇に押し付けられた部分は、きれいにケチャップのキスマークがあった。アイドルが、たかが同級生やそこいらのファンにやるには、あまりにも度が過ぎている。
 だけど友達なら―いつもの仲間たちのことを考えて、その行動を振り返って―そう。無遠慮ともいえるような踏み込みようも考えると。

 これは偶然というには過ぎた現実だ、と思った。自分にはもったいないくらいだとも。でも誕生日ならこういうことが起こるのかもな、なんて亜美は非科学的を思ってひとり苦笑する。ただの同級生が、こうやって、次の予定を合わせる友達になれたのなら。




 それがとても誇らしい。亜美は時計を見、もう遠慮も我慢もする必要もない残り時間で、ただ少しでも早く仲間に会いたい一心で神社までの道のりを走った。
















                         **************************


 盛大に遅れましたがおめでとう亜美ちゃん!あんま誕生日関係ないような気もしますが…すみません。

 この二人はなんとなく気が合いそうというか、きっかけさえあれば青ヅラ同士すごい爽やかな友情をはぐくみそうな気がして書いてみました。友達っつったら浦和くんとかもいたけど、まぁそれはそれで。



 ↓おまけ。




「おはよう亜美ちゃん、昨日の誕生日会は楽しかったわね」
「おはよう美奈子ちゃん。昨日はありがとう…今日は早いのね」
「亜美ちゃんにちょーっと聞きたいことがあったからねぇ」
「なに?お勉強のことかしら?」
「このスポーツ新聞見てほしいんだけど…」
「スポーツ新聞って…いったい…………あ!」
「芸能欄の一面にすっぱ抜かれてるわよ~これ目元にモザイク入ってるけど、セイヤとイチャイチャしてるこのブルーヘア…亜美ちゃんよねぇ」
「………目元にモザイクって、私まるで犯罪者みたいね」
「亜美ちゃんなのもイチャイチャしてたのも否定しないのね。んじゃー話は早いわ。あたしたちに内緒で、誕生日にアイドルと二人きりでイチャイチャしてた理由をじっくり聞かせてもらいましょーか。屋上がいい?」
「えっと、そ、それは…星野くんとは偶然会っただけで」
「偶然会ってアイドルとわざわざ人気のない公園で二人きりで話し合うわけ?まさか健全に砂場の砂粒を一緒に数えてたなんて言うんじゃないでしょうね」
「そ、それって健全どころか病的だわ」
「なら正直に白状しなさいよ~ほらほら~あたしたちが誕生会開くまで一体ナニやってたの~」
「(正直に言ったところで聞いてくれなさそうな顔してる…)」
「……あ、水野、いた!仕事と部活の予定考えたらおれ今日の放課後が一番都合いいんだけど、おまえは…」
「…せっ、星野くん!不用意にそんな話したら…!」
「…ははーん。亜美ちゃん、ちょっと体育館裏いらっしゃい。うさぎちゃんまこちゃんに…レイちゃんもホイッスルで呼んで話し合いましょう」
「ヘッドロックして私を引きずってる時点で話し合いのスタイルじゃ…首しまっ…うげっ」
「おまえら、それおれが水野に金渡すよりよっぽど犯罪臭い光景じゃねーか?」
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