プラマイゼロ±

 某美少女戦士の内部戦士を中心に、原作、アニメ、実写、ミュージカル等問わず好き勝手にやってる創作、日記ブログです。

1000Hitキリバン小説

2008-11-10 20:43:18 | キリバン・リクエスト
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 くるくる、くるくる。まことは後ろから抱きこんでいる亜美の髪を指で弄びながら、ただ、ぼんやりしていた。短くても軟らかく、それでさらさらと心地よく指に絡む髪は飽きが来ない。
 そんなまことを亜美は特に気にするでもなく、むしろ自らまことにもたれかかるようにして、体育座りのような姿勢でハードカバーの本に視線を走らせていた。
 休日だからと亜美の家に遊びに来ているまこと。そんな理由だけで一緒にいられるような関係。だからまことは亜美が本を読んでいても一向に構わないし、亜美とて特に気を使いもしない。
 二人だけの部屋で、緩やかに時間が過ぎていく。開け放した窓からは爽やかな風がカーテンを揺らす。特にお互い言葉も交わさなかったが、それを許しあえる距離感が心地よかった。
 ふと、亜美の髪を指に巻きつけていたまことの指が止まった。そのまま髪を梳くように指が流れ、そして―
「きゃっ・・・ま、まこちゃん!」
 それまで読書に集中していた亜美が、顔を真っ赤にまことの方に振り返った。あまりにいきなりのことに、まことの方が面食らった。
「え、亜美ちゃんどうしたんだい?急に」
「ど、どうしたって、まこちゃん・・・!」
 この様子だと自分は亜美に何かしたのだろうか、とまことは思う。しかし自覚無しでの行動だったため全く何をしたかわからない。
「え・・・っと、あたし何かした?」
 何をしたかはわからなかったが、とにかく申し訳なく思いつつ頭をかく。そんな、本気で分かっていない様子のまことに亜美は拍子抜けしたのか、先ほどの悲鳴に似た声とは打って変わって静かに、声をすぼめて言った。もう、目さえ合わせない。
「・・・まこちゃん・・・み、み・・・」
「みみ?え、もしかしてあたし耳触った?」
 亜美は真っ赤で頷く。気づかないうちに指は意外なところに行っていたらしい。そういえばピアスを触ったような感触があるようなないような。まことは自分の指先を見つめた。
「・・・ごめん、亜美ちゃん。耳とか、嫌だった?」
 とりあえず謝っておく。自覚はないが、何かしら亜美の集中を妨げたのだろう。決まりの悪くなったまことは曖昧な表情を作る。
 すると亜美も曖昧な表情をした。怒っているわけではないようだ。
「・・・嫌、じゃないけど・・・その、びっくりしたから・・・」
「え、そんな思いっきりやっちゃった?ごめんよ」
「ふ、普通いきなり耳触られたら誰でもびっくりするわ!」
「・・・そう?」
「そうよ!」
 まことは微かに眉をしかめ、とりあえず自分の耳たぶに触れてみる。まず癖のように薔薇のピアスを、花びらを確認するようになぞる。そしてその周辺の自分の皮膚に。確かに意識しなければ気付きもしないが、それなりに敏感な場所なのかもしれない。
 ―よく考えたら、髪の毛とかくすぐったく感じるし。いきなり息とか吹きかけられたらびっくりするもんな。
 まことが思考の海に沈んでいる間に、亜美は再び読書の世界に戻っていた。言いたいことを言って気が済んだのか、それともよほど読書が佳境に入っているのか。とりあえずまことも先ほどまでしていたことを続けようと思って、はた、と気付く。
 ―あたし、何してたっけ?
 とりあえず亜美の髪を指でくるくるいじって、そして―
 耳に触った、と言うことか。先ほどは無自覚にやってしまったが、一度意識してしまうと今度は耳に釘付けになってしまった。そして、つい覗き込むように凝視してしまった。
 ―三連ピアス。
 初めて会ったときは左右に一つずつだけだったピアス。真面目そうなのに、と思うよりも早く、特に凝った様子もないシンプルなデザインが彼女らしくてよく似合っている、と思った記憶がある。
 そして仲良くなって。気がつけば左右に三連のピアス。
 揃って青色。
 彼女の、色。
 ―ただ真面目なだけじゃ、ないもんね。
 ふふ、と笑いがこみ上げる。彼女は確かに生真面目で、所謂『優等生』と言うやつで。
 まこと自身、出会う前は、「水野亜美は天才で優等生」という言葉を聞いていた。「無表情で、周りを見下している」というような、やっかみとも取れるような陰口も一緒に聞いた。そしてそれを疑いも意識さえもしなかった。
 でも―付き合えば付き合うほど彼女の意外な一面が見えてきた。真面目なだけでなく意外と茶目っ気があったり、実は寝起きが悪かったり。子どもが好きで、すごく優しくて、周囲への気配りも出来る。持って生まれた頭脳に甘んじることなく努力を怠らない。それで頭のいいところを鼻にかけることもない。
 ―たまに暴走しちゃったりするけど。でも、そんなところが彼女『らしく』て―
 そして気がつけば、ピアスの穴が増えている。でもそれを特に意識させないほど自然に似合っていて。
 そして―
「・・・まこちゃん!」
「えっ何!?」
 亜美の呼びかけにまことの意識は再び現実に戻る。自分でもびっくりするほどの上ずった声が出た。慌てて視線を亜美へ向けると、今度は、亜美は振り返るだけでなく身体ごとまことの方に向き合った。
「・・・ま、また耳触ったでしょ!」
「うぇ?」
「うぇ、じゃなくて!」
 そう言う亜美の顔はそれこそ耳まで赤く染まっている。またもや無意識に指が耳に伸びていたらしい。やはり、自覚はない。
「・・・もう、いきなり触らないでって言ったじゃない!」
「・・・ご、ごめん」
 取りあえず再び謝る。しかし、二度も嫌がることをしてしまって申し訳なく思う反面、自覚がないので怒られていてもどこか他人事のように感じてしまった。それどころか、怒っている亜美がとても可愛いとさえ思ってしまう自分がいて、どこまでも彼女が好きなのだと改めて思う。
 思わず、また笑みがこぼれてしまった。
 そんなまことに、亜美がたじろぐ。
「ど、どうして笑うの!?私、怒ってるんだけど・・・」
 自分の内など知る由も無い亜美が意外そうな表情で反論する。当然だろう。しかしまことはそんな風に色々な表情を見せてくれる亜美が愛しくて―
「あはは、ごめんごめん。そのまま怒ってて。怒った亜美ちゃん可愛いから、そのまま見てたい」
 掌をひらひらとさせて笑う。そんな様子のまことを見て、亜美は更に頬を赤く染めた。
「ま、まこちゃん、わざとでしょ!もう知らないもん!」
「・・・それは困るかも。そもそも、あたし、わざと触ったわけじゃないもん」
「無自覚ならもっと悪いわ!」
 亜美はさっと立ち上がる。いつも見下ろす青い瞳が上にあって、まことは目を数回しばたいた。本人は必死で怒った表情を作っているのだろう、眉間に皺がより、唇を固く結んでいる。
 まことは、こんなときに不謹慎とは思いつつも、普段ではなかなか見られない表情を、普段とは違う角度で見つめる。青い髪に青い瞳に青いピアスに、赤く染まった頬が、耳がコントラストのように映えて―
 見惚れた。
 そして、また、笑ってしまった。むしろ、思い切り微笑みかけるように。怒っている人にする表情でないことは分かっていたが―それでも、つい、笑ってしまった。そして、素直に思った事を口にする。
「・・・かわいい」
「・・・っ!まこちゃんのばかっ!」
 その反応は、IQ300の頭脳にも予想外だったのだろう。亜美はぐるぐると混乱した表情をする。そして次に何を言うかを自慢の頭脳ではじき出そうとしてるのか、口元にそっと手をやる。
 ―結構、百面相なんだよね。
 くるくると表情の変わる亜美を見て思う。初めて会ったときから、彼女が無表情なんて嘘だと思った。案外よく笑う子で、そして一緒にいる時間が増えれば増えるほど色々な表情が見えてきた。勿論怒りもするし、こうやって頬を染めて恥らったりもする。
 ―可愛い、よね、やっぱ。
 相変わらずへらへら笑ったままのまことに対し、亜美の頭脳は一つの結論をはじき出す。口元から手を下ろすと、そのままふいと顔を背け―
「亜美ちゃん、ちょっと、どこ行くの!?」
「もうまこちゃんなんか知らないもん」
 声は冷たい。まずい、やりすぎたか。まことは慌てて立ち上がって追いかける。
「ま、待って亜美ちゃん!」
 声をかけても振り向こうともしない亜美に、思わず手首を掴む。そのまま何も考える間もなく勢いよく引っ張って―
「きゃっ・・・」
 バランスを崩しよろめく亜美の身体を胸で受け止め、お腹辺りで手を回し自分の身体に貼りつけるように固定する。
 そして、耳元で、できるだけ低い声で囁く。
 ―こうやって真剣に謝れば、きちんと聞いてくれるはずだ。そんな風に嫌がられたかったんじゃない。ただ、好きだから。色んな表情が見たかったから。
 亜美は特に暴れる様子もなく、むしろ固まってしまったように動かない。
 ―真剣に。彼女が逃げないできちんと自分の思いを聞いてくれるように。自分の言葉が届くように。
「・・・ごめん亜美ちゃん」
「・・・う、ぅー・・・」
 ピアスに唇が触れるほどの距離。
「・・・そんな風にさせたかったわけじゃないんだ」
「・・・ま、こ、ちゃ・・・」
「亜美ちゃんに置いてかれたら、あたし、どうすればいいのさ?」
「や・・・ご、め・・・なさ・・・」
 亜美の声は掠れていた。何故亜美が謝るのかは分からない。でも、まことはそのまま亜美を抱きこんだまま、再び座り元の姿勢に戻る。むしろ、更に密着したままで。ぎゅう、と音がするほど抱きしめた。
「どうして亜美ちゃんが謝るの?このままじゃ、あたし、亜美ちゃんをいじめてるみたいじゃないか」
「だ、だから・・・ま、まこちゃ・・・はな、して・・・」
「離したら亜美ちゃん、どこか行っちゃうだろ?そんなの、いやだ」
 亜美は今度は身体を捩り、まことから離れようとする。しかし、そこは怪力を誇るまこと、力の差は歴然でびくともしない。
 力でどうにもならないと悟った亜美は更に弱い声を出す。
「どこ・・・も、行かないから・・・は、な、して・・・」
 その声は涙混じりだ。その懇願にまことは眉をひそめた。
 ―そんなに、嫌なの?
「・・・本当?」
「・・・うん、だから・・・」
 まことは亜美の懇願に負け、ゆっくりと手を放す。亜美はふいと離れると、静かにまことの前に向き合って座った。顔は伏せたままだが、両手で押さえている耳が赤いのだけははっきり分かった。足と足が触れてしまいそうな距離で、沈黙が耳朶を打つ。
「あみ、ちゃん・・・」
「・・・・・・・・」
「亜美ちゃん、あたし・・・」
「その、みみ・・・」
 亜美はぽそりと言った。風の音に混じりそうな声だ。それでも二人きりの部屋、まことは聞き逃さない。
「耳?」
「みみ、すごくくすぐったくて・・・嫌じゃないけど・・・触られたり、耳元で何か言われたりしたら・・・」
 ―ああ、くすぐったいから離れたかったのか。
しっかり自分の声を聞いて欲しいがための行動が逆効果だったと知る。触れた訳ではないにせよ、やはり耳と言うのは敏感なのだ。そして、嫌われたわけではないことに胸をなでおろした。
 そして自分の行動を省みて考える。くすぐったい。嫌と言うわけではない。敏感な場所。そんな亜美がこんなに頬を染める理由。
 まことの頭に一つの結論が浮かぶ。IQ300の頭脳がなくとも簡単にはじき出せた。
 亜美の顔を両手で挟み自分の顔を見させる。羞恥に頬を染め、微かに涙さえ浮かべたその表情に、自分の出した答えが確信の域に達した。
 まことは決まり悪そうに言った。
「あー・・・もしかして亜美ちゃん・・・感じちゃった?」
「・・・ばかっ!!」
 即座に反論された。しかし、それは―
「・・・否定しないってことはそうなんだね」
「・・・・・・!」
 自分から自滅してしまった亜美はもうまことと目を合わせない。真っ赤な顔を必死で逸らし、まことの手を外す。そしてそのまま再びまことに背を向けてしまった。
「・・・まこちゃんのばか・・・」
 弱々しい声に精一杯の虚勢。二人の間を風がすう、と抜けていく。亜美が床に置いた開きっぱなしのハードカバーのページが緩やかに進んでいった。
「・・・ごめん亜美ちゃん。でもあたし本当にわざとやったんじゃないよ。耳触ったのも特に自覚なかったし・・・まさか亜美ちゃんが―その、そんな風になってるなんて思わなかったし・・・その、耳元で言った方がしっかり聞いてくれるかなって・・・ごめん」
 まことは素直に謝った。目の前の小さな肩にそっと手を乗せた。拒絶はされないがやはりこちらを向かない。
「その・・・もうしないよ」
「・・・ごめんなさい」
 再び、亜美の方から謝ってきた。背中を向けられているため亜美の表情は全く分からない。まことは困惑しつつ、無言で先を促した。
「・・・嫌って・・・わけじゃ・・・ないの、ただ・・・」
「・・・え?」
 意外な言葉だった。確かに先ほども言った言葉ではあったが―本当は嫌がっているものだと思いこんでいたから。
「その・・・びっくり・・・したから」
「・・・そう」
 再び沈黙した。
 まことは背中を向けた亜美を、先ほど同様後ろから抱き込む。ゆっくり、静かに、あやすように腕を回した。
 亜美は耳まで頬を染めている。
 そんな彼女が―ひどく愛しい。まことは胸中にこみ上げてくる熱を感じつつ、出来るだけ落ち着いて言った。
「じゃあ亜美ちゃんは・・・いきなりでなければいいんだね?」
「まこちゃん・・・!?」
 亜美が怪訝そうな声を返す。まことはそれをあっさり無視した。もう、嫌われたなんて不安はない。それこそ花開いたような、何か最高にいいことを思いついた表情を浮かべた。亜美が見ていたら、「原理を見つけたアルキメデス」とでも表現しただろうか。だが残念ながら、亜美はそんな表情を見ることなく、まことの企みごとにも気付かないまま―
「じゃあ、あたし、今から亜美ちゃんの思いっきり耳触りますってことで。いきなりじゃないんだから、覚悟してよね?」
 そんな宣言に、反論する暇も無いまま―
「えぇ!?ちょっと待っ・・・!まこちゃん!」

 後ろから。耳たぶを遠慮がちに挟まれる。ピアスの周りをなぞられる。指先で軽く弾かれる。気まぐれで優しいその愛撫に―

「まこちゃんの・・・ばか・・・っ」

 
 床に置かれたハードカバーの本は、その日再び正しいページが開かれることはなかった。




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 鈍感まこちゃんと敏感肌亜美ちゃん(笑)メインとか言いながら当ブログ初のまこ亜美小説でした(苦笑)今後もっとまこ亜美(両思いも)増やしていければと思っています。

 では、ありがとうございました!まだまだ拙いですが、今後もよろしくお願い至しますm(_ _)m






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4 コメント

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マー坊様!! (ニシヤン)
2008-11-13 17:46:03
SS、最高です!!

リクエストで「無自覚まこちゃん」と「頬を赤らめる亜美ちゃん」としかお伝え出来なかったのに、ここまで素敵なまこ亜美を書いて頂けるなんて・・・。
1000番踏めて幸せです!

SS内容も本当ムフフ♪な感じでたまりません!!怒る亜美ちゃんと謝るまこちゃんって可愛らしいと思っているので、そんな二人も読めて満足度は2倍、いや1000倍です(^^)
そして亜美ちゃんの読んでいた本が随所で良い味出してますね~。憎い演出です!
二人の続きは脳内変換します、笑。

素敵なSSを書いて頂いたこととブログ内初まこ亜美のリクエストに応えてくださったこと、感謝します!!
まこ亜美以外のカップリングも楽しく読ませて頂いてますので、これからも素晴らしいブログ頑張って下さいm(..)m
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ありがとうございます(≧△≦) (マー坊)
2008-11-13 22:11:05
 ニシヤン様、感想ありがとうございます!

 こちらこそ素敵なリクエストを頂けてすごく楽しかったです!最後若干シモい方に行ったのでどうかなーと内心冷や汗タラタラだったんですが…最高だなんて言って頂けて転がりそうです♪何倍もやる気が出ます!

 他のカプ作品も読んでいただけているとの事で、嬉しいやら恥ずかしいやらです(笑)
 うちのブログ、扱いカプがまこ亜美以外はどマイナーな上に、まこ亜美だって亜美ちゃんの扱いがアレなので、結構ビクビクしてたのですが…もう自重しません(←

 では、コメントありがとうございました!今後ももっと精進いたしますので、よろしければお付き合いくださいませ!
返信する
コメントありがとうございます! (ニシヤン)
2008-11-13 23:59:04
SSはもう大満足ですよ!!イチャイチャな二人にニヤニヤが止まりません(#^^#)
次キリ番踏めたらもっとイチャイチャをお願いしようと企んでおります、笑。

まこ亜美以外のCPは自分の中で新しい風です。原点と共にこれからも楽しませて頂きたいと思っております!

それでは今後ますます素敵な作品達に会えることを楽しみにしています!!
返信する
m(_ _)m (マー坊)
2008-11-14 00:43:37
 ニヤニヤが止まらないと…申し訳ないです(?)

 次回作ではもっとニヤニヤしていただけるようがんばります!キリバンやリクエスト以外でも、喜んでいただけるような作品を出していきたいです。

 2000ヒットも目の前なので是非狙ってください(笑)一応ぞろ目や連番など任意の数字でも受け付けてますのでお気軽にどうぞ~。

 他カプ(まこレイや亜美美奈)は需要が無いと覚悟していたので、そう言って頂けると本当に嬉しいです!ハマって頂けるよう洗脳していきます(←

 では、今後もよろしくお願いいたします!ありがとうございました!
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