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各項目について、新しい情報を入手するたびに加筆修正し、前に出します。

兼元(孫六)

2005-11-11 23:32:30 | 刀工
 刀工の中でも、刀にさほど興味のない一般の人々の間でも一度くらいは名前をきいたことがあると思われる孫六(孫六は兼元家代々の通称)である。
 室町時代、美濃の鍛冶は備前鍛冶に次いで繁栄を誇り、関の和泉守兼定(之定)・赤坂の兼元はその代表とも言える刀工である。
 兼元は同名数代にわたり、その名跡は新刀まで及んでおり、各代の区別は困難である。

 初代兼元は、嘉吉明応年間の人で通称は太郎左衛門。初代孫六の養父にあたる。
 銘は「兼元」。
 業物。
 
 二代兼元は、明応年間の人で有名な孫六はこの人である。
 兼並の子で初代兼元の養子となった。
 初代兼定(親兼定)の門人とも言う。
 銘は「兼元」「濃州赤坂住兼元作」「兼元作」。
 最上大業物。
 
 三代兼元は、大永年間の人。
 孫六二代目、刃文の揃った三本杉が特徴である。
 銘は初銘が「兼茂」次いで「兼元」と切る。
 大業物。
 
 四代兼元は、天文年間の人。
 孫六三代目、刃文は揃った三本杉が特徴。
 銘は「兼元」「濃州不破郡住兼元」、山田住と切る物もある。
 大業物。

なお、「まこ六兼元」と銘を切った刀もあるが、これは初代の作ではないと言われている。
 
 兼元の特長は、「関孫六三本杉」と呼ばれる独特の刃文にある。


コラム
 関の孫六という表現をよく見かけるが、実際はどうなのでしょうか?
 関市は孫六は、関の人というように言っているようですが、わたしの手持ちの資料ですと、関ではなく赤坂の人のように見受けられます。
 この当時、美濃鍛冶の中心地は関で、その他に赤坂・蜂屋・西群等にも刀工は分布していたようです。
 一般には関身・関鍛冶といえば、当時の美濃物の代名詞的な物になっているようなので、その関係なのでしょうか。
 私自身はこの地にはあまり詳しくなく、赤坂がどこにあるのかすら実はよく知らないのですが……。
 資料によっては赤坂の兼元という表現をするもののもあり、私の手元の資料でも赤坂住や山田住の銘は見つかるのですが、関住というものは未だ未見です。
 一般に浸透していることが必ずしも正しくないことは、「村正、正宗の弟子説」などでも明らかですので、どうも一抹引っかかる物があるのです。


改稿予定
平成18年5月3日現在、様々な指摘と新しい資料の入手がありましたので、近いうちに大幅改稿いたします。
コメントをくださった方々、大変参考になりました。
ありがとうございます。


7 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
時代が違うんですけど (ととろ)
2006-04-28 13:52:28
これ 時代がずれてますけど

初代兼元は明応ですよお
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「校正古刀名鑑」に疑問 (通りすがりの人)
2006-04-30 14:36:48
戦国武将が二代兼元(孫六)の斬れ味を実証していますので「古今鍛冶備考」で格下げというのは如何なものでしょうか。

全部の刀を試したわけではないでしょうから信憑性に疑問があります。



初代兼元を「孫六」というのも如何なものでしょうか

。刀剣鑑定機関で最高権威を誇る日刀保では「校正古刀名鑑」の掟に従っており、二代兼元だけを兼元(孫六)と表記しており、初代は 兼元 後代は 後代兼元 新刀は 兼元(新刀)と表記しております。
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訂正 (通りすがりの人)
2006-04-30 15:04:13
×「校正古刀名鑑」に疑問

○「古今鍛冶備考」に疑問

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「古今鍛冶備考」原文 (通りすがりの人)
2006-04-30 16:48:04
「古今鍛冶備考」(山田浅右衛門著)に4通りに定められており,最上大業物13工,大業物22工,良業物54

工,業物91工,追加の部,66工で,合計246工です。



「業物列位・番付表」

           

「最上大業物…13工」

元重長船 秀光長船 初代兼元・二代兼元(孫六) 正家三原 長幸多々良 忠吉初代・陸奥守 長道初代助広大阪・初代 国包初代 長曾祢興里・興正。



「大業物…22工」

祐定長船(永正・与三,彦兵衛,天正・藤四郎) 盛光長船 康光長船 兼・関・和泉守 友重文明・藤島

兼明高天神 兼則元禄・加州 国広堀川 国安堀川 包貞言之進 勝国加州・初代 国康肥後守・初代 忠広二代・近江大掾 助広角津田・五字同位 国貞和泉守・初代 正清主水正 安代主馬首 信吉越前守 兼若加州・初代貞重対馬守。



「良よき業物わざもの…54工」

盛景 宗光左京進 勝光右京亮・次郎左衛門 則光助右衛門・五郎左衛門 祐光嘉吉頃 忠光初代・二代・三代目・彦兵衛 法光初代・二

代 祐定永正・九代末 秀助 家助次郎左衛門・二代 以上,これらは全て備前国長船住人。

兼定三代目 兼房文亀 兼常福四郎 正利板倉・初代・二代 氏房初代 以上は濃州・関。兼植越前・初代 兼則越前・兼法同位 網広相州・初代 正真金房行長豊後高田 吉道京・大阪・初代丹波 助直津田 是一初代 貞次伊勢守 忠網一竿子 康継初代・二代政長会津 兼定会津 国儔越後守 直道丹後守 兼重上総介 兼植越前・初代 重国南紀・初代 吉広伊勢大掾 光平・常光・宗弘以上・日置 康広初代 正則初代・大和大掾 国次山城大掾 国重大与五 国包二代目 忠重奥和泉守 吉門武蔵守 久道初代 国宗岡山 安定大和守 忠行大阪・初代。



「業物…91工」

助広丸津田 真改井上 兼中武蔵守 包保左 宗道下坂・宗次同位 真了二代目・作之丞 秀辰初代・山城守 国輝小林 守久東連 重義埋忠 国助初代・河内守 兼友会津・初代 貞則鈴木 国貞会津 正弘法城寺 歳長初代・山城守 歳長初代・陸奥守 忠国因州

・初代 輝広芸州・初代 国助二代・三代・河内守久

道二代目・金四郎 吉道初代・二代・大和守 国光摂津 吉国土州 包貞初代 貞広高柳 広政大阪 吉国鬼塚 国綱相模守 重包信国 重貞信国 金道初代・伊賀守 兼植江戸 正俊初代・越中 汎隆伯耆守 紀充筒井 助高大阪 宗重初代常陸 清平八幡山 重高越前・初代 忠吉四代目 国義小浜 包国初代 継広下坂 国武郡山 友常関 継平初代 貞重出雲守 信吉京・初代 忠国肥前・初代 金道初代・二代・和泉守 国清越前・初・二代 国重鬼神丸 行広肥前・初代 貞行高田・初代 重行高田 包保右 統行初代 吉武初・二代 康永大阪 安倫二代目 国維大阪 清光播磨大掾 清光勝兵衛・五郎左衛門 春光十郎左衛門 照重下原 勝家加州・初二代 信高初代・二代・尾張 政次金房 吉正上野介 長綱大阪 祐国花房氏

重初代 一法江戸 盛国千手院 国路初代 清実二王兼景作州 国幸大阪 正広肥前・初代 助信大阪 本行初代・松葉 正永備中大掾



「追加…66工」(この中には大業物・良業物へ加うべき物もあれど,余地なく左に記す)

賀光長船 兼音関・彦四郎 経家長船・初二代 政常相模守 包俊手掻 康春相州 寿命天正 国房宇多 国吉但州・法城寺 助重出羽守 為康初代・石堂 高平越中守 兼定上野守 宗吉下総大掾 祐定長船・七兵衛 兼安相模守 兼則関・永正 盛方平高田 兼道天文 行光加州・文亀 広長小山関 家吉加州 弘包初代 安行大和守 兼貞関・弘治 国富日向 清左佐藤 吉家加州・初代 国平奥氏 正近貝三原 正国同田貫 鎮政甲賀・鎮忠同位 国行高田 国長赤坂千手院 在光長船 重吉波平 綱家相州 久光長船 為利会津 吉成播磨大掾 治光長船・治郎兵衛 広辰関・初代 一峯初代 兼辰関・天文 重国二代・金助 永重仙台・初代 兼正越前 正全豊後守 兼巻加州・初代 兼国関・延徳 寛安日向 国輝与州 長俊関 広隆広島・初代 包定河内守 家忠加州 国平川崎 輝行高田 助隣水戸・江戸 義国三条堀川 輝政陸奥守 道辰若狭守 正俊石堂 久国土州。



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従来どおり「関の孫六」が正しい。 (美濃)
2006-05-01 13:30:52
関鍛冶の茎の仕立ては入山形、鷹羽鑢、檜垣鑢を用いています。これに対して赤坂鍛冶は片筋違鑢といって平地を切り鑢、あるいは勝手下がり鑢とし、鎬地を筋違鑢になっています。茎の仕立てにも刃上がりの栗尻になっていて関鍛冶とはまったく異なります。銘に関しましても赤坂鍛冶には「兼」の字は絶対にありません。したがって関鍛冶と赤坂鍛冶とではあまりにも異なる特徴があるということです。ですから二代兼元は赤坂鍛冶には同化していないことから関鍛冶出身ということがいえるのです。室町後期であれ程のものを焼いているのですからそれなりに良質の材料がなければ焼けませんし、良質の赤坂鉄鉱を求め赤坂へ出向したのも頷けます。従来どおり「関の孫六」でよろしいのです。





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各コメントにつきまして (時雨魔霧)
2006-05-04 15:26:25
>ととろさん

そうですね。

明応の書き間違いです。

あとで、修正しておきます。

ご指摘ありがとうございます。





>通りすがりの人さん



>>格下げについて

「古今鍛冶備考」で格下げの件に関しては、「柴田光男の刀剣ハンドブック」(光芸出版:柴田光男著)を参考に書きました。

他の資料も当たってみるつもりです。



>>二代兼元=唯一の孫六

「刀工大鑑 決定版」(光芸出版:得能一男著)に、「(前略)兼元家は代々孫六と称しており、孫六兼元は二代目の別称ではないが、二代兼元があまりにも有名になったために孫六といえば二代兼元を連想するようになっている。(後略)」という記載を参考にしています。

刀剣業界の権威付けはあまりよくわからないのですが、著者は刀剣連合会の創始者・主催者で文化庁登録審査委員・伝統刀装工芸会代表・刀剣連合会会長を歴任された方(平成十四年歿)なので、平成18年5月3日現在はこれを信用し信頼して記載しています。

なお、三代兼元(孫六二代)に関しては、平成18年5月3日現在、「刀剣見どころ勘どころ」(光芸出版:得能一男著)の記述参考にしております。



日刀保の見解はどこで調べますでしょうか?

また、「古今鍛冶備考」は現在入手は可能でしょうか?

よろしければ、教えていただけますと幸いです。





>美濃さん

なるほど、まだ造の方を詳しく検証してませんでした。

ご指摘ありがとうございます。







様々なコメントをありがとうございました。

まだまだ、勉強を始めたばかりで資料も少なく記載ミスも多いのでこのようなご指摘は大変ためになります。

他にもお気づきの点がありましたら、教えていただけると幸いです。
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問い合わせてみてください (すき者)
2006-05-07 19:22:14
日刀保へのお問い合わせについては、下記に連絡してください。

http://www.touken.or.jp/inquiry/index.html



「古今鍛冶備考」は以下のところで売ってます。

http://www.ohya-shobo.com/catalog_wahon.php?PHPSESSID=b71cf319920375e1744ad406e9e8fd67&word=%B8%C5%BA%A3%C3%C3%CC%EA%C8%F7%B9%CD



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