元気に家から飛び出すと、僕はランドセルを跳ねさせながら家の裏庭に向かい、木とトタンで造られた小屋の中に隠れた。そして、そこで横たわる大きさ一メートルと少しの人形にランドセルのベルトを通す。
コピーロボットはぱっちりと眼を開けると、その網膜に映しだされた僕の姿を見て見る見る姿を変えていった。
ロボットに「学校へ行け!」と命令すると、大きな声で命令した僕がバカに見えるくらい静かな動作で頷くと、学校へ向かって走っていった。彼にはわざと家の前を通るよう命令してある。そこでお母さんに手を振って学校へ行けば、絶対にバレることはないからだ。
「僕ってなんて頭がイイんだろう!」
皆がえっちらおっちらと勉強する中、ジュースを飲みながら漫画を読めるだなんて!
小屋に取り付けられたベンチに横たわり漫画を読んでいると、外で木の枝が折れる音がした。僕は慌てて小屋の奥に隠れる。それからまもなくして、お母さんとお父さんの友達が小屋の中へ入ってきた。二人は僕が今まで寝ていたベンチの上で重なると、激しい音を立てながら交わり始めた。
「人、来ないかな?」
「五時までは誰も来ないわよ」
眼を背けたくても、できなくて、僕は二人の行為を一時間近く見続けていた。
帰ってきたコピーロボットは、二人が抱き合っていたベンチに横たわると、その機能を停止した。いつも嫌なことばかり押し付けているロボットだけれど、今ばかりは彼のことが羨ましく思った。目的を冷然とこなすだけのロボットに、僕はなってしまいたかった。
数日後、怖い顔をした刑事さんが僕に聞いた。
「君は火災があった日、ずっと友達の家にいたんだね」
僕は燃えて無くなった家とコピーロボットとお母さんの事を思いながら頷いた。
あとがき
「秘密基地」「人形」「憧憬」のお題を書き終わりました。
依然募集中なので暇な人はどうぞ!