カタールで開かれているユネスコの世界遺産委員会は６月２１日、日本の富岡製糸工場と絹産業遺産群を文化遺産として25日に登録することを正式に決めました。
世界一位の世界遺産大国は歴史のあるイタリア（４9件)です。そして、世界二位で、アジア最大の世界遺産大国は、やはり歴史のある中国（４５件)です。
日本は、昨年の「富士山」（山梨県、静岡県）に次いで１４件目の文化遺産です。自然遺産４件を含めた日本の世界遺産は、もう１８件目になります。産業や土木の技術進歩を示す近代化遺産の登録としては、日本で初めての登録です。
中国は1985年に世界遺産条約に加盟して以来、故宮博物館、万里の長城、周口店の北京原人遺跡、秦始皇帝陵、敦煌莫高窟・泰山が古くから世界遺産に認定され、四川省の九寨溝、ラサのポタラ宮、西安の秦始皇帝陵兵馬俑、山西省の平遥古城、広東省の開平望楼、韶関丹霞山、福建土楼なども有名です。最近登録されたものにも新疆天山と雲南省紅河哈尼棚田群があります。文化遺産が4箇所、自然遺産が10箇所、総合遺産が4箇所、世界文化景観遺産も3箇所あります。
韓国は９件の文化遺産と1件の自然遺産で１０件が世界遺産に登録されています。海印寺蔵経板殿、宗廟、石窟庵・仏国寺、昌徳宮、水原華城、高敞・和順・江華支石墓遺跡、慶州歴史遺跡地区、朝鮮王陵、歴史村の・河回・良洞があります。そして、優れた自然景観を備えながら独特の地形や生態的価値を持つ済州島が、3つの地区「漢拏山 天然保護地域」、「拒文オルム（岳）溶岩洞窟系」、「城山日出峰」が、「済州火山島と溶岩洞窟」という名前で自然遺産として登録されていて、大変人気の観光スポットになっています。
ユネスコは、世界遺産条約に基づく世界遺産(自然遺産、文化遺産、複合遺産：「文化遺産」「自然遺産」それぞれの一項目ずつ以上が適用された物件を複合遺産といいます。)の認定を行い、世界遺産条約の締結国に、全人類に普遍的な価値の保護・保存の援助体制の確立および将来の世代への伝達を義務付けており、条約締約国からの拠出金や贈与などで保護や支援が実施されています。
この他に、ユネスコは、別途に、世界遺産条約には基づかない認定事業として、「世界無形遺産」と「世界記憶遺産」を選定しています。
昨年、日本の「和食：日本人の伝統的な食文化」
が無形遺産の認定登録となりました。
そして韓国の「キムチとキムジャン文化：分かち合いと共同体文化の象徴」も無形遺産に認定登録されました。
これらは、この「世界無形遺産」としての文化の登録です。
(朴槿恵大統領の父が三養ラーメンを視察した際に、唐辛子粉を入れるようとアドバイスをして 「辛ラーメン」が生まれたと言われ、韓国の辛いインスタント麺は今日、100カ国を超えて世界中に輸出されていますが、元祖・三養ラーメンは日本の明星食品のラーメン製造機械を輸入して作られた史実も有名ですが、旧式（イルシク）と呼ばれる日本のオデン、ウドン、ソバ、てんぷらを初め、にぎり寿司、回転寿司も、トンカツ、コロッケ、丼、トンカツ等のいわゆる日本のB級グルメを中心に大人気です。特に、若い世代には、日本の食べ物と言うだけで、おしゃれな感覚も覚えるようです。釜山の東莱区の温泉洞の「ザ・コロッケ」も人気です。世界でもっとも日本料理店(韓国風ですが)が多いのは、韓国であるとも言われています。また、韓国人は日本人の３倍も海産物を食べると言われますが、韓国の海苔養殖は、日本の広島からの民間養殖業者が中心に韓国の養殖技術を広めた史実も有名です。その功績により、１９４１年に朝鮮文化功労賞が日本人に授与され、(記念碑は現在は破壊されて無いそうですが)忠清南道瑞山郡の安眠島中場里・大也島には功績を讃えた記念碑も建てられたそうです。）若い世代が意外にも日本食を大好きなのは、歴史的な反日感情を文化的憧れがもう乗り越えていることの証明ではないでしょうか?）
そして、今回、中国がユネスコに対し「南京大虐殺」と「慰安婦」を日本軍から受けた苦しみを詳述した歴史資料としてわざわざ保存するよう申請したのは、「世界記憶遺産」でした。 日本政府は、この申請に激しく抗議しています。現在、中国の申請した記憶遺産としては、古代の手書き写本や伝統音楽の資料を含む9つの歴史的資料・文書が指定されています。世界では、米国にある映画創生期のフィルム、ドイツのグーテンベルク聖書、エジプトにあるスルタンと王子たちの業績録などが指定されています。戦争の記憶としての保存では、世界的に有名なのはアンネの日記があります。これは歴史の記憶遺産としての登録です。
無形遺産や記憶遺産は、条約締結国への義務付け等はありませんが、ユネスコのプログラムの保存リストに掲載されれば、保存作業やデジタル化が支援されます。
中国政府は6月11日に、申請を取り下げるよう求めた日本政府からの要求を頑固拒否しました。日本政府は６月12日に駐日中国大使を呼び、抗議もしていますが、対話を閉ざす、安倍首相には、訪中してまで説得する意思はないようです。菅義偉官房長官は６月11日「中国がユネスコの場を政治的に利用し、日中間の過去の一時期における負の遺産をいたずらにプレーアップしようとすることは極めて遺憾だ」と述べました。(しかし、日本には中国の慰安婦非難に抗するには、実は後ろめたい実情があります。日本のアジア女性基金は、台湾には対応されましたが、中国には対応しなかったのです。しかし、朝鮮半島出身者にも劣らない被害者がいたにも関らず、当時の中国はアジア女性基金に対応せず、中国政府もお金を一切請求しませんでした。プライドが非常に高い中国らしい対応だったのでしょうか?。中国の場合、当時の共産党政府が元「慰安婦」の認定自体を行わず、その国内情勢に鑑みて事業実施自体を実質上、拒否したため、日本政府はアジア女性基金の対象から中国を外したと言われています。)
（実は、中国は日本軍の慰安所が最初につくられたところで、強制調達された中国人慰安婦も集められていましたし、個人では、日本での訴訟提起も多く最高裁では事実認定もされていましたが法的請求権が認められず賠償にいたらない被害者も多くいました。満州に侵攻した時期に、日本海軍が上海にあった日本の妓楼を特別慰安所とした「大一サロン」を「海軍指定慰安所」としたのが始まりといわれ、上海市内には日本軍専属の「慰安所」が149箇所も設立され、日本軍直営のものもありました。また、北朝鮮は2000年には被害調査委員会の被害者申告数が218名になっていました。また、ビルマやマレーシア、ミクロネシアや東チモールにも慰安婦とされた人々が実はいました。しかし、これらの国に対しては、結局アジア女性基金はなんの対応もできないまま、世論にも押され日本は2007年に基金を解散してしまったのが実態でした。P)
河野談話の検証行為に対し、中国外務省の華春瑩報道官は６月12日の定例記者会見で、中国がユネスコに申請したのは、「暗い歴史が繰り返されないようにする」ためだと述べました。「日本政府はこの負の遺産を尊重して反省すべきであり、日本はその歴史から目をそむけず、これに向き合うべきだ」とも語っています。
一方、韓国の女性家族部も1月14日に、旧日本軍の慰安婦関連記録を世界記憶遺産に登録申請する計画を明らかにしていました。しかし、中国、東南アジア、日本などにある慰安婦関連資料の現況をまず調査し、２０１５年からオランダなどとも協力しながら関係資料を収集し、予定では２０１６年３月に申請して２０１７年の登録を目指していると言われていました。それが、中国にもう先を越されてしまったようです。
(2009年にも中国は朝鮮族の農楽舞が無形文化財に登載し2011年には、韓国の代表的な民謡の「アリラン」をはじめ、韓国や北朝鮮由来の伝統民謡や風習さえも、中国朝鮮族の文化として、中国は無形文化遺産に登載しました。
本家の韓国や北朝鮮を差し置いて、延辺朝鮮族自治州のアリラン、伽椰琴、回婚礼（結婚６０周年記念式）、シルム（韓国相撲）など朝鮮族の民謡と風習５つが、韓国や北朝鮮ではなく中国の伝統文化遺産としてユネスコに登録されたのです。)しかも、韓国政府はアリランを2012年に無形文化遺産として登録するために準備を進めていた矢先の出来事でした。(韓国民には複雑な反発心もあるようですが、韓国が仮に登録すれば、北朝鮮がきっと非難したでしょうから、中国でよかったのかもしれません。ｊ）
今回の中国の慰安婦の登録申請も複雑な波紋を呼びそうです。表面的には韓国政府は歓迎しているようにも見えますが??背景には、吉林省公文書館が新たに中国侵略関連の日本軍関係の文書も掘り起こし発見しており、戦前に日本政府の意向を受けて朝鮮総統府が資料を破棄した歴史から、現在までに苦労して収集されている韓国政府の資料数より遥かに多い、現在10万巻（冊）以上の関東軍の文書（うち9割が日本語,満州中央銀行の内部資料等を含む)を有する中国の自信なのでしょうか、それとも傲慢でしょうか??。中国は、慰安婦被害はあっても、それを政府は従来抗議さえもしていませんでした。反日連帯として?近く訪韓する習近平主席の手土産にでも、するつもりなのでしょうか??。
おそらく、尖閣や防空識別圏や靖国参拝強行や再軍備や集団的自衛権の容認の憲法改悪等、一連の右傾化を進める、安倍政権への反発の結果であり、やはり、これも安倍首相の東アジア外交の失政の結果なのでしょう。安倍政権でＮＨＫ経営委員に選任された、ベストセラー作家の百田尚樹氏が６月１８日、静岡青年会議所の講演会後に行われた参加者との質疑応答で「日教組は本当に日本のガン」だ「南京大虐殺はなく、従軍慰安婦は嘘」などと、また暴言を発言したそうです。安倍首相は、アメリカなどからの批判をかわすため、河野談話の見直しはないと言う欺瞞を述べた一方で、河野談話を検証する有識者チームの報告書を６月２０日に発表しました。それは、憲法の解釈改憲と同様のロジックで、河野談話を見直すことなく、解釈的に空文化することを狙ったものとも言われています。
これに対し、中国外務省の華春瑩報道官は６月２０日の定例記者会見で、「慰安婦は日本の軍国主義による、戦時中のアジアの被害国民に対する反人道的犯罪だ」「歴史的犯罪を覆す行為は誰の支持も得られない」と強く批判しました。
一方、韓国各紙は６月２１日、１面トップで「河野談話に泥を塗る」（朝鮮日報）「韓日関係さらに悪化」（中央日報）等と強く批判し、各テレビも前夜に続き朝からトップニュースで報じました。「外交の慣例を無視した挑発だ」と批判、社説では「検証自体、正常な国では考えられないこと」「韓日間で『取引』でもあったかのように事実を歪曲している」と日本政府の行為を猛批判しています。
河野談話の検証報告では 「（河野氏は）強制連行の事実があったという認識なのかと問われ、『そういう事実があったと。結構です』と述べている」ことを持って、「それまで政府は強制連行は証拠がないという一線を守っていた。それなのに、河野氏の発言で強制連行説が独り歩きすることになった。完全な失敗だ」と事実とアベコベの認識もしています。河野氏は強制連行の事実があったという認識を、今回の検証報告で、改めて明確に表明したのが真実です。
そして、検証報告は、当時の自民党政府から韓国側に「マスコミに一切出さないようにすべきであろう」と申し入れ、韓国が了解したというエピソードや、裏付け調査がなかったとか、談話以降に実施されたアジア女性基金で６１名には償い金が支払われたことまで、意図的に河野談話を空文化するような論実を多く、もりこんで公表しました。(最終的に認定された236人中61人が基金から受けて、残りは拒否したようです。)この報告を受けて、当時の自民党政府側からの要請で、日韓がすり合わせの事実を繰り返し、両国民を欺いていたのではないかとの批判報道も一部にありますが、それで談話の信憑性が揺らぐわけでもなく、逆にむしろ、慰安婦問題の沈静化にむけての日本側の見解表明に、両国の認識が一致した事実として優れた外交結果として評価すべき事象でした。
しかし、今回、検証報告が安倍政権の公式見解と言うわけではありませんが、河野談話に否定的な安倍首相の意向を受けて、談話検証が始まったはずでしたが、その民間の有識者チームの検証結果報告でも、なお、河野談話の内容が、一点のくもりもなく否定も出来なかった事実こそが、むしろ、再評価されてしかるべきです。
慰安婦への侮辱発言は、日本の右翼の一貫 した言動ですが、侮辱の対象は慰安婦に留まらないようです。東京都議会での塩村議員へのセクハラ発言が意外な波紋を呼んでいます。６月２０日議員は地方自治法に基づき、発言者の処分を吉野利明・議会議長に要求したのですが、これに対して自民党の議長は受け取りさえも拒否したのです。
複数の自民党男性議員とも、S議員ではないかとも、ネットではもう出ていましたが、ビデオ報道でも発言の一部は明確に聞き取れました。（初質問の議員は笑いの後に涙声にもなっていました。)ヤジを飛ばした議員の周りの自民党議員が分らないはずもなく、皆でかばって、発言者の特定を隠蔽しているようです。しかし、各報道によれば「早く結婚した方がいいんじゃないか？」「産めないのかよ」「あいつ不倫しているんだぜ」などのひどい内容です。公衆の面前で、相手を不快にもさせる、この種のヤジは、環境型セクハラと言うより、議員への侮辱行為であり、それは有権者への侮辱行為でもあります。一般の会社であれば、懲戒ものであり、言い逃れなど一切できないものです。しかし自民議員で相手が野党であれば、これが許されるばかりか、多数に無勢で自民議員らの横暴に泣き寝入りするしかないのが、やはり日本的な保守政治の伝統なのでしょうか？。職場の男女格差是正を目指すとも主張する安倍首相が率いる自民党の姿勢もやはり首相と同様に言動はアベコベのようです。しかし、その自民のかばいあう行為はもうセクハラの共犯行為に等しいものです。慰安婦に対する発言もそうですが、むしろ、連帯でセクハラを肯定しているとのそしりも免れません。日刊ゲンダイの記事では、自民党の男性議員たちはゲラゲラと笑っていたとも、S議員は取材に対して「ヤジは皆、言っているよ」と開き直り、大荒れだったそうです。（「皆言っている」とは、ドイツもあったどうして日本だけが?等と言う慰安婦問題への弁明にも似ているようです・・・。また、S議員のホームページは、子育て支援や女性が働きやすい社会をうたっており、その言動も、やはり党首と同様にアベコベなのだそうです。)（＞・＜)
