安倍政権は韓国に対して今回、（１）長嶺・駐韓日本大使と森本康敬・在釜山日本総領事を一時帰国させる（２）日韓スワップ協定再開の協議を中断する（３）在釜山日本総領事館が参加する交流事業の参加を見合わせる（４）日韓ハイレベル経済協議を中断する－との４項目の制裁行動を発表しました。これは、かつてないほど厳しい異常な外交対応です。
安倍首相は、自ら招いた政治的な失政と国内のウルトラ保守層の批判をかわすため、日韓外交の失敗のつけを、経済や文化交流の破壊にまで及ぼそうというのでしょうか？？．
2017年1月6日、韓国・釜山の日本総領事館前に市民団体が慰安婦少女像の設置をしたことをめぐり、安倍政権は、異常とも言える反応を示し、外交・経済的な制裁対応措置と言う暴挙に出ました。
予感はありました。韓国外務省も１２月２９日に、稲田朋美防衛相が同日、靖国神社を参拝したことについて「嘆かわしいとの感を禁じ得ない」と批判する報道官論評を発表し、韓国国防省も「深刻な憂慮と遺憾を表する」と明らかにしたのです。韓国政府関係者は、１２月２９日午後にはソウルの日本大使館幹部を韓国外務省に呼び抗議するとまで明らかにして、厳しい批判と反応をしていました。今回の慰安婦像批難にも、やはり、誰も言わないものの、内心では韓国に対して反発心などが安倍首相らには、あったのでしょうか？？
しかし、今回釜山の慰安婦像を設置したのは「韓国政府ではなく市民団体です」。安倍政権は韓国市民運動の行為に対して制裁をしたのでしょうか？？ またもや安倍政権は火に油を注ぐ驚きの外交を展開した様子です
ハンギョレ紙は社説で「不適切を超え、盗っ人たけだけしいに近い。理解しがたい」「日本政府は元慰安婦被害者に対する法的責任認定をはじめ、絶対に必要な措置をとらなかった」とし、慰安婦問題をめぐる（安倍政権と朴政権の）日韓合意に「根本原因」があり、「日本政府がこれを直視せねばならない」と主張しています。
また、「今日、韓国社会をリードしている市民運動の蝋燭デモによる民心を考慮すると、（市民運動により設置された）「少女像を撤去せ」との、日本政府の圧迫を受け入れることは不可能に近い。 これは、安倍政権と朴政権が交わした一昨年の12・28日韓合意の基盤が崩壊する可能性のある重大局面」であるとして猛反発しています。
実際のところ、日本国内に設置されたものでもなく、大使館内に設置されたものでもなく、大使館近くの道路に市民団体が設置したもので、韓国政府与党セヌリ党系の釜山市長や地元の釜山市東区の区長など韓国行政当局は、慰安婦像の設置を認めない方針を示し強制撤去までして努力していました。その意味では、安倍政権と朴政権の合意に沿った対応を韓国政府はしたのです。
そして１２月２８日に一時、置かれたものの、市民が設置した像は４時間後には撤去されました。当初は警察が撤去を試みたのですが、市民４０人あまりが像を取り囲んで座り込むなど抵抗をし、撤去を拒否しました。
釜山市東区職員らが市民を強制排除した末、約４時間後に像は撤去されました。この段階では地元自治体の釜山市東区は道路交通法に元づき設置の許可もしてもいませんでした。
しかし、「少女（慰安婦）像は生きた歴史教科書。市民の像設置は本物の独立宣言だ」次期大統領候補ＮＯ．１である韓国の最大野党「共に民主党」前代表の文在寅氏が、釜山市東区が像を一時撤去した１２月２８日に、ツイッターにこう書き込み、当局の撤去は「親日行為だ」と非難したのです。（文氏は「問題が最終的かつ不可逆的に解決される」と定めた日韓合意は、韓国民の権利を放棄する条約の締結行為に当たるため、韓国の国会同意なしには効力を持たない無効だとも主張しています。）
最大野党の「共に民主党」は、慰安婦問題をめぐる日韓合意について「政権交代後、必ず無効化するよう努力する」と宣言もしています。朴元淳ソウル市長や李在明・城南市長ら他の大統領選出馬に意欲を示す候補らも、安倍政権と朴政権で合意した一昨年の12・28日韓合意の破棄や再交渉を主張しています。（また、次期政権をもう意識して野党外交などをしているのでしょうか？宋永吉議員を含む「共に民主党」議員7人は1月4日から２泊３日で北京を訪問し王毅外相及び孔鉉佑外交部部長助理などと面談をしています。）
そのため、現在大統領権限を代行する黄教安首相は日韓合意について、「国家間で決めたことであり、維持されることが望ましい」と述べてはいましたが、韓国外務省はソウルの像について「民間が行っていることで、あれこれ言えない」と繰り返し、釜山の像については「自治体が判断する問題だ」として、釜山市東区に問題解決や判断を「丸投げ」したとも言われています。
そして、釜山市東区には、撤去に抗議する電話などの市民の猛抗議が殺到しました。市民団体は 設置に同意する釜山市民8100人余りの署名を釜山市東区に提出して設置の要請もしました。その結果、東区は少女像が道路法の施設には、該当しないという判断を遂に下したのです。
１２月３０日午後には、「平和の少女像」（慰安婦少女像）が再度道路わきに設置されました。像が道路法の不法積置物という理由で強制撤去されてから２日ぶりのことでした。
釜山の市民（若者・大学生・芸術家など）が集まって作った「未来の世代が立てる平和の少女像推進委員会」（推進委）による行動でした。横2m、縦1.6mの大きさの大理石の床の上の椅子に座っている少女像の設置でソウルの日本大使館前少女像を作ったギムソギョン・ギムウンソン夫婦作家が製作したものです。 １２月３１日には除幕式が行わました。（夫婦は、さらにブラジルなどに設置するための作品を制作中だといいます。）
推進委は昨年1月から少女像の制作に乗り出しました。 「慰安婦」被害おばあさんたちのための寄付マラソンに参加するなど、少女像設立資金も集めました。 168団体、19校、5138人の市民からも援助を得ています。 推進委の少女像設立目標である7500万ウォンを超えた8500万ウォンが集まったそうです。韓国政府の行動ではなく純粋な市民運動です。
一方、1月6日、韓国・釜山の日本総領事館近くの道路に設置された慰安婦問題を象徴する少女像の周辺に、像の広報活動の一環で掲げられていた横断幕が切り裂かれているのが見つかったことを韓国・聯合ニュースなどが伝えました。
像を設置した「未来世代が建てる平和の少女像推進委員会」は6日午前9時ごろ、釜山市東区の日本総領事館前の少女像周辺に掛けられていた横断幕8枚のうち4枚が刃物のようなもので切られているのが見つかったと明らかにしました。横断幕には２０15年末の慰安婦問題をめぐる日韓合意への反対や、昨年11月に締結された日韓軍事情報包括保護協定（GSOMIA）の破棄を訴える内容が書かれていたそうです。
推進委はいずれの横断幕も昨晩までは異常がなかったとし、「夜間に何者かが故意に傷つけたとみられる」として管轄の釜山東部警察署に捜査を要請しました。昨年12月30日の設置以降毎日、人通りの多い午後4〜6時の時間帯には、ボランティアの手によって守られてきたといいますが、今後に日韓の外交摩擦が大きくなった場合には「24時間少女像を守る活動」などの積極的な対応も準備していることを明らかにしています。
また、韓国政府が領有権を主張する島根県・竹島にも、慰安婦少女像を設置する計画があり、韓国の自治体間で摩擦が起こっていると韓国・ソウル新聞などが１月５日に報道しました。
韓国首都圏に位置する京畿道の道議会では１月5日、全国民の募金運動を通じて竹島に「平和の少女像」を設置する事業を進めると明らかにしました。議会の「独島（竹島の韓国名）サラン・国土サラン会」は、今月16日ごろ道内31の役所などに募金箱を設置、街頭キャンペーンも行う計画だそうです。さらにソウル市議会など全国の自治体に賛同を求めて7000万ウォン（約680万円）を目標に募金活動を実施、今年中に竹島への少女像設置を実現したいとしています。 しかし、地元の自治体は反対の意向であるということです。
（日本領事館前の少女像は、韓国の道路法施行令違反による過怠料賦課対象であり、日本総領事に近距離の設置という点では、「領事関係に関するウィーン条約」に抵触する懸念があると日本では解釈されています。一方で、「今回の性急で広範な対抗措置に走るのは冷静さを欠いており過剰な反発はむしろ関係悪化の悪循環を招くことが予想され、日本政府はもっと適切な外交措置を熟考すべき」との日本報道もありました。また、「しかし、これ（像の設置）がそんなに悪いことでしょうか？戦争の実態をみんな忘れないようなモニュメントは必要です。 」「たんなる日本人への嫌がらせで世界各地の韓国人がこれほどまでに団結して行動するでしょうか。」「われわれはただひたすら謝罪すべきです。無条件の、心の底からの謝罪が必要なのです。（早稲田・大槻名誉教授） 」と言うひともいます。）
しかし、現実問題として、大統領さえも弾劾し職務停止に追い込む今日の韓国市民運動に歯向かう行動など、韓国当局はもう不可能な状況にあります。ソウルの日本大使館前でも道路交通法に違法して設置された慰安婦像について現在まで当局は撤去ができないままでいます。（1992年1月に始まった韓国挺身隊問題対策協議会の日本軍慰安婦被害者の抗議デモ「水曜デモ」が1000回目を迎えたことを記念したソウルの日本大使館前の「平和の碑」（慰安婦少女）は設置からもう５年が経過しました。
一昨年１２月２８日の安倍政権と朴政権の日韓合意後に１５体も新たに慰安婦像や碑が設置されているのです。安倍政権が今更、慰安婦像について騒ぐのも変な話です。それどころか世界中で慰安婦像は「増殖」を続けています。
実際のところ一昨年１２月２８日の慰安婦問題に関する日韓合意については、事前に韓国外務省当局者は「少女像は民間（団体）が建てたもので、政府があれこれ言えるものではない」との主張を日本側にしており、結局「努力する」と言う表現での発表になったはずです。
慰安婦像に対する日韓両国のスタンスは、当初から食い違っていました。ウィーン条約「公館の安寧の妨害又は公館の威厳の侵害」に抵触するという主張もソウルの日本大使館前の像を日本は黙認してきたのですから説得力をもちません。また元慰安婦１２人が昨年８月３０日には、韓国政府を相手取り、「日本政府が法的責任をまったく認めていないのに合意したことで、自国の被害者に精神的、物質的な損害を与えた」として１人あたり１億ウォン（約９００万円）の損害賠償を求める訴訟をソウル中央地裁に起こしています。それは、２０１３年に日本政府を相手に賠償を求める調停が韓国で起こされ日本政府がそれを拒否したことに起因しています。
韓国紙ハンギョレによれば昨年８月時点で、韓国国内４０カ所、アメリカなど国外１１カ所（①ニュージャージー州バーゲン郡パリセイズ･パーク(碑)②ニューヨーク州ナッソー郡アイゼンハワー公園入口(碑)④ニュージャージー州バーゲン郡ハッケンサック市(碑)⑤カリフォルニア州ロサンゼルス郡グレンデール市(少女像と碑)⑥ニューヨーク州ナッソー郡アイゼンハワー公園内(碑)⑦バージニア州フェアファックス郡郡庁敷地内(碑)⑧ニュージャージー州ユニオンシティ市リバティプラザ(碑)⑨ミシガン州デトロイト・サウスフィールド市(少女像) ⑩ オーストラリア・シドニー韓人会館（少女像）⑪カナダ・トロント韓人会館前(少女像)
で慰安婦像や記念碑が設置されていますが、昨年１０月２２日には中国・上海師範大学で慰安婦像の除幕式も行われました。１２月１０日には、ワシントン中心部にそびえ立つワシントンモニュメントのすぐそばでも慰安婦像（倉庫保管）が除幕されました。
昨年10月22日、上海の慰安婦像は中韓の芸術家らが寄贈したものです。同日に中国「慰安婦」歴史博物館も上海で開館、像をデザインした1人である清華大学の潘毅群教授は、「中韓の慰安婦被害者の像が中国本土で設置されるのは初めてだ」とした上で、「将来的には、この像は世界各地に登場するだろう」と話しています。 （中韓慰安婦像はすでに2015年１１月にソウルの公園では登場していました。）確かに、国内安住の日本民族とは違い中国華僑とコリアンは世界中、ありとあらゆるところに海外移住をして、その地の市民と共存もしている民族です。
日本の菅義偉官房長官がこの問題について、「日中関係にプラスにならない」と遺憾の意を表したことについて、2016年10月25日、、中国外交部の陸慷報道官が定例記者会見で、「未来志向の前提は歴史を正視することだ。歴史は時代の移り変わりによって変わるものではない。事実が消えることもない。日本政府の要人はドイツ・ベルリンにある虐殺されたヨーロッパのユダヤ人のための記念碑に足を運んでみるべきだ。東京に慰安婦像を設置することができれば、日本が歴史の重荷を降ろす手助けになるだろう。そして、アジア隣国からの理解にもつながる」と述べました。
しかし、対話や和解でなく、世界中で「増殖」する慰安婦像と、各国の市民にも、安倍政権は制裁や対抗措置の強行策で対応する気なのでしょうか？？。そして、日本の市民団体も参加して申請している慰安婦のユネスコ登録にも・・。戦前に国際連盟を脱退した日本は「１億火の玉」と国民を煽って戦争に突き進みましたが、今日、安保法制で集団的自衛権の戦争を解禁し「１億総活躍」社会を国民に提唱し、一億総背番号のマイナンバー制度を導入し民衆の税や動向をも監視しようと言う統制国家を目指している安倍政権の突き進もうという道とは、実は戦前のかつて来た道と同質なのだと言う人もいます。戦前に日本は満州に進軍し、国際連盟を中心にした世界で、満州国の傀儡が批判されると、孤立し反発した日本は国際連盟を脱退し、世界を敵に回しました・・・。当時の狂った歴史の再来にならなけれないいのですが・・・・・。
昨年１０月も国連・ユネスコの南京大虐殺登録に安倍政権は反発をしました。慰安婦問題でも日本や韓国、中国などの民間団体でつくる「国際連帯委員会」が国連・ユネスコ申請を進める世界で日本政府は孤立を深めようとしているかのようです。
（２０１６年5月３１日ユネスコには、日本や韓国、中国などの民間団体でつくる「国際連帯委員会」などが慰安婦に関する資料の登録を申請しました。国際連帯委は２０１５年にユネスコ記憶遺産登録のため設立されたもので、日本、中国、韓国、フィリピン、インドネシア、東チモール、オランダ、台湾の出身国・地域の支援団体が参加しています。申請資料は証言や絵など2744件で写真を提供した英ロンドンの「帝国戦争博物館」が共同申請者になっています。）
2015年１２月２８日の安倍政権と朴政権の日韓合意で安倍首相が従軍慰安婦問題を受け入れたのも、謝罪をするのが目的ではなく、結局、対日謝罪要求決議に基づくオバマ・アメリカ政府からのはたらきかけがあったからだと言われていますが、その背景には、慰安婦問題で２００７年当時第一次安倍内閣で安倍首相が「狭い意味での強制性はなかった」と慰安婦問題に詭弁的な曲解答弁をしたことに世界が反発し、かつて日本が孤立した経緯がありました。「従軍慰安婦と呼ばれる太平洋戦争時の性暴力被害者への公式な謝罪と補償を求める決議案」等が2007年にはアメリカだけでなく、カナダ、オランダや27カ国からなるヨーロッパの欧州議会でも可決、翌年2008年にはフィリピン、韓国、台湾のアジアの議会でも可決、国際社会は当時、安倍首相らの見解に怒りを示しました。結局、日本は世界で孤立し、安倍首相は健康を理由に政権を放棄したのです。
1月6日報道によると「未来の世代が建てる平和の少女像推進委員会」（推進委）は日本を強く糾弾し、「日本は失礼な外交的措置を取るのではなく、慰安婦問題をはじめ植民地支配と戦争犯罪に対する公式謝罪と法的賠償に取り組まなければならない」とし、「それだけが少女像設置を解決できる唯一の方法」と述べているのですが・・・やはり地元市民や自治体が立てたものは、政府間外交だけではなく、地元の住民の納得と協力なしには、撤去は難しいと思われます。住民との対話と民意の尊重による信頼関係の構築という民主政治の基本を安倍首相は、全く理解していない様子です。市民運動で政権がゆれる現在の韓国政治は、中国や日本のような強権的政治手法では動かせなくなっています。
また、推進委は「韓国政府は、日本の傲慢な外交的態度に対し、国民の要求を反映して、慰安婦問題日韓合意の破棄という断固とした立場で対抗することを要求する」とし、「盗っ人たけだけしい日本の外交攻勢と、韓国政府の中途半端な態度が続けば、日本を糾弾し韓国政府の主権外交を促す国民の要求と怒りはさらに高まるだろう」と猛反発しており、安倍政権の強硬姿勢が全く逆効果に働らいた様子です。さらに、推進委は少女像を、噴水などと同様に公共の場に設置した美術品（公共造形物）として登録する活動を進めており、今後撤去要求が来ても断固として対応していく方針だと表明しました。仮に少女像が公共造形物として登録されると、合法な建造物ともなり、撤去はさらに困難となりそうです。
