もしこの世の中に、風にゆれる「花」がなかったら、
人の心はもっと、荒んでいたかもしれない。
もしこの世の中に「色」がなかったら、人々の人生
観まで変わっていたかもしれない。
もしこの世の中に「信じる」ことがなかったら、一
日として安心してはいられない。
もしこの世の中に「思いやり」がなかったら、淋し
くて、とても生きてはいられない。
もしこの世の中に「小鳥」が歌わなかったら、人は
微笑むことを知らなかったかもしれない。
もしこの世の中に「音楽」がなかったら、このけわ
しい現実から逃れられる時間がなかっただろう。
もしこの世の中に「詩」がなかったら、人は美しい
言葉も知らないままで死んでゆく。
もしこの世の中に「愛する心」がなかったら、人間
はだれもが孤独です。
中原淳一 「中原淳一の世界」より