ふと平和な日常に、或る日の自分の行いがよぎることがある。
あの時、、なぜそうしてしまったのか・・・と。
考えてみても、そうでしかできなかった自分がいたから。
なんだかわからないのだ
仕方なかったと
流されていく日々の中で、うやむやにして
今からの自分が良くあろうと、そう決意して決着させてしまうのだ。
良い人間であろう、よりよい選択をしよう
そんなことを軽々しく口にするくせに、まったく別の行動をしてしまうことがある。
日常の中にあるごくありふれた場面でのことである。
自分とは? 人間とは一体?

「海と毒薬」 遠藤周作
~戦争末期、九州大学付属病院で実際にあったのは“生きたままの人間の解剖”____
日本人にとっての良心とは何かを問う、不朽の名作。~(帯より)
~こんな少年時代の思い出はぼくだけではあるまい。形こそ変れ、あなた達だっておそらく持っているものだろう。
だがそれに続く次のような思い出は一体ぼくだけのものなのだろうか。
それともあなた達もこれと似た経験を心のどこかにしまっているのか。・・~(文中より抜粋)
何か心にうずくものを感じたのはたしかで
この一文がぐっと迫ってきました。
戦時中を背景に日本人の持つ良心というものに、焦点を絞り
どこまでも突きつけてくる人間の心の暗い部分。
いつの時代にもあてまはる
現代においてこそ、必読の書と感じました。
夏川草介氏(医師、作家)の解説が、また良かったです。