超短編小説「猫角家の一族」その42~48まとめ 2017年5月3日
https://richardkoshimizu.wordpress.com/2017/05/03/%e8%b6%85%e7%9f%ad%e7%b7%a8%e5%b0%8f%e8%aa%ac%e3%80%8c%e7%8c%ab%e8%a7%92%e5%ae%b6%e3%81%ae%e4%b8%80%e6%97%8f%e3%80%8d%e3%81%9d%e3%81%ae%ef%bc%93%ef%bc%97%ef%bd%9e%ef%bc%94%ef%bc%98%e3%81%be%e3%81%a8/
無法松先生をシャブの世界に引き込んだ功労者、指圧師、霊図美杏は、朝鮮悪組織のメイン・プレーヤーのひとりである。手技を駆使して、女性ターゲットを篭絡する役割だが、それだけではない。「カモ」を物色し現地調査で、「カモ度」を測る重要な役割を演じている。その手口が「お迎えに参ります」という宣伝文句だ。指圧を希望する顧客には、自宅まで迎えに行くサービスを提供するという。そんなことをしていたら、採算が合わなくなるように思えるが。随分と親切に聞こえるが、実は、その行為には悪意が付随する。
顧客の「金持ち度」は、自宅を見ればわかる。迎えに行って、言葉巧みに上がり込み、家の内部を観察して上等な「カモ」なのかどうか判断する材料とするのだ。「美味しい客だ」と推測できれば、仲間内の四つの葉弁護士法人が、資産の内容を調べる。処分できそうな資産があると分かれば、強奪大作戦の開始だ。
カモは、必ずしも、痴呆老人でなくてもいい。「病気を心配する老人」でもいい。「あのね、足裏を揉んでいると、人の持っている病気って、大体わかるのよ。」霊図美杏は、ターゲットと定めた72歳のカモ婆さんに囁く。「もしかしたら、大病かもしれないから、お医者さんに診てもらった方がいいわ。」と心配そうに、憂い顔で伝える。お婆ちゃんは、心配になって、霊図美杏に紹介されたクリニックに行ってみることにする。霊図美杏は、親切にもクリニックまで車で連れていってくる。しかも、診察に同席までしてくれる。簡単な血液検査、レントゲンの後、医師はシンプルにつげる。「子宮癌ですね。末期です。手術はできないでしょう。ウチでは、従来の癌治療とは違う最新の治療法をやっています。試してみませんか?まだまだ、なおるチャンスはありますよ。但し、保険は効きませんが。」医師は、お婆ちゃんの手を握って、笑顔を浮かべながら優しそうに伝える。
霊図美杏は芹沢鴨お婆ちゃん、72歳に囁く。「ねえ、このお医者さんの判断だけじゃ、わからないわよ。誤診かもしれないし。別のお医者さんにも聞いてみましょうよ。」落胆したお婆ちゃんを励まし、翌日、別のクリニックに連れていく。まるで、この資産家のお婆ちゃんの専属のようだ。別の医師は、面倒くさそうに告げる。「子宮がん。末期。手術はできない。どうしますか?」ぶっきらぼうにそう伝える医師の目は冷たく光っている。嫌な奴だ。勿論、この医師も昨日の医師も、朝鮮悪組織のメンバーだ。傷心のお婆ちゃんは、「昨日のお医者さんは信用出来るわ。あそこで、治療を受けるわ。」そう思わせるために、わざわざ、冷血医師Bは起用されたのだ。
医師Aの謳い文句は、「従来の癌治療ではない新たな独自の免疫療法」だ。「ナントカ酵素」の類を患者に飲ませる。ただし、保険が効かない。だから、高額治療となる。つまり、保険外治療の費用を払える資産家だけを「癌」にするのだ。実際は、癌でも何でもない、健康体の患者さんを。(続く)
芹沢鴨おばちゃんの娘は、従来の癌治療を受けないと言い張る母親のことを心配して、久留米の大学病院に連れていこうと必死に説得する。お婆ちゃんは、3年前に、娘の連れ合いが「自宅の新築資金1000万円を融通してくれ。」と打診してきたのを覚えている。それ以来、娘夫婦は、自分の財産を狙っているとひどく警戒している。自分では気づいていないが、老人性痴ほう症の典型的な症状の被害妄想を発病しているのだ。自分に最も近い肉親に敵意を抱いてしまうのが、この病気の特徴なのだ。もう、娘の言うことなど、聞く耳を持たない。
医師Aと霊図美杏に絶大な信頼を置くお婆ちゃんは、医師Aのクリニックにある29床の入院施設のうちの特別室に入院する。医師Aによるあり難い保険外治療が始まる。もともと癌ではないので、特に治療は必要ないのだが、仰々しく、儀式のように「スーパー・スペシャル・ハイクオリティー・スプレンディッド酵素VX3改」を服用させられる。ラベルの剥がされたペットボトルに入っている。なんだか、スポーツドリンクそっくりの味なのだが…..。これを、毎食後飲まされる。ありがたーい、神薬だ。そういえば、看護師は、市販のポッカレ・スエットをラベルを剥がして、お婆ちゃんに飲ませておけと医師Aから指示されていたのだが。勿論、看護師は朝鮮悪の準構成員の一人なので、医師Aのおかしな指示にいちいち反応などしない。悪事に慣れ切っているのだ。
このスペシャルドリンクは、非常に高価なものだ。一回の処方で14万円掛かる。それが一日3回だ。一か月クールで1200万円以上かかる。病状次第では、もう一月続けなければいけないという。鴨お婆ちゃんは、郵貯の定期を解約して支払うという。霊図美杏は、親切にも郵便局まで行って定期の解約をしてきてくれるという。おばあちゃんの委任状を持った霊図美杏は、鳥栖の郵便局で、定期を解約して1000万円を引き出し、ついでに普通預金1000万円も全額引き出した。つまり、800万円を着服したのだ。「お婆ちゃんの送迎代だわ。」高い送迎代である。そして、朝鮮悪組織には報告しない臨時収入として、秘密裏に処理したのだった。そして、お婆ちゃんには、偽造屋に作らせた銀行の偽通帳を見せた。「やっぱり、この人は騙したりしない、信用のおける人なのよー。」霊図美杏は、鴨お婆ちゃんのさらなる信頼を手にしたのである。
1200万円の薬の原価は、約9000円だ。A医師のクリニックの5メートル先に設置されている自販機は110円均一なので、ポッカレ・スエットも他より安いのだ。自販機の業者のドライバーは、この自販機だけ、ポッカレ・スエットの売り上げが飛びぬけて高いのに首を傾げていたが。ポッカレ・スエットがたまたま品切れになった時があった。看護師は、別の自販機で代わりにアクアリウスを買ってきておばあちゃんに飲ませた。お婆ちゃんは微妙な味の違いに気付き、「これは違う!」と騒ぎだした。何しろ、一本、14万円だ。不良品をつかまされては大変だ。(続く)
おしなべて医院の経営環境は、厳しい。実は、かなり多くのクリニックが廃業したり、倒産したりしているのだ。2007年に休廃業した医院は、121軒だったのだが、2014年には、347軒に増えている。
開業医の年収平均は2,200万円と言われている。悪くないように聞こえる。だが、借金も多いのだ。まさか、CTスキャンのないクリニックでは、客を呼べない。CTスキャンを設備すれば2000万円は掛かるのだ。放射線対策もしなければいけないから、結局1億円近い投資が必要になる。2000万を超える収入があっても、借金も5倍抱えているのだ。
医療機材がほとんどいらないような診療科目は、設備費用は掛からないが、反面、診療報酬を増やす手立てもない。結局、要らないクスリをバンバン出して儲けるしかない。精神科の患者は、医者の都合で向精神薬を馬の餌のように食わされて、症状が固定化し発作を起こして死んでいく。自殺する。また、「手わざ」と呼ばれる処置の少ない診療科目では、診療報酬も多くはない。割に合わないのに、時間を拘束される小児科、産婦人科に至っては、誰もやらなくなった。考えてみると、産婦人科も小児科も街中で見掛けなくなった。
結果、クリニックの8割が実は赤字だというのだ。
どうにも経営が安定しない開業医は、苦し紛れに診療報酬の不正請求をしてしまうケースがある。患者が領収書の中身に疑問を感じて役所に問い合わせて発覚したりする。該当地区の厚生局が指導監査ののち処分を決めるが、最長で5年間、保険医の資格を取り消される。悪質だと処分も重い。では、5年間、なにをするか?保険外診療で稼ぐしかないのだ。その一つが、些かいかがわしい癌の免疫療法だったりするわけだ。そして、もとから保険の効かない美容整形に衣替えするクリニックもある。ある日突然、都合で美容整形を始めても技術が伴わない。失敗続きで評判を落としかねない。美人になるつもりが、妖怪になってしまった患者は、医師を医療過誤で訴える。四つの葉弁護士法人の出番である。
この種の脛に傷持つ医者が、朝鮮悪グループのメンバーとなって、裏社会御用達のさまざまな仕事をこなしていくことになる。
なるほど、そういうことか。医師は、医療過誤保険に入っている。正式に言うと「日本医師会医師賠償責任保険」だ。開業医は全員加入している保険だ。医療行為の過失によって障害や死亡のケースが生じた場合、保険金が被害者に支払われる。支払限度額は1億円だ。ということは、韓国辺りで美容整形に大失敗した患者を探してきて、医師Aのクリニックで手術を受けて被害を受けたと嘘の主張させれば….数千万円の保険金が、医師Aの加入する賠償責任保険から、顔面崩壊患者に支払われるだろう。患者とつるんでいれば、保険金の分け前を患者から貰えるではないか。(続く)
賠償責任保険で一儲け! と、思ったのもつかの間の夢で、こと美容整形に関しては、医師賠償責任保険では、対象にはならないとなっているらしい。だから、保険金を患者と医者で山分けしてぼろ儲けとはいかないようだが、一方で、美容整形という分野は、患者から訴えられるリスクが小さく、裁判で負けても賠償額は少なくて済むということらしい。美容整形という治療の性格から、裁判で争うことを患者が敬遠する。「泣き寝入り」が非常に多いということだ。つまり、法廷で「手術前」と「手術後」の写真を提示するなど、自らの恥をさらすことを患者は嫌がるのだ。
それに一般の医療過誤に比べて、美容整形の場合、賠償額が少額になる傾向がある。命に別状がないからだ。そうなると、弁護士を立てて裁判を起こしても訴訟費用の方が賠償額を上回ってしまうことすらある。障害慰謝料は、入院日数、通院日数で決まるものなので、入通院期間の短い美容整形の場合、少額に留まってしまう。同時に休業補償も発生しない。結果、美容整形失敗の賠償額は、治療費に50万から150万程度上乗せした金額にしかならないのだ。これでは、裁判をやる意味がほとんどなくなる。
悪徳美容整形医師は、この患者の弱みを知っているから、「文句があるなら訴えろ」と患者に凄む。患者は、大概が諦めて泣き寝入りするわけだ。だから、美容整形は、適当にやっていても、あまりリスクのない分野ということになる。ただし、昨今は、クリニックの評判はネットですぐさま広がるので、いい加減な手術ばかりやっていると、すぐに悪評がたつ。それに、医師賠償責任保険が使えないとなると、裁判に負ければ、少額であれ、全額自己負担となる。
結局のところ、不正請求で保険医取り消しになって、美容整形に衣替えしても、前途多難ということだ。自由診療で、お腹の脂肪吸引、120万円、太腿の脂肪吸引、80万円….と次々カモが転がり込んでくるというわけにはいかないのだ。経験のない美容整形治療を試みても、施術後のお腹はグッチャグチャ。整形ではなく歪形となる。もう騙されてくれる客などいなくなる。クリニックの中は、閑古鳥が大群で飛び回るようになる。
真面目にコツコツとクリニックを経営していれば、親子三代通ってくる近所のお馴染さんで、待合室は満員になる。結局は、医者の人徳があるかどうかなのだ。(続く)
「朝鮮悪」組織が、カモを狩る狩場には、要所要所に拠点が設けられ、カモが確実に捕獲できるよう配慮されている。というか、自然に捕獲拠点のネットワークが出来上がっていったというべきであろうか。
癌の免疫療法の自由診療を謳うクリニックには、金持ちしか来ない。免疫療法に最後の望みを託してやってきた全身転移の進んだ癌患者は、この治療には保険が適用されないことを告げられ、受付で追い返される。まずは、自由診療の高額費用を負担できるだけの資産家の患者を選別するのだ。「カモ」候補として、資産家だけをピックアップし、資産状況を四つの葉弁護士法人がすぐさま調査する。
「自由診療」で客を呼び込むには「新療法で末期がんが治った!」といった話を癌患者の間に広めるのが得策だ。例えば、「有名人が、あの病院でがんが治った!」といった話を流布すれば、藁にもすがりたいカモ資産家がやってくる。背中に葱を背負って。
美容整形も金持ち選別に使える手段だ。腹の脂肪吸引に120万円も出せる余裕のあるオバサンは、恐らく資産家の部類であろう。あまり品は良くないかもしれないが。
朝鮮悪の「医療部門」は、こうして、カモの市中からの拾い上げの役割を果たすのだ。勿論、それだけではない。あとの段階で、致死薬物の調達、偽の死亡診断書の作成など、活躍の場はいくらでもあるのだ。診療報酬の不正請求等で保険医を取り消された医師には、裏社会の歯車として生きていくしか道はないのだ。
モミモミン治療室の店長、霊図美杏も、足揉みを求めてやってくる客の中から、金になりそうなカモを見つけ出す役割を帯びている。患者を迎えに行くと称して、家に上がり込み、資産状況を目視するのも霊図の大事な仕事だ。家の中を見れば、どのくらいの金持ちかは、大体わかるのだ。そして、カモの肉親を裏社会に引っ張りこむ。シャブすら使って。
弁護士は、カモのインターセプトの重要拠点だ。とにかく、脛に傷持つ人物が、次々とやってくる。金に困った無職のパチンカーの負債の整理。覚醒剤で捕まったジャンキーの減刑や執行猶予取り付け。偽装交通事故での後遺症詐欺、車両損壊詐欺を働きたいチンピラ。資産家の財産相続のトラブル介入。裏社会は、宝の山である。資産家を捕まえられるし、弁護士なら資産の中身を覗くこともできる。良質のカモは弁護士なしには捕獲できないのだ。
ドチンピラを捕まえて、親に生命保険を掛けさせ、2年経ったら、早速、亡くなっていただいて、4千万円を生保から手に入れる。チンピラは覚醒剤で縛っておいて、保険金のほとんどを取り上げる。弁護士はワルとなると心を決めれば、いくらでも、儲けられる分野なのだ。シンピラは金持ちである必要はない。ドチンピラで構わない。チンピラ度が高いほど、親の命を金に換えることに抵抗感を持たないのだ。
横浜の介護施設の現場にいる介護スタッフもまた、カモ探しの最前線にいる戦闘員である。日々、おじいちゃん、おばあちゃんの世話をするうちに、どの婆ちゃんが金を持っているか、家族構成はどうなのかわかってくる。そして、老人や家族の信頼を得て、家族の問題にも介入し、カモを「養成」していくのだ。過酷な労働。安い賃金。ぼさぼさ頭を気にする余裕もない。シャブでも打たないと続けられない。だが、裏社会に与すれば、最底辺の3K職場も、金が埋まっている金鉱脈となるのだ。
福岡の介護施設のオーナーも、カモ探しのプロである。介護施設を探して問い合わせしてくる親族を捕まえて、仲間に引き込む。老人を「処分」して金に換えることが本業であるゆえ、容赦はしない。どんどん処置する。成年後見人の制度を悪用して身包みはがす。婆さんは、邪魔だから「処分」する。残った家財が、偽介護老人施設、ネコネコハウスの一室に山と積まれるのである。
こういったネットワークに、朝鮮悪組織が覚せい剤密売事業を通じてリクルートしたシャブ中軍団が加わる。シャブ中連中は、往々にして何ら特技もない、無教養、無学、無資格の輩だが、それでいて、結構、いろいろと使い道がある。それに、シャブ中ゆえに、薬欲しさに、裏金欲しさに何でも言うことを聞くのだ。しかも、シャブ中の弱みを握られているので裏切る可能性も少ないのだ。(続く)
さて、「朝鮮悪」組織は、コアな構成員やチンピラ・シャブ中構成員にジャーナリストKを包囲し、攻撃する役割を与える。Kの後援会組織に賛同者を偽装したチンピラ構成員を数十名送り込んだ。一方で、後援会組織には参画させないが、外部から、Kを誹謗中傷する役割を与えられた人物も複数いる。彼らは、Kと一面識もないのにKを理由なく批判する。だが、何度聞いてもKのどの部分をどう批判しているのかが不明だ。ただただ「Kは良くない」を繰り返しているだけなのだ。どこがどう良くないのか、さっぱりわからない。
本音は、ただただ彼らにとって「Kの存在が不都合」だということなのだ。Kは、ジャーナリストになる以前、自分が勤務していた民間企業で引き起こされた「連続保険金殺人事件」を追及してきた。具体的な5つのケースの保険金殺人事件を追いかけたのだ。傍系会社の作業所で、作業者が作業用エレベーターに挟まれて死んだ。同じ傍系会社の工場に勤務する独身者が誰かと飲酒後、突然死した。恐らく、VXガスなど使ったのであろう。VXガス?つまり、この会社には、上九一色村で摘発されて逃亡した「オヲム」が巣食っていたということだ。逃がしたのは、警視庁内部の裏社会組織であったが。会社と幹部は、Kを三人目の犠牲者にしようと企んだ。恐らくオヲムへの上納金を稼ぎ出すためだったであろう。だが、Kは彼らの企みを察知し難を逃れた。
次にKが務めた東京都心の商社では、3年間に3人がなくなった。Kを監視下に置いておきたいと考えた朝鮮悪裏社会は、商社Aの経営者KTに命じて、Kを雇用させたのだ。経営者は、Kが静かにしているのを見て慢心した。経営者KTは、創業者の娘と結婚した経緯から、大企業を中途退職して、この会社にやってきた。会社の社長は、名義上、義母が務めていた。この義母が邪魔だった。専務から社長に昇格したいKTは、裏社会の保険金殺人オファーを受け入れた。KT夫妻は結婚30年目の記念にヨーロッパ旅行に旅立った。その夜、義母は急病で死んだ。KT夫妻は、欧州に到着したところであった。完全なアリバイである。会社には、経営者保険の保険金が下り、億単位の金が入った。他にも、ダミー会社の社長に据えておいたので、経営者保険の総額は、企業の10年間の利益に匹敵する額となった。KTは、首尾よく、代表取締役に昇格した。KTは自分の老父も殺した。関連会社の社長として、90歳にならんとする老父は毎日出勤していた。老父を殺し、億単位の金を手にしたKTは、老父の会社の社長にもなりあがった。もう一人の犠牲者は、営業課長だった。会社の経理の不正を見つけて、KTを脅していた課長は、社内の不正グループの手で薬物で眠らされ、5日後、病院で死んだ。薬物を注射して、課長を殺したのは、不正グループの連中だった。2週間後、保険会社から入金の知らせを受け取ったKTと不正グループの面々は、社長室で喜びを爆発させた。年収の数倍の臨時収入が手に入ったのだ。
Kは、この一連の保険金疑惑を警視庁に告発した。警視庁の組織内組織は、Kを日曜日に呼び出した。警視庁内部のカルト組織は、裏社会の要請で、Kの口を封じようと企んだのだ。(続く)
裏社会の目論見がうまくいけば、Kは警視庁本庁から警察車両で拉致され、現役警察官の手で殺され、群馬辺りの山中に埋められたのであろう。だが、裏社会の姦計は見事に外された。Kは、山中に埋葬されることなく、生きながらえた。まさに浮氷を踏むようなぎりぎりの判断が、生死を分けた。Kは、天の誘導により、辛くも魔界から逃れたのだ。
Kの告発に警視庁は対応し、捜査をした振りをして「事件性はなかった」と報告することで、一件落着としたかった。Kを納得させようと企んだ。数日後、Kの自宅に、二週間も寝ていないようなボロボロの姿で現れた、警視庁警部の斧は「調べたんですが、事件性はありませんでした」と絞り出すように言い、背中を丸めてとぼとぼと帰っていった。薬で自分を鼓舞して、決死の思いでKの前に登場したのだ。警視庁本庁捜査一課警部補、斧某。裏社会に魂を売った警察官は、その素性を晒されてしまったのだ。あれから10年以上がたったのだ。
斧の隣に立っていた長身の鈴本警部は、終始無言で、左胸に収納されている拳銃のホルスターに背広の上から終始触れて、Kを威嚇した。「ここに拳銃があるのだぞ」とKに示唆することによって。
斧に汚れ役を押し付け、鈴本は脅し役に徹した。だが、その威嚇が猿芝居を猿芝居と分からしめたのだ。こいつらは?勿論、朝鮮半島カルト、S禍学会の構成員である。S禍がらみのヤバイ事件の起きた場合、隠蔽工作に動員される、警視庁内部の組織内組織のメンバーなのだ。後日、Kは、警視庁に行った当日に、湘南電車の中で秘密に撮影した斧と鈴本の写真をネット上で公開した。そして、裏社会の保険金殺人事情をネット上で告発し始めたのだ。その経緯は、小説「魔界」となって、後日、二度も出版されたのだ。
Kに急所を攻撃されて右往左往した裏社会は、保険金殺人という裏社会の主産業を失う危機に瀕した。保険金殺人のプロジェクトは、Kのおかげでかなり縮小せざるを得なかった。Kの告発のおかげで、カモに逃げられたケースもあるし、家族を殺して保険金に変えようとするチンピラが恐れをなして逃亡したケースもある。裏社会は、保険金殺人という、安全で確実なビジネスの障害となるKを監視する必要性に駆られた。「Kを監視するには、保険金殺人の当事者を起用するのが最適だ。」幹部の判断で、シャブ中構成員でかつ肉親の命を保険金で替えたか、替える予定の極悪連中が招集されたのだ。K包囲網である。(続く)
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