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リートリンの覚書

古事記 中つ巻 現代語訳 九十二 宇遅能和紀郎子の策略


古事記 中つ巻 現代語訳 九十二


古事記 中つ巻

宇遅能和紀郎子の策略


書き下し文


 故天皇崩りましし後に、大雀命は、天皇の命に従ひて、天の下を宇遅能和紀郎子に譲りたまふ。是に大山守命は、天皇の命に違ひ、なほ天の下を獲と欲ひ、其の弟皇子を殺さむとする情有り。窃かに兵を設けて攻めむとす。尓して大雀命、其の兄の兵を備ふることを聞かし、使者を遣はし、宇遅能和紀郎子に告げしめたまふ。故聞き驚きて、兵を河の辺に伏せ、また其の山の上に、絁垣を張り、帷幕を立て、詐りて、舎人を王に為、露に呉床に坐ませ、百官、恭敬ひ往来ふ状、既に王子の坐す所の如くして、更に其の兄王の河を渡らむ時の為に具へ餝る。船の戢者、佐那葛の根を舂き、其の汁の滑りを取りて、其の船の中の簀椅に塗り、踏み仆るべく設けて、其の王子は、布の衣・褌を服し、既に賎しき人の形に為り、戢を取りて船に立たす。


現代語訳


 故、天皇が崩(かむさ)りし後に、大雀命(おおさざきのみこと)は、天皇の命に従い、天下を宇遅能和紀郎子(うじのわきいらつこ)にお譲りになりました。ここに大山守命(おおやまもりのみこと)は、天皇の命に違(たが)い、なおも天下を獲(え)たいと欲い、その弟皇子を殺そうとする情(こころ)が有りました。窃(ひそ)かに兵(いくさ)を設けて攻めようとしました。尓して、大雀命は、その兄が兵を備えていることを聞き、使者を遣わし、宇遅能和紀郎子に告げました。故、聞き驚いて、兵を河の辺に伏せさせ、また、その山の上に、絁垣(きぬがき)を張り、帷幕(あげはり)を立て、詐(いつわ)りて、舎人(とねり)を王(みこ)に為(し)て、露(あらわ)に呉床(あぐら)に坐(い)ませて、百官(もものつかさ)が、恭敬(うやま)い往来(かよ)う状(さま)を、既に王子の坐(いま)す所(ところ)の如くして、更にその兄王が河を渡る時のために具(そな)え餝(かざ)りました。船の戢者(かじとり)は、佐那葛(さなかづら)の根を舂(つ)き、その汁の滑(なめ)りを取って、その船の中の簀椅(すばし)に塗り、踏み仆(たふ)るよう設(ま)けて、その王子は、布の衣(きぬ)・褌(はかま)を服し、既に賎しき人の形(かたち)に為り、戢(かじ)を取って船に立ちました。



・絁垣(きぬがき)
絹のとばり。神祭などの時に、垣のようにめぐらして囲うもの。あやがき
・帷幕(あげはり)
垂れ幕と引き幕。帳幄いあく
・呉床(あぐら)
中国式の大きな椅子
・佐那葛(さなかづら)
サネカズラ、ビナンカズラ(美男葛)などともよばれる
・簀椅(すばし)
すのこ
・仆(たふ)る
倒れる。倒れ伏す。死ぬ


現代語訳(ゆる~っと訳)


 やがて、応神天皇が崩御されてから後に、大雀命は、天皇の仰せに従い、天下統治を宇遅能和紀郎子に譲りました。

ところが、大山守命は、天皇の仰せに背いて、なおも天下を手に入れたいと思い、その弟皇子を殺そうとする気持ちがありました。密かに軍勢を用意して攻めようとしました。

その時、大雀命は、兄・大山守命が軍勢を備えていると聞き、使者を派遣して、弟・宇遅能和紀郎子に知らせました。

それを聞いた宇遅能和紀郎子は驚いて、伏兵を宇治川の岸辺に潜ませ、そして、そこの山の上に、絹のとばりを垣のように張り巡らせ、垂れ幕と引き幕を立てて、仮宮として、

大山守命を騙すため、舎人を弟王に見せかけて、はっきりと見えるように中国式の大きな椅子に座らせて、

多くの官人が恭しく出入りする様子を、すっかり王子の御座所のようにして、

更に、その兄王が河を渡る際、御座所が見えた時に備えて、偽の御座所を飾り立てました。

船の舵取りは、サネカズラの根をつき、その汁の滑りを取って、その船の中のスノコに塗り、踏むと倒れるように仕掛けを設けました。

宇遅能和紀郎子は、布の上衣とフンドシを着て、すっかり賎しい人の姿になり、自ら舵を取って船に立ちました。



続きます。

読んでいただき
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